Infuriating to see some media report “Kyiv and Moscow accusing each other” of ruining the Kakhovka dam. It puts facts and propaganda on equal footing. Ukraine is facing a huge humanitarian and environmental crisis. Ignoring this fact means playing Russia’s “not all obvious” game.カホフカ水力発電所のダムで爆発が発生した件の報道について、クレバ・ウクライナ外相がお怒りの模様。
カホフカ・ダムの決壊とそれによる洪水は、ロシア軍がせっせと仕込んできた地雷原などの防衛施設を押し流すことになります。地雷原などが流されることはウクライナ軍の利益になりますが、しかし、泥濘期が終わり地面が固まりつつあった大地が水浸しになることは新たな進軍阻害要素になります。いまウクライナは米欧諸国のパトロンたちに「成果」を挙げるようプレッシャーを受けているところなので、大地が水浸しになり進軍が困難になることはマイナス要素でしょう。総合的に考えたとき、ウクライナ軍にとって必ずしもメリットがあるとはいえないので、ウクライナ軍がダムを爆破したという説は、動機に照らしたとき疑わしく思われます。
ロシア側については、洪水によって大地が水浸しになることは、短期的にはウクライナ軍の進軍阻止になりますが、いままでせっせと構築してきた防衛施設が水に流されることは大きな損失です。どうせいつかは大地は乾くのだから、そのときのことを考えれば地雷原などが流されることはデメリットです。また、カホフカ・ダムはクリミア住民への水の供給を担っていたので、その破壊による結末は、クリミア併合を自身の歴史的成果と位置付けるプーチン・ロシア大統領の威信に傷をつけるものであるように思われます。だいたい、もしロシアがダムを爆破するとすれば、洪水予想エリアに西側供与の装備で固めたウクライナ軍部隊が展開したタイミングで爆破して水攻めにすることでしょう。このタイミングでのダム爆破は悪手であるように思われます。それゆえ、ロシア軍がダムを爆破したという筋書も動機に照らしたとき疑わしく思われます。
ちなみに、さきほどのNHK「ニュースウオッチ9」では、防衛省防衛研究所の山添博史氏が「双方にメリットがないので、いざというときのためにロシア軍が仕掛けていた爆発物が偶発的に炸裂したのではないか」といった趣旨の見解を示していました。、
冷静に考えれば、ロシア・ウクライナ双方にメリットがあるとは思えない情勢。それゆえ、メディアが慎重な報道をすることは私は当然のことと思いますが、クレバ外相はそうではないようです。
開戦初期であれば、米欧メディアは間違いなくウクライナの肩を持った報道をしたことでしょう。依然として、ロシアを永遠の宿敵と見なすイギリス政府は次のように主張しています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230606/k10014091271000.html
“ロシア側が水力発電所のダムを破壊” ウクライナ軍発表しかし、今や状況はかなり異なっています。正直言って、みんなそろそろやめて欲しいんですよね。
2023年6月6日 21時57分
(中略)イギリス外相 “民間インフラへの意図的な攻撃は戦争犯罪だ”
5日からウクライナの首都キーウを訪問していたイギリスのクレバリー外相は6日、ツイッターにウクライナ南部ヘルソン州にある水力発電所のダムが破壊されたことについて投稿しました。
このなかで、クレバリー外相は「忌まわしい行為だ」とした上で「民間インフラへの意図的な攻撃は戦争犯罪だ。イギリスは、ウクライナとこの大惨事の影響を受けている人々を支援する用意がある」としています。
(以下略)
クレバ外相の反応からは、状況の変化にウクライナ政府が十分に順応できていないことを示しているよう思われます。
また、いち早くウクライナ政府の肩を持ったイギリスですが、以前からアメリカやフランス、ドイツなどと比してウクライナへの肩入れの度合いが明白に異なっているように見受けられます。イギリス帝国の没落は著しいとはいえ、依然として無視できない国力は維持しています。しぶといイギリスの今後の動向にも注目が必要であると思われます。
そして「今日のウクライナは明日の台湾・沖縄」を踏まえるに、米欧諸国は無条件に「同盟国」の肩を持ってくれるわけではないことを、この一件は示していると言えるでしょう。やはり事大主義は我が身を危険に晒すものなのです。
ラベル:国際「秩序」