2024年06月14日

元帥様が自らを現代共産主義運動の指導者であると宣言なさった朝鮮労働党中央幹部学校の開校式

http://www.kcna.kp/jp/article/q/7cae33059835339d4d51fadf17095bc9.kcmsf
朝鮮労働党中央幹部学校の開校式が盛大に行われる
金正恩総書記が意義深い記念の辞を述べ、初の講義を参観

【平壌6月2日発朝鮮中央通信】聖なる党創立理念と精神をしっかり継承してチュチェの偉業の洋々たる前途を頼もしく保証していくであろうわが党の中核幹部を育成する権威ある革命大学としての様相を最高の水準で備えた朝鮮労働党中央幹部学校が意義深い創立78周年を迎えて開校した。

朝鮮労働党中央幹部学校の開校式が6月1日、盛大に行われた。

開校式場は、党中央の大いなる信頼と全ての党員の大きな期待がこもっている世界一流の政治・思想学園で偉大な金正恩時代の党建設と党活動の真理を体得することになった学生の限りない誇りと栄誉、党の将来のための神聖な教壇を守っている教育者の崇高な使命感と感激で沸き返っていた。

朝鮮労働党総書記で朝鮮民主主義人民共和国国務委員長である敬愛する金正恩同志が、開校式に出席した。

(中略)
栄光に輝く朝鮮労働党旗の前で、李英植校長の先唱に従って全ての学生が宣誓を行った。

彼らは、偉大な金正恩総書記の革命思想でしっかり武装し、独創的な5大党建設理論と党活動の実務に精通し、赤旗と最後まで運命を共にする赤旗精神の体現者、わが党の栄光と未来をしっかり保証していくチュチェ革命の旗手となって、永遠に金日成・金正日主義偉業と党中央の指導に忠実に従うことを厳かに誓った。

開校式は、歌「インターナショナル」の奏楽で終わった。

(中略)
敬愛する金正恩総書記は、再教育講習に参加する党中央委員会政治局のメンバーに会った。

金正恩総書記は、最も正義で遠大な理想の実現へと革命を導くわが党の無比の指導力は他ならぬ党幹部陣容の能力と質的水準にかかっていると述べ、全ての幹部、特に党中央指導機関のメンバーから党性、革命性の鍛錬の溶鉱炉である党学校で定期的な再教育を受けて政治的・思想的に絶え間なく鍛錬、修養し、活動方法と作風を不断に革新していくのは全党の強化において非常に意義ある工程であると語った。

金正恩総書記は、党中央委員会政治局のメンバーが全校に革命的な学習気風、厳格な校風を立てる上でも手本となり、かがみとなるべきだと述べ、全党を闘う党に、活動する党にだけでなく学習する党にする時、朝鮮労働党は名実共に政治的に円熟であり、組織的に強固であり、思想的に純潔であり、規律において厳格であり、作風において健全である最も尊厳ある社会主義政権党の威容を引き続き力強く宣揚するであろうと述べた。

敬愛する金正恩総書記は、再教育講習を受ける学生の初の講義を参観した。

金正恩総書記は、講義の全過程を注意深く聴講し、史上類例のない困難で厳しい朝鮮革命の初期に誕生して強化され、その不滅の生命力を余すところなく発揮するチュチェの革命思想は、先行した理論の制約と未決課題を完璧(かんぺき)に解決した偉大な革命学説、永遠なる万能の革命大綱であると述べた。

金正恩総書記は、中央幹部学校の使命と任務、時代の要求に即して党性の鍛錬を基本にしながら原理教育と実践教育を円滑に行えるように教育の綱領を深化させて確実に実行し、全ての教育過程と日常生活が学生をして党活動、革命活動に必要な思想的・精神的糧を絶えず摂取し、共産主義者の品性を自分のものにしていく立派な講義になるようにしなければならないと述べた。

金正恩総書記は、社会政治学博士であり副教授である金日成・金正日主義基本講座の教員チュ・イルウンさんの講義水準がとても高い、われわれの党思想理論の代弁者としての実力を持っていると高く評価し、学校は全ての教員と研究士の水準を絶え間なく向上させるための旋風を巻き起こして高い教育者的水準と実力で学生を真の革命家、熱烈な愛国者、真の人間としての品格を完璧に備えるように教育する上で一大革命を起こさなければならないと強調した。
朝鮮労働党中央幹部学校が大々的に開校式を迎えました。5月16日づけ「金正恩総書記が完工した朝鮮労働党中央幹部学校を現地指導」によると、最近校舎が完成したとのこと。23日づけ「金正恩総書記が朝鮮労働党中央幹部学校の建設と盛大な竣工行事を成功裏に保障した軍人建設者と設計士、芸能人と共に記念写真」によると、5月15日に続き22日にも元帥様は現地指導なさったとのこと。今回の開校式を含めると、短期間のうちに3回も訪問している点において、元帥様の党中央幹部学校に対する並々ならぬ思い入れを強く感じるところです。

朝鮮総聯機関紙『朝鮮新報』は、電子版では6月7日・紙面版では6月10日づけコラムで「社会主義の歴史は革命を牽引する党の歴史といえる。ソ連・東欧諸国で社会主義崩壊をもたらした執権政党の変質は、かれらが革命の原則を捨て民心を裏切ることから始まった。学習は誰にとっても重要だが、特に社会主義政党の幹部は自らを絶えず修練しなければ、いつしか思想的に堕落することを肝に銘じなければならない」と指摘していますが、党中央幹部学校の重要な位置づけを非常に端的に表現しているといえるでしょう。

5月16日づけ記事は、ちょっと分かりづらいのですが、画面右上のカメラマークのアイコンをクリックすると写真のページに飛びます。全20枚の写真のうち、2枚目には、校舎に掲げられるマルクスとレーニンの肖像画が確認できますキム・イルソン広場に掲げられていたマルクスとレーニンの肖像画が撤去されてから10年以上の歳月が過ぎましたが、久しぶりに共和国の公的施設においてマルクスとレーニンの肖像画が掲げられているのを見ました

マルクスとレーニンの肖像画の撤去は、静かではあるが非常にインパクトのある出来事でした。

西暦1988年の建国40周年記念パレードにおいては、日本では「金日成のパレード 東欧の見た“赤い王朝”」として知られているポーランド人民共和国国営テレビ取材班作成の"Defilada"で収録されていたとおり、マルクスとレーニンの肖像画がパレードの隊列に掲げられていました。しかし、チュチェ思想のマルクス主義に対する独自性を強調するようになる西暦1990年代以降、共和国におけるマルクスやレーニンの立場は著しく低下し、彼らの肖像画が掲げられる機会は滅多になくなったものでした。数少ない例外的事象が、キム・イルソン広場のそれだったと言えるでしょう。

キム・イルソン広場のマルクスとレーニンの肖像画は、現在の対外経済省庁舎の壁に掲げられていたのですが、対外経済省庁舎はちょうど閲兵隊伍が辞去する方向に建っていたので、彼らの肖像画が映像に映り込む機会は非常に乏しいものがありました(勇ましい軍事パレードなのだから、歩兵や戦車の後ろ姿よりも銃剣や砲身を高く挙げて勇ましく進入してくるシーンを撮りたくなるのは当然でしょう)。しかし、首領様生誕100年記念閲兵式では慎重ではあるが明らかに意図的に、複数回にわたって「画にならないはず」の閲兵隊伍の辞去シーンが放映されたものでした。当時、当ブログ管理者周辺でもこのことが示す意味合いについて議論になったことを覚えています。明らかに、マルクスとレーニンの肖像画を撤去したことを内外に示す意図が込められていたものと考えられます。

それから12年が経ちました。ここにおいて、わざわざ写り込ませなくても十分に記事として成り立つはずであるところ、5月16日の記事が敢えてマルクスとレーニンの肖像画を背景に元帥様の現地指導の様子を写真に収めたことの意味合いを深く捉える必要があると考えます。また、6月2日づけ上掲引用記事が敢えて「校式は、歌「インターナショナル」の奏楽で終わった」と明記したことについても、その意味合いを深く捉える必要があるとも考えます。

先般、元帥様の肖像画が先代首領たちの肖像画と並んで掲揚されるようになったとの報道が出てきました(「北朝鮮 キム総書記の肖像画を祖父・父と並べ掲示 映像初公開」2024年5月22日 17時10分)。先代首領たちに元帥様が並ばれたわけです。

ここで重要なのが、「単なる先祖返りではない」ということです。平井久志氏は「【日本一詳しい北朝鮮分析】金正恩が「2つの朝鮮」を宣言した背景」なる長ったらしい文で「北朝鮮は、2019年2月のハノイでの米朝首脳会談の決裂以降、北朝鮮は社会主義への回帰を強め、「共産主義へ行こう!」というスローガンを叫び、住民統制を強めている」などと書き立てていますが、たとえば、長きにわたって朝鮮式社会主義の経済建設の特徴とされてきたテアンの事業体系が憲法条文から削除され、替わって社会主義企業責任管理制や社会主義的競争熱風が既定路線として定着し切っています。彼が宣う「住民統制」が具体的に何を指すのかのは明確ではありませんが、テアンの事業体系が憲法に謳われるほどの国是だった時代ではないことは、明々白々のことでありましょう。時代の要請に即した新たな政策は続いているわけです。

先代首領たちに元帥様が並ばれたことに今回の朝鮮労働党中央幹部学校の開校式を関連づけるとすれば、マルクスとレーニンの肖像画を党中央幹部学校の校舎に掲げたことを内外に示し開校式を「インターナショナル」の奏楽で終わらせたことは、元帥様は、マルクスやレーニンという共産主義運動におけるビッグネームの系譜に自らを位置づけつつ、自らを現代共産主義運動の指導者であると宣言なさったと言ってよいと考えます。このことはつまり、記事中に「(党中央幹部学校の学生たちは)偉大な金正恩総書記の革命思想でしっかり武装し、独創的な5大党建設理論と党活動の実務に精通し、赤旗と最後まで運命を共にする赤旗精神の体現者、わが党の栄光と未来をしっかり保証していくチュチェ革命の旗手となって、永遠に金日成・金正日主義偉業と党中央の指導に忠実に従うことを厳かに誓った」というくだりにも現れているとおり、元帥様がいよいよイデオロギー解釈権を確固たるものにしたことを示しているでしょう。

rodongshinmunwatching様は、5月22日づけ「2024年5月22日 党中央幹部学校の竣工式開催、金正恩の出席・演説を報道」で次のように指摘されています。
同校の新たな発足を契機として、自身を金日成・金正日のみならず、マルクス・レーニンの延長線上に、彼らと同等の存在として位置づけた上で、「新たな時代」の「環境・条件」が過去とは異なるものであることを強調し、それに即して自分が提示した路線(党建設5大方針など)を党活動の基調として徹底させていくことであろう。それは、要するに、党の「首領」としての自らの立場を確立することともいえよう
同感です。
posted by 管理者 at 21:59| Comment(2) | TrackBack(0) | 時事 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
個人的には、今回のマルクスとレーニンの肖像画は、ある種の「原点回帰」の様な物だと思いました。元帥様の演説でも「創党理念」がかなり強調されていましたので。

一部では、「ロシアに媚びてる」だの、「主体思想消し」だのという変な「分析」が出てきている様ですが、前者はロシアとソ連を混同していますし、後者は「金正恩同志の革命思想」を主体思想と切り離して考えています。一目で見て荒唐無稽だと思います。

元帥様の肖像画が首領様・将軍様の太陽像と一緒に掲げられた事に関しても、一部の「専門家」は将軍様の肖像画は首領様の逝去後に掲げられる様になったという大嘘を根拠として「早すぎる」だのと言っていました。個人的には、御三方の肖像画は「金日成─金正日主義の継承者」としての元帥様を強調する為の物の様な気がします。
Posted by ぐう at 2024年06月14日 22:19
ぐうさん

コメントありがとうございます。

当ブログも、この一連の出来事は、マルクス・レーニン主義とキムイルソン・キムジョンイル主義を継承する現代共産主義運動の創造的指導者として元帥様を位置づけるものと考えています。
このことは、共産主義運動の原点に立ち返ることではあるものの「単なる先祖返りではない」ことについては、コメント欄でも再度強調させてください(ぐうさんが、そう仰っていると言っているわけではありません。大切なことは何度でも強調したいだけです)。

「主体思想消し」云々の指摘は、論拠が乏しく失当であると当ブログも考えます。
Posted by 管理者 at 2024年07月02日 21:17
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