当ブログは、ヤフーニュース等で公開されている記事に対する論評(批判)という形で朝鮮民主主義人民共和国(共和国)に関する主張を展開してきましたが、興味本位・ゴシップ的な記事について取り上げることは、ほとんどしてきませんでした。
これは、@その手の興味本位・ゴシップ的な記事は裏が取れない「独自情報」を基に書かれているので、肯定も否定もしかねる内容であることが多かったり、A欧米諸国を含む第三国発の複数のニュースソースを少し調べ整理し、それらを筋道を立てて考察すれば、直ちに論理的に矛盾を呈し、その真相がバレるくらいの程度の低いデタラメであったり、あるいは、Bまさしく週刊誌的と言う他ないようなレベルの話題があまりにも氾濫しているためです(ちなみに、スルーしているだけで、チェック自体はしていますヨ)。
そんな私が定期巡回の中で見つけたのが、下記『デイリー新潮』記事。「ちょっと調べればすぐに矛盾が分かるレベル」かつ「まさしく週刊誌」である点、私の評価基準では「取り上げ順位最下位」クラスの記事なのですが、
あまりの支離滅裂さに逆に面白さすら感じるシロモノです。この面白さを読者の皆様と共有したく、今日は取り上げたいと思う次第です。
まずは引用しましょう。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171003-00530961-shincho-kr>> 日本人を狙う「北朝鮮プロパガンダ誌」核・ミサイル開発“大讃美”特集の唖然
10/3(火) 6:05配信
デイリー新潮
「世界に誇るウリナラの最新チュチェ武器」
「月刊セセデ」という雑誌がある。朝鮮青年社(東京都千代田区)が発行しており、在日本朝鮮青年同盟の機関誌と見なす関係者もいる。この雑誌が9月号で「みんなが気になるウリナラ事情」と題し、北朝鮮の核・ミサイル開発の大特集を組んでいる。その内容が、かなりギョッとさせられるのだ。
***
ちなみに「セセデ」は「新世代」の意味という。誌面の大半はカラー。50ページほどの立派な雑誌だ。北朝鮮のプロパガンダ記事が大半だとはいえ、「青年」向けだけあって、スポーツやグルメといった話題にもページが割かれている。語学系の読物は別にすると、本文は全て日本語だ。
ご存じの通り、「ウリナラ」の和訳は「我が国」となる。「気になる北朝鮮事情」という特集記事のリードは、こんな具合だ。
《近年、共和国における国防力の発展は目覚ましい。しかし、何のために、何故、あのような軍事科学研究を重ねるのか。今、朝青員たちが最も気になっているウリナラ事情について「セセデ」がひも解く》
(以下略) <<
月刊”새세대”、よく読みました。"새세대","이어","조선신보"は三大ニュースソースです。”새세대”読者としての経験から述べても、今回の『デイリー新潮』記事内容はデタラメですが、「そもそも『デイリー新潮』の編集者は、自分が書いた記事をざっくりとも見直ししないのか?」と疑問に思わざるを得ないシロモノに仕上がっています。あるいは、雑誌編集があまりにブラック過ぎるがゆえに、見直しなんてしていられないのでしょうか?
「
日本人を狙う「北朝鮮プロパガンダ誌」」などとタイトルでは書き立てつつ、本文中では「
今、朝青員たちが最も気になっているウリナラ事情について「セセデ」がひも解く」という一文を引用する『デイリー新潮』。
「今、朝青員たちが最も気になっているウリナラ事情」という一文を見るに、槍玉に挙げられている当該記事のターゲットは「朝青員」であると考えるのが文法・文脈的に自然な解釈です。つまり、”새세대”のターゲットは日本人ではないのです。在日朝鮮人向けの記事なのです。
そもそも、「
日本人を狙う」雑誌ならば、タイトルが朝鮮語であるのは不可解でしょう。また、「日本人を狙う」雑誌が「
ウリナラ」はないでしょう・・・
『デイリー新潮』記者の分析精度・・・というよりも国語力の低さを自白しているようなものです。
まさか、「
朝青」が何なのかをご存じないということはないでしょうね・・・国語力問題以上に、基本的知識が怪しいからなあ・・・
読者として述べれば、”새세대”という雑誌はまさに、朝青("チョチョン"。在日本朝鮮青年同盟の略称)や青商会("チョンサンフェ。"在日本朝鮮青年商工会の略称)の会員向けの雑誌と言ってよいものです。普段の記事を見ればそれは一目瞭然。「xx県の...地域のチョチョンのイルクン(活動家)たちが、親睦のモイム(集まり)を開いた」といったようなニュースばかり。朝青メンバー・総連メンバーにとっては、全国の朝青組織での活動動向を知ることができるという点において重要なのでしょうが、総連組織に包摂されていない読者にとっては、「”새세대”は内輪ネタばかりで、あまり面白くない」と言わざるを得ない雑誌です。「
日本人を狙う「北朝鮮プロパガンダ誌」」とは一体何のことやらw
数少ない「面白い」記事は4〜5年前に掲載されたチュチェ思想セミナー記事でしたね。本国発のチュチェ思想論文・解説書は、日本での生活感情に慣れ切った人間には「キツい」内容ですが、”새세대”編集部はかなりマイルドな内容に編集していたものです(マーケット・メカニズムと社会主義体制との折り合いをチュチェ思想の観点から論じるなんて、
1960年代以来なんじゃないでしょうか? 気になる人は図書館で探してネ)。
もうすでに自分が何を書いているのか分かっていない錯乱状態でキーボードに向かっていると言う他ない『デイリー新潮』の記事編集者ですが、ここからがさらに面白い。「
朝鮮総連事情に詳しい、コリア国際研究所所長の朴斗鎮氏」が登場。最近、見なくなってきたなと思ったら、『デイリー新潮』の支離滅裂記事にご登場。
記事のカオスさをより増幅させるネタ的にナイスなコメントを展開してくださっています。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171003-00530961-shincho-kr&p=2>> 追い詰められた北朝鮮
「政治を全く知らぬ金正恩の戦略が硬直化し、行き詰っているという状況が、そのまま反映された誌面だと思います」
そう分析するのは、朝鮮総連事情に詳しい、コリア国際研究所所長の朴斗鎮氏だ。
「北朝鮮のプロパガンダ誌だからこそ、日本人にも読んでもらい、好意を持つ人を増やさなければなりません。特に『月刊セセデ』は若い人がターゲットですから、ストレートな宣伝記事は避けるのが編集の基本でしょう。実際、90年代までは、北朝鮮にも政治を熟知する幹部がいました。『総連は右翼と批判されても構わない。赤い心は胸に秘めろ。スイカのように中は赤く、外は緑色でいろ』という指示を出していたほどです。ですが金正恩は政治を全く知りません。父親である金正日の戦略は『瀬戸際外交』と、まだ『外交』の要素がありましたが、金正恩は単に自国を『瀬戸際』に追い詰めているだけです。そうした北朝鮮の硬直を、『月刊セセデ』の特集記事から読み解くことが可能だと思います」
追い詰められているから余裕がない。余裕がないから、「月刊セセデ」にも、日本人だけでなく、在日朝鮮人ですら唖然としかねない記事を掲載してしまう。朴氏は逆に「北朝鮮敗北」が国際社会の現実だと指摘する。
(以下略) <<
”새세대”の論調など、キムジョンイル総書記時代からまったく変わっていませんwずっとあの調子です。今回槍玉に挙げられている記事も、「昔ながら」の内容。古くからの読者には何の「新鮮さ」もありません。
何が「政治を全く知らぬ金正恩の戦略が硬直化し、行き詰っているという状況が、そのまま反映された誌面」なのでしょうかwwパクドゥジン氏――久々に出てきたと思ったらこの調子。
専門家面していますが、本当に”새세대”をはじめとする総連メディア発の報道を継続的にウォッチしてきたのでしょうか? してきたのであれば、こんなデタラメは書けないでしょう・・・
パクドゥジン氏の「分析」を受けた『デイリー新潮』が、さらに笑わせてくれます。「
日本人だけでなく、在日朝鮮人ですら唖然としかねない記事を掲載してしまう」と書き立てるものの、「
在日朝鮮人」が「
唖然」としている様子は描いていません。まさか「
ミサイル発射については「コリアンタウンの在日朝鮮人も当惑と怒りと 『バカなことをする』 『技術力を上げていたら不気味』」(ネット版・産経WEST・16年9月9日)という記事もある。」という部分で描写したつもりになっている? 「さすが週刊誌編集者」という他ありませんな・・・ジャーナリスト界隈でもかなりイージーな仕事ですね。
本当に面白かった。「
余裕がないから、「月刊セセデ」にも、日本人だけでなく、在日朝鮮人ですら唖然としかねない記事を掲載してしまう」などと言っていますが、
それを言うなら、『デイリー新潮』ならびにパクドゥジン氏こそが、「余裕がないから、ちょっと調べ・考えれば直ちにデタラメであることが分かってしまうくらいに程度の低いことを口走ってしまう」とお返ししたいものです。
9月7日づけの記事で私は、ジャーナリストとしての最低限のモラルには忠実だった石丸次郎氏が、朝鮮労働党主導の経済改革によって強靭化された共和国経済についてゴシップ的捏造をしなかったことについて、「
「キムジョンウン経済改革の成果は、石丸氏でさえ否定できない成果を挙げている」と言い得る」としましたが、
ジャーナリストとしてのモラルなどそもそも存在しない『デイリー新潮』すなわち『週刊新潮』ならびに、ジャーナリストでさえないパクドゥジン氏は、客観的に事実の直視に耐えられなかったのでしょうね。