2023年03月26日

またしても「隙間風」を感じざるを得ない

https://news.yahoo.co.jp/articles/a68e2c496bbdcd8fa427d070da0b570ce55c7183
捕虜の処刑、ロシアは15人・ウクライナ25人…「袋で窒息」「犬使う攻撃」で拷問も
3/25(土) 20:53配信
読売新聞オンライン

 【ジュネーブ=森井雄一】ロシアによるウクライナ侵略で、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は24日、双方が拘束した戦争捕虜を処刑したと指摘する報告書を公表した。ロシア側は15人を、ウクライナ側は25人をそれぞれ拘束後に処刑したという。報告書は両国に深い懸念を示した上で、捕虜を適切に処遇し、全ての違反行為を処罰するよう求めた。
 
 国連の人権監視団が、432人の捕虜への聞き取りや50か所の現場視察などで得た情報をまとめた。ウクライナ側が拘束した捕虜に「完全で機密性の保たれた接触ができた」と当局の協力を評価する一方、露側からは協力が得られなかったとしている。
 
 監視団は露側の状況について、露側から解放された捕虜203人に聞き取りを行った。このうち92%は拘束中に拷問や虐待などを受けたと証言した。

(中略)
 一方、監視団はウクライナ側に拘束された捕虜229人に面会した。このうち49%が拷問や虐待などを受けたと訴えている。尋問中に捕虜の脚を撃った事例などがあったという。

最終更新:3/26(日) 9:04

読売新聞オンライン
ロシア当局からの調査協力が得られなかったとはいえ、戦争捕虜の処刑について、ロシアによる処刑が15人だったのに対してウクライナによる処刑が25人だったのが報道された事実に驚かされます。1年前の調子ならば「ロシアが故意に悪意を持って1500人、ウクライナが戦場特有の激情に駆られてついつい25人処刑」くらいであろうところ、ずいぶんと大きく紙面の論調が変わったものです。

さらに驚かされるのは、読売新聞が「監視団はウクライナ側に拘束された捕虜229人に面会した。(中略)尋問中に捕虜の脚を撃った事例などがあったという」と報じたところです。拷問や虐待の被害率はロシアに囚われたウクライナ軍将兵の半分とされているとはいえ、ウクライナもロシア軍将兵に対してそれなりに拷問・虐待をしていたということが報じられたわけです。

米欧メディアが権力からそれなりに独立し、ジャーナリズム精神を展開しているところ、日本メディアはガキの使いの如く「GHQのプロパガンダ」を報じるに留まっています(もちろん歴史的事実としてGHQはとっくに解散していますが、事実上日本はいまも占領下にあると私は考えています・・・ありがたいことに我らが現代GHQ様は、当ブログのような社会的影響力皆無の発信を大目に見て下っています・・・감사합니다! Спасибо! Благодаря!)。そしてまた、我らが日本文化は「我々は徹底的に清廉潔白であり、敵方は徹底的に暗黒邪悪である」という構図を好むものです。それゆえ、今般の戦争の開戦以来、日本メディアは「ウクライナは絶対正義であり戦場でも正義を貫いているが、ロシアは絶対悪であり戦場で暴虐非道の限りを尽くしている」と描き続けてきました。そんな経緯の中での本件報道。CIAからゴーサインが出たんでしょうか?

アムネスティ・インターナショナルの人権レポートに対して斜め上の「批判」を展開したゼレンスキー・ウクライナ大統領や、その提灯持ちたる山添博史・防衛研究所主任研究官や佐々木れな・防衛・安保担当戦略コンサルタントは今回はどのような「反論」を見せるのでしょうか?(昨年8月21日づけ「戦闘地帯に取り残された非戦闘員個人の目線を忘れてはならない:アムネスティ報告書が示した範とそれを読み取れない日本言論空間の現状」参照) 国連無能・不要論くらいは平気で宣いそうなものです(呆)

ロシアが異様な執着を見せる東部バフムートでの攻防においてロシア軍が決定打を繰り出せない一方で、黒海へのアクセス確保という意味で重要なヘルソン・ザポロジエ方面への決定打を打ち出せないウクライナ軍。ウクライナ軍がバフムートに割く戦力は多すぎるのではないか、こんなんじゃクリミア奪還は無理だぞ、という警告はかねてよりアメリカから発出されてきましたが、ウクライナ側はそれを無視して来、今日に至っています。そうした経緯での本件。またしても「隙間風」を感じざるを得ません。
ラベル:国際「秩序」
posted by 管理者 at 23:24| Comment(6) | TrackBack(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ゼレンスキー氏、頻繁に前線視察 プーチン氏に対抗
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR27BG30X20C23A3000000/
 プーチンが頻繁に訪問すると「苦戦でテコ入れ」と否定的に評価する一方で、逆にゼレンスキーだと「兵士への思いやり」等と好意的に評価する傾向(つまりはでたらめな二重基準)が日本マスコミにあるように思いますね。この日経記事は違うようですが。
Posted by bogus-simotukare at 2023年03月28日 19:40
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/409850
戦時下に新法…ウクライナのメディア規制 ゼレンスキー大統領の汚職を掴んだら…報道はどうするのか【報道1930】
>ウクライナで、3月31日新しい法律が施行される。
 メディアに関する法律だ。
 その中に「自由の制限は、国家安全保障、領土保全または公の秩序の利益のためにのみ出来る」とある。メディアに配慮されているように見える表現だが、これらの条件に抵触すれば、自由を制限出来るという見方もできる。ウクライナの報道の自由は守られるのか
 番組では、ウクライナの独立系インターネットメディアの編集長にインタビューした。
『ウクラインスカ・プラウダ』 セウヒリ・ムサイエワ編集長
「ウクライナ社会はウクライナ軍の損失を知りません。2014年(クリミアでの)戦争が始まった時は、ウクライナ軍の損失も公開していましたが、今はやり方が変わって、自国の損失ではなくロシアの損失を公開するようになりました。
 今ウクライナで起きているような(侵略からの防衛)戦争の中で、そういった規制も理解できます。私たちが規制されているのは軍隊の移動、兵器の移動に関する情報を公開しないこと、立ち入り禁止区域に入らないこと、再攻撃の可能性があるのでミサイル着弾直後の写真や動画を公開しないこと、燃えている工場や発電所を背景に中継しないことです。これらは合理的ルールとして理解できる内容です。民間人、現地人、記者たちの命にとって危険だからです」
(引用終わり)

 ウクライナ万歳報道が多い日本では珍しい報道かと思います。
 他の部分はともかく少なくとも
>2014年(クリミアでの)戦争が始まった時は、ウクライナ軍の損失も公開していましたが、今はやり方が変わって、自国の損失ではなくロシアの損失を公開するようになりました。
は「理解していい規制」ではないでしょう。「開戦直後は公開していたが今は公開してない」とは明らかに「ウクライナの戦意高揚を阻害するから」と言う理由でしょう。
 「軍事機密が公開されるとロシアとの戦争に支障を来す」という理由ではない。
>再攻撃の可能性があるのでミサイル着弾直後の写真や動画を公開しないこと、燃えている工場や発電所を背景に中継しない
も「何処まで本当なのか」ですね。これまた「再攻撃の可能性がある」を口実にしてるだけで「ウクライナの戦意高揚を阻害するから」と言う理由ではないのか。

>『ウクライナ・プラウダ』 セウヒリ・ムサイエワ編集長
「“自主規制”という現象があります。支援や社会の団結に影響を与えかねないために戦時下で汚職について報道してはいけないと思っている記者もいます。
 私はこの意見に大反対です。戦時下においても汚職のような事実を社会から隠してはいけないと確信しています。ロシアのミニバージョンを作ってはいけないのです。」
(中略)
 ムサイエワ編集長に最後に聞いた。
「もしもゼレンスキー大統領の汚職について情報を掴んでしまったらどうするか」
『ウクラインスカ・プラウダ』 セウヒリ・ムサイエワ編集長
「当然私たちはそれについて伝えます。大統領を含め政府高官の汚職について、伝えない理由はありません」
(引用終わり)

 そりゃ公然と外国マスコミ(TBS)相手に「ロシアとの戦争勝利のためにはゼレンスキーやその側近に汚職や不正が見つかっても見逃す」とはいえないでしょう。
 実際に彼女なり「他のウクライナの記者なり」がゼレンスキーや側近の汚職、不正を報道できるかは何とも言えません。
Posted by bogus-simotukare at 2023年04月03日 06:34
bogus-simotukareさん

コメントありがとうございます。

今まさにウクライナの地で展開されていることは、戦時プロパガンダとは何たるか、戦時においてジャーナリズムはどこまで発揮できるのかということだと思います。ウクライナではいま戦意高揚・戦意維持が至上命題になっているように見受けられます。プロパガンダに対する耐性をつけなければならないと切に思います。
Posted by 管理者 at 2023年04月07日 22:17
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB098BF0Z01C22A2000000/
ウクライナで徴兵逃れ横行(2022.12.9)
 男性はウクライナ中部の医大生。仲介の依頼があれば、仲間の医師がいる徴兵事務所などで検査を受けてもらい、心臓病や脚の障害、精神障害などを装った診断書を軍に提出する。その後、1週間ほどで兵役免除の証明書、通称「ホワイトチケット」を入手できる。
 公文書偽造や徴兵忌避の容疑で当局に摘発される可能性があり、依頼を受けるのは、知り合いかその知人のみ。
 また総動員令では、18歳未満の子どもが3人以上いれば徴兵を免除されるため、3人分の偽造した出生証明を国境の検問所に提出し、摘発された男性もいる。


https://www.tokyo-np.co.jp/article/227119
「徴兵を逃れるため…」父の決断でウクライナの少年は国境を渡った(2023.1.25)
 南部クラクフの避難所では、18歳の少年2人と出会った。彼らは言葉少なに、「徴兵を逃れるために、国境を渡った」と語った。
 ウクライナでは、総動員令で18歳から60歳の男性は徴兵対象となり、出国が認められていない。領土防衛隊で故郷を守っている父親(50)が、オレクが17歳の間に家族でポーランドに行くよう決めたという。ペトロは経緯を詳しく語らないが、同様の理由で17歳の時に出国し、現在はオレクたちと共に暮らす。
 一家を知るウクライナ避難民の30代女性は、「息子の徴兵を逃れさせたい親の気持ちもわかるが、国の男たちは命を懸けて戦っている」といい、「とても複雑な気分だ」と話した。
(引用終わり)

 「ウクライナ国民皆が戦意に燃えてるかのような報道」は「事実に反する」という興味深い指摘です。
Posted by bogus-simotukare at 2023年04月14日 20:05
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230414/k10014038941000.html
NHK『ウクライナ 東部のバフムトで劣勢か』
 バフムトの戦況についてイギリス国防省は(中略)ウクライナ側は依然、バフムトの西部地区を保持しているものの(中略)一部の地域からは撤退を余儀なくされているとしています。
 バフムトについては、アメリカのシンクタンク戦争研究所も12日、ロシア側がバフムトの76.5%以上を支配しているとみられると発表していて、ウクライナ側は厳しい状況が続いているものとみられます。
(引用終わり)

 勿論、「キーウ陥落」のような「ロシアが圧倒的に有利な事態」になることはまずあり得ないでしょうが、報道が「事実であるならば」、「戦争がいつ終わるか分からない膠着状況」であることが改めて明らかになったと言えるのではないか。
Posted by bogus-simotukare at 2023年04月15日 04:59
bogus-simotukareさん

コメントありがとうございます。

ウクライナで徴兵逃れ横行している事実は、知っている人はかなり前から知っていることですが、読売やサンケイのような強烈な政治的信念が特にあるわけではない(=この戦争について割と冷静な目で見ることができる)日経新聞でこのような記事が出てきたことは注目すべきだと思います。

バフムート(アルチェモフスク)については、いったんウクライナ軍の反撃が見られましたが、どうも撤退ないしは遅滞戦術の一環であり本格的な奪還作戦ではないようで、ここ数日はついにロシア軍が完全掌握に向けて王手をかけたようです。昨秋以来、例外的にロシア軍が押し続けているバフムートの戦いについては、プロパガンダ及び世論分析において非常に興味深い展開が見られるので、戦いに区切りがつき準備が出来次第、特集してみたいと思います。
Posted by 管理者 at 2023年05月19日 21:27
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