2024年02月22日

「地方発展20×10政策」の本格始動

https://chosonsinbo.com/jp/2024/01/30rh-13/
地方発展20×10政策」、本格始動/担当推進委員会設置
2024年01月30日 13:56
経済

10年で全国の生活レベルアップへ
「地方発展20×10政策」が実行段階に入った。朝鮮労働党の決定に沿って、同政策の非常設中央推進委員会が活動を始め、新たな地方産業発展戦略が本格的に始動した。

30日発朝鮮中央通信によると、地方発展20×10非常設中央推進委員会が活動に着手した。

金正恩総書記は最高人民会議第14期第10回会議(1月15日)で、江原道金化郡をモデルとし毎年20カ所の市、郡に新たな地方産業工場を建設し、10年間で全国すべての市・郡の住民の生活レベルを引き上げる「地方発展20×10政策」を提示した。

党中央委員会第8期第19回政治局拡大会議(同23〜24日)では、「地方発展20×10政策」の実践計画と方略が示され、同政策に関する決定書が採択された。また、同政策の実行のための活動体系として非常設推進委員会を立ち上げることが明かされた。

同推進委員会の活動は、最高人民会議第14期第10回会議で示された党中央委の組織指導部に地方産業建設指導課を新たに設置する方針に従い、党中央委員会の趙甬元組織書記が指導する。

(中略)
同推進委員会の活動内容は、新たに建設される地方産業工場の設計、施行などの工事の推進状況と原料調達などを統一的に指導することだ。

現在、同推進委員会では、市・郡の人口と自然地理的条件などを考慮し、工場の規模と生産能力を合理的かつ効果的に定め、毎年建設される工場の設計を、労力削減、面積削減、エネルギー削減、技術集約型の原則に沿って、計画的に先行させるための実務対策を立てている。また、建設メンバーの編成と、資材および設備の保障、食料工業と軽工業の発展のすう勢に合わせた工場建設に関する方策を探し出している。

それと同時に、地域の原料拠点を築き、地方産業工場の生産を正常化させるための対策を立てている。
「地方発展20×10政策」が本格的に始動したとのこと。10か年計画であるがゆえに現段階で何か語れることはなく、その進行を見守る他ありませんが、当ブログでは1月29日づけ「朝鮮式社会主義の特徴を糾合した「地方発展20×10政策」の推進方法について」で述べたとおり、「当該地域の実情に応じた形で推進すべきである」、そして、「各部署が合意形成の方法で連携を取って推し進めてゆくべきである」という政策の基本的な方向性の点において、「互いに競争する風潮を確立して多角的な成長を促す」と言明されている点において、全面的に支持すべき現代的な社会主義建設路線であると考えています。

今回立ち上がった非常設推進委員会は、チョ・ヨンウォン同志が指導するとのこと。元帥様の腹心中の腹心である彼が責任者に任命された点に、元帥様の本気度が表れているといえます。

ところで、まだ5か年計画が終わってもいないのに新しく10か年計画と言い得る「地方発展20×10政策」が打ち出された点に注目したいと思います。私がよく参考にさせていただいている個人ブログ「rodongshinmunwatching」様は、「2024年1月26日 「地方発展20×10政策」のモデル・金化郡の地方工業工 場(1月27日加筆版)」で「昨年末の党中央委第9回全員会議でも、今年の基本目標を5カ年計画遂行の明白な実践的担保」の確保と定めていた。そうした中で、新たに今年から10年と言う枠組みで、新たな重大目標を設定し、それを何としてでも実現しようとするなら、従前の計画はどうなるのであろうか」と、至極当然の疑問を呈されています。

朝鮮総聯機関紙『朝鮮新報』が「整備・補強戦略−現段階における朝鮮労働党の経済戦略だ。より大きな飛躍を遂げるために、自立経済の土台を再整備する」と指摘している(https://chosonsinbo.com/jp/2023/07/05-98/)とおり、今次の5か年計画の柱が「整備・補強戦略」であることを考えると、整備・補強の残ったノルマを片づけつつ本来であれば次の段階に位置する発展にかかる事業を繰り上げで開始したものと考えることができるのではないでしょうか

整備・補強の残ノルマはそれほど多くはないもの(少なくともそう位置づけられている)と思われます。1月15日づけ「朝鮮労働党中央委員会第8期第9回総会拡大会議について」において指摘しましたが、一昨年末の朝鮮労働党中央委員会第8期第6回総会拡大会議では、チュチェ112(2023)年について、「2023年を国家経済発展の大きな歩みを踏み出す年、生産の成長と整備・補強戦略の遂行、人民の生活改善で要の目標を達成する年に規定し、全般的部門と単位の生産を活性化し、党大会が決定した整備・補強計画を基本的に遂行することを経済活動の中心課題に提示」していました。これに対して昨年末の朝鮮労働党中央委員会第8期第9回総会拡大会議では、チュチェ113(2024)年について「人民経済の全ての部門で生産成長に拍車をかけ、整備・補強を急いで終え」るというくだりが現れました。基本的に整備・補強は計画どおりに進んでおり、あと少しのやり残しを片づけるという段階に達しているものと思われます。

「rodongshinmunwatching」様は、1月16日づけ「2024年1月16日 最高人民会議第14期第10回会議の開催状況を報道」で、「地方発展20×10政策」が突如として提唱されたことについて「 最高人民会議において、閉幕したばかりの中央委全員会議の決定内容を批判し、それを覆す方針を打ち出すというのは、空前のことであり、今次会議最大の注目点と言うべきであろう。また、このことからは、中央委で金正恩の意にそぐわない内容が決定されることがありうること、同時に、金正恩は中央委決定を随時無効化・修正できることなど、金正恩の指導権の実情を考察する上で非常に重要な材料を提供するものといえる」と指摘されています。非常に鋭いご指摘だと思います。

これから申し上げることは空想レベルの完全なる憶測ですが、朝鮮労働党は大衆の意識動向を非常に重視しているので、党中央委員会総会での決議に対する世間一般の反応を党組織網を挙げて収集した結果、整備・補強のやり残しを片づけてから新しい取り組みを開始するのではなく、今すぐに新事業を繰り上げて開始する必要があると判断したという見方ができるのではないかと当ブログは考えます。そのように考えないと、閉幕したばかりの中央委全員会議の決定内容を批判し、それを覆す方針を打ち出すことを合理化できないように思われます。

rodongshinmunwatching様は、「第2次7カ年計画(1978〜84年)の計画期間中である1980年に「80年代中に達成すべき」として「10大展望目標」を打ち出した結果、「7カ年計画」を事実上2年延長(第3次7カ年計画は87年から開始)せざるをえなくなったことが想起される」と指摘されています。そういえばそんなこともありました。

ただ、当時とは状況が異なっているように思われます。パク・ボンソン先生著『北朝鮮「先軍政治」の真実―金正日政権10年の回顧』(光人社、2005年)で書かれているとおり、ソ連・東欧社会主義圏の崩壊によって共和国は友邦を一挙に失いました。その結果、かつて共和国は、今村弘子氏著の『北朝鮮「虚構の経済」』(集英社新書、2005年)で書かれているように「建国以来、社会主義国でありながら計画経済が機能しない「計画なき計画経済」国家であり、また「自立的民族経済」を掲げながらその実態は援助の上に成り立つ「被援助大国」であり、対外経済関係ではボーダレスには程遠いボーダ「フル」な経済国家」だったところ、否でも応でも本当に自力更生せざるを得なくなりました。現在の共和国経済の自立性・強靭性は、実態として社会主義諸国からの経済援助に大きく依存していた1980年代とは質的に異なっているように思われます

もちろん、このことについては結局は長い目で見てゆくほかないと考えます。なんといっても10か年計画ですから。
ラベル:共和国
posted by 管理者 at 21:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
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