2万7千余人が当選、投票率99.63%/道・市・郡人民会議代議員選挙新たに定められた選挙法の下で初めて実施された今般の地方人民会議代議員選挙。選挙後の12月1日づけ朝鮮総聯機関紙『朝鮮新報』(紙媒体)が6面で「代議員定数より候補者を多く選抜」という解説記事を掲載したことが明らかに示しているとおり、今般の地方人民会議代議員選挙の注目点は、何よりも少なくとも推薦獲得の過程において代議員候補者(被選挙人)が競争的な方法で選出された点にあると言えます。
2023年11月28日 13:26
共和国
11月26日、道(直轄市)・市(区域)・郡人民会議代議員選挙が行われた。朝鮮中央通信が配信した選挙結果に関する中央選挙指導委員会の報道によると、選挙者の99.63%が投票し、2万7858人の労働者、農民、知識人と活動家が代議員に当選した。今回の選挙は、新たに定められた選挙法の下で初めて実施された。
金正恩総書記が参加
中央選挙指導委員会の報道によると、今回の選挙には全国的に選挙人名簿に登録されたすべての選挙者の99.63%が投票。外国に滞在中、または遠海での作業により投票できなかった選挙者が0.37%、棄権した選挙者が0.000078%であった。また、投票した選挙者のうち、道(直轄市)人民会議代議員候補に対して賛成した選挙者は99.91%、反対した選挙者は0.09%、市(区域)・郡人民会議代議員候補に対して賛成した選挙者は99.87%、反対した選挙者は0.13%であった。
(以下略)
当該記事によると、共和国の選挙制度は「全国の選挙区・選挙分区に組織された選挙委員会が「選挙者会議」を経て推薦した代議員候補者一人に対し、当該の選挙区の選挙者たちが賛否について投票する形式」で行われるもので、「選挙に先だって選挙者会議で候補者に対する資格審査を行い、候補者を確定」する特徴をもつとのこと。今回の新法では、固定指標対象を選挙する選挙区では一人を、選抜指標対象を選挙する選挙区では二人を推薦することになっており、「定められた代議員数よりも多く選抜されたことで、選挙者会議の参加者たちが候補者の中から自らの意思に基づいて直接対象を選定できるようになった」そうです。
「固定指標対象」「選抜指標対象」というのは日本では聞き覚えのない特殊な用語ですが、固定指標対象の選挙区について当該記事では「固定指標対象として推薦された代議員候補者一人に対する投票は、選挙者会議の参加者の過半数以上の賛成を得られれば候補者として登録される。過半数以上の賛成を得られない場合は、別の候補者を立てて再度、選挙者会議を行」い、選抜指標対象の選挙区については、「より多く得票した者を候補者として登録」するといいます。
また、11月15日づけ『朝鮮新報』(電子版)は≪「〈법규해설〉 선거표는 《찬성》 혹은 《반대》투표함에 」≫(〈法規解説〉投票用紙は《賛成》あるいは《反対》の投票箱に )において、投票所についても≪선거자는 찬성하면 선거표를 《찬성》투표함에 넣으며 반대하면 선거표를 《반대》투표함에 넣는다. 선거자가 투표할 때 투표실에는 그 누구도 들어가거나 들여다볼수 없다.≫(選挙者は、賛成の場合は投票用紙を《賛成》の投票箱に入れ、反対の場合は投票用紙を《反対》の投票箱に入れる。選挙者が投票するとき、投票室には誰も入ったり覗くことができない)と報道。前掲12月1日づけ紙媒体記事でも「投票室には選挙者一名のみ入室できる」としつつ、かつての投票方法――選挙人は、投票用紙を受け取った後、賛成投票の場合はそのまま投票箱に票を投じ、反対投票の場合は鉛筆を取ってバツ印をつけてから投票する―に敢えて触れることで、新法による投票方法の新しさを強調しています。
さらに、前掲11月15日づけ電子版記事において≪당선된 최고인민회의 대의원은 중앙선거위원회가, 도(직할시)인민회의 대의원은 해당 도(직할시)선거위원회가, 시(구역), 군인민회의 대의원은 해당 시(구역), 군선거위원회가 발표한다.≫(当選した最高人民会議代議員は中央選挙委員会が、道(直轄市)人民会議代議員は該当の道(直轄市)選挙委員会が、市(区域)、郡人民会議代議員は当該市(区域)、郡選挙委員会が発表する)と報じたとおり、新法の制度は最高人民会議代議員選挙にも適用される予定のものであることが明らかになっています。中国の全国人民代表大会の選挙とも異なる共和国独自の選挙制度と言えそうです。
選挙者会議が具体的に如何なるメンバーで構成されており、そして如何なる基準で推薦を出しているのかは外部には伝わってきませんが、選挙者会議において被選挙人が競争的な方法で選出されるようになった(少なくともそれが公になった)ことは、共和国の政治において特筆すべきことであると思われます。日本テレビは「金正恩総書記が地方選で投票 民主的な選挙をアピールか 軍事境界線で“新たな動き”も…」(11/27(月) 20:45配信 日テレNEWS NNN)なる駄文を飛ばしていますが、もしそうだとすればもっと大々的な宣伝をしているはずで、当ブログは記事執筆にこんなに苦労しなかったはず。共和国が選挙制度改正に乗り出した真意はあくまでも内政のためでしょう。党と国家のためにより忠誠心が高く有能な人材を登用して人民大衆中心の社会主義国家を盤石なものにしようとする確固たる意思を見て取ることができます。
ラベル:共和国