2023年06月29日

「中国経済の崩壊が始まった」とか「北朝鮮は追い詰められている」と同じ類の「プリゴジンの乱はプーチン政権の終わりの始まり」論

https://news.yahoo.co.jp/articles/a9aca92bccebb7a774ec7cad811409d50f7d958f
【報ステ】プーチン体制“終わりの始まり”か…ワグネル反乱の影響は 専門家2人に聞く
6/26(月) 23:30配信
テレビ朝日系(ANN)

ロシアの民間軍事会社『ワグネル』の反乱は、プーチン政権にどれだけ打撃を与えたのか。防衛省防衛研究所・兵頭慎治さん、ロシアの軍事・安全保障が専門の東大先端研専任講師・小泉悠さんに解説していただきます。

(以下略)
https://news.yahoo.co.jp/articles/a3996610cc7484e307cc87a693f785920870f7fc
三谷幸喜氏の目 プーチン政権の今後は「終わりの始まり」反旗を翻したワグネルの行動を読み解く
6/24(土) 23:02配信
日刊スポーツ

(中略)
 これについて三谷氏は「多くの独裁国家でクーデターを起こすの軍隊。(プーチン政権の)終わりの始まり」と語り、ワグネルの動きの背景について自身の見解を示した。三谷氏はNHK大河ドラマ「新選組!」「鎌倉殿の13人」の脚本を担当し、歴史の転換点を鋭い目線で研究。今後のロシア情勢の展開についても予測した。

(以下略)
あっけなく終わった「プリゴジンの乱」を「プーチン体制の終わりの始まり」と位置づける向きが強まっていますが、まさに「ものは言いよう」。実際のところは、次の記事が指摘しているとおりだと考えます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d025afcba4c4f5c095e0bd662c5326ab67a47dbf
武装反乱、プーチン政権弱体化には至らず 笹川平和財団の畔蒜主任研究員
6/27(火) 7:16配信
時事通信

 笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員(ロシア政治外交)は26日、時事通信の電話取材に対し、ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏による武装反乱について、直ちにプーチン政権の弱体化につながるわけではないとの見方を示した。

 主なやりとりは次の通り。

 ―政権への影響は。

 プーチン大統領にとって、武装反乱を起こしたプリゴジン氏を何の罪にも問わず、事実上の亡命を許したのは政敵への妥協で、政権の権威にある種の傷が付いた。しかし、プーチン氏の代わりとなる人物はおらず、今回の反乱でプーチン政権が急速に政治的求心力を失い、レームダック(死に体)化や弱体化するとは考えられない。

(中略)
 ―国内の警戒態勢に変化はあるか。

 今後、警戒態勢をある程度強める可能性はある。ただ、今回の反乱はかなり特殊なケースで、ワグネルのように数万人の部隊を動かせる組織は国内には他にない。テロや類似の襲撃が散発的に起きることはあり得るが、軍というより連邦保安局(FSB)や国家親衛隊(旧内務省軍)の担当だ。

 ―ウクライナ侵攻への影響は。

 反乱が長期化していれば戦況に大きな影響を及ぼしただろうが、それは回避された。プリゴジン氏との「取引」はプーチン氏にとってマイナスであり、軍事衝突の回避を優先したのだろう。ワグネルは5月の(ウクライナ東部の要衝)バフムト制圧宣言後、戦闘で重要な役割を担っておらず、離脱しても影響はあまりない。
開戦以来、「プーチン政権の終焉近し」と言われ続けてきたのに、ようやく顕在化した「その兆候」と言えなくもない「プリゴジンの乱」を「終わりの始まり」などと位置づけるとは、プーチン政権は一体いつになったら崩壊するのでしょうか?

恐らく、冷静に考えたとき、「プリゴジンの乱」の顛末は上記、畔蒜泰助氏の分析のとおりなのだと思われます。プーチン大統領の威信には一定の傷が付いたものの、それは致命的な傷とは言えず、彼が直ちに求心力を失うとは言えないこと。ワグネルほどの組織はロシア国内には他に存在しないこと。ウクライナ侵攻への影響は小さいと思しきこと。しかしそれを認めたくないので、「終わりの始まり」という表現を使うことで「プーチンは少しずつではあるが、確実に着実に破滅に向かっている」と位置づけ、辛うじて精神を安定させようとしているのでしょう。「中国経済の崩壊が始まった」とか「北朝鮮は追い詰められている」と同じ類のものだと思われます。

ちなみに、「終わりの始まり」という表現は、既にNHKが昨年11月に使っています(「「プーチン氏の終わりの始まり」 ソビエト崩壊予見の学者の言葉」2022年11月14日)。「終わりの始まり」が始まってから既に半年以上たっているわけです。「北朝鮮の崩壊は近い」と言われて20年以上経ちましたが、プーチン政権についても、同じような展開が予想されます

それにしても日本世論は、敵国が何らかの形で追い詰められていないと自己の精神の安定を保てないんでしょうか? 対ロシア、対中国、対共和国について、あまりにも牽強付会な分析が長年にわたって横行しています。冷静かつ大局的に考えたとき、「でもやっぱり崩壊・破滅していないし、近いうちに崩壊・破滅しそうもないな」と気付かないとは思えないんですがね・・・見て見ぬふり? 大日本帝国軍みたいですね。
posted by 管理者 at 22:12| Comment(2) | TrackBack(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「プリゴジンの乱」は「プーチンの終わりの始まり」のようには見えない
執筆者:小泉悠
https://www.fsight.jp/articles/print/49875
 会員登録しないと本文が読めず、俺は会員でないので本文が分かりませんがタイトルからして「楽観論とは一線を画してる」のでしょう。日本マスコミも少しずつ変化し始めてるのでしょうか?
 それにしても「事件直後は大騒ぎされたが、短期で終了」「プーチン政権の権力に恐らく大きな影響を与えない」と言う意味ではまさに「ロシアの226事件(226事件を実行した皇道派が粛清されただけで、権力構造に大きな変化無し→今回のロシアも同じ)」だと思いますね。
Posted by bogus-simotukare at 2023年07月03日 21:06
bogus-simotukareさん

コメントありがとうございます。

「まさにロシアの226事件」と評価していただきありがとうございます。

いまだにプリゴジンの乱からプーチン政権の動揺の種を見出してプロパガンダにしようと努力している人たちがいるようですが、その試みは成功してはおらず、何よりも大衆が既にこの件に飽きているので徒労に終わることでしょう。
Posted by 管理者 at 2023年07月22日 22:36
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