秋田県、クマ対策で弾丸購入費など支援へ 抗議電話に佐竹知事「業務妨害だ」もとはと言えば、山と人里の中間にあった田畑が放棄されたことや山の環境変動といった事情が、クマが生息地域を拡大させ、棲み分けを破って人里に出没するようになった大きな要因だったはず。しかし、環境を復元して棲み分けを正常化するという正道ではなく、人里に下りて来たクマを射殺・駆除するという当座しのぎの対処療法で誤魔化してきたわけです。そのツケを、今般の尋常ならざる人身被害の続出という形で払わされているというのが実態でありましょう。
10/24(火) 6:00配信
河北新報
佐竹敬久秋田県知事は23日の定例記者会見で、県内で相次ぐツキノワグマの出没や人身被害を受け、駆除を担う猟友会員らの弾丸の購入費用などを県が負担する考えを明らかにした。駆除への慰労金と合わせた関連費用約1500万円を本年度予算に計上する方針。
本年度の人身被害は同日時点で46件53人に上り、過去最悪を更新している。捕獲頭数は1030頭(9日時点)となり、県計画が定める本年度の捕獲上限1582頭に近づいている。
佐竹知事は捕獲の在り方について、人命優先だとして「緊急避難的には撃てる状況なら撃つのが一番で、捕獲頭数は後の問題。猟友会が駆除できる状況をつくっていく」と強調。11月〜来年2月の狩猟期間を見据え、弾丸などの経費を負担し駆除を後方支援する。
(中略)
駆除に抗議する電話が県庁に届いていることについては「参考になるメールなどは若干考慮するが電話は一番乱暴」と持論を展開。氏名を名乗らない一方的な通話が大半だとして「付き合うと仕事ができない。業務妨害だ」と述べ、応対は不必要との認識を示した。
動物愛護系人士がクマ駆除の報に接するたびに抗議の架電をするというのは今に始まったことではありません。私の周りには動物愛護活動家も秋田県職員もいないので、実際にどういう電話が掛けられているのかは存じ上げませんが、動物愛護系人士の平生の主張から推察するに「殺すのではなく棲み分ける方向に持っていくべきだ」という意見もあるのではないでしょうか。
佐竹敬久秋田県知事は引き続き当座しのぎの対処療法を続ける姿勢を鮮明にしています。既に根本原因は明白であるにもかかわらず。「業務妨害」などと感情丸出しにしているあたり、駆除に駆除を重ねるつもりなのかも知れません。もちろん、ここまで事態が深刻化してくると自身の責任問題になってくるので佐竹氏が「駆除する」で頭がいっぱいになってしまうのも分からなくもありませんが、ますます泥沼に嵌り込んでいるように思えてなりません。そもそも前述のとおり、耕作放棄地を放置しておいて対処療法的な駆除に頼ってきたから今日があるわけですから。追い詰められた人はゼロか100かの数直線的思考に陥りがちで、両立という方向に思考が回りにくいものです。
「人命優先」というのであれば、以前の記事でも述べましたが、根本対策を打つのではなくクマが現実に人里に接近して初めて対処療法的に駆除するという手法は、ほんとうに「人命を守るため」と言えるのか甚だ疑問であります。
もちろん、環境の復元・棲み分けの正常化には、今回計上された1500万円では間に合わない巨額の費用が必要です。とはいえ、1500万円費やしたところで人里に下りて来たクマを射殺・駆除するという当座しのぎの対処療法に頼っているようでは根本解決には至り得ません。同じペースで10年間予算計上すれば1億5000万円。20年で3億円。それでもクマが人里に出没しなくなる保証はないし、人身被害がなくなる保証もありません。本当に「人命優先」というのであれば、対処療法的な駆除ではなく耕作放棄地問題を解決して根本原因を断つ必要があるでしょう。
秋田県がひとり抱える問題ではないと考えます。耕作放棄地問題はさまざまな面で全国的問題であります。もうちょっと岸田に仕事をさせた方が良いでしょう。
ラベル:社会