2018年06月16日

すげーアメポチっぷりw

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180616-00050046-yom-pol
北非核化で首相「日本が費用負担するのは当然」
6/16(土) 11:42配信
読売新聞


(中略)

 首相は「核の脅威がなくなることによって平和の恩恵を被る日本などが、費用を負担するのは当然」と語った。「拉致問題が解決されなければ経済援助は行わない」とも述べ、経済援助と非核化費用の負担は区別して考える意向も示した。その上で拉致問題の解決に向け、「最終的に私自身が北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と日朝首脳会談を行わないといけない」との決意を改めて表明した。

(以下略)
すげーアメポチっぷりw勧善懲悪が染み渡った日本の「標準的世論」に従えば、「北朝鮮側が勝手にやってきた核開発・核恫喝脅威を、その脅威の被害者側たる尻ぬぐいするなんてオカシイ! まして相手は悪党;キム王朝だぞ! 悪い奴の悪事をなぜ我々が!」といったところでしょうが、安倍首相の頭の中にはアメリカへの従属しなかいようです。
ラベル:政治
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2018年06月13日

朝米首脳会談を報じる朝鮮中央通信配信記事から読み取る「要点」

朝米首脳会談を報じる朝鮮中央通信配信記事。注目点はここだ! 以下、拙訳。
http://www.kcna.co.jp/calendar/2018/06/06-13/2018-0613-001.html
김정은위원장 싱가포르에서 조미수뇌상봉과 회담,공동성명 채택
キム・ジョンウン委員長、シンガポールで朝米首脳対面と会談、共同声明の採択

경애하는 최고령도자동지와 트럼프대통령사이의 단독회담이 진행되였다.
敬愛なる最高指導者同志とトランプ大統領との間の単独会談が行われた。

경애하는 최고령도자동지께서는 오늘 여기까지 와닿는 과정이 결코 헐치는 않았다고 하시면서 과거의 력사가 우리의 발목을 붙잡고 그릇된 편견과 관행들이 우리의 눈과 귀를 가리우기도 했지만 그 모든것을 과감하게 짓밟고 이렇게 이 자리에까지 왔으며 새로운 출발점에 서게 되였다는 뜻깊은 말씀을 하시였다.
敬愛なる最高指導者同志は、今日ここまで来る過程は決して容易でなかったと述べられ、過去の歴史がわれわれの足首をつかみ、誤った偏見と慣行がわれわれの目と耳を覆ったりしたが、それらすべてを果敢に踏みつけてこのようにこの席にまで来、新しい出発点に立つことになったという意味深い言葉を述べられた。

(中略)

회담에서는 새로운 조미관계수립과 조선반도에서의 항구적이며 공고한 평화체제구축에 관한 문제들에 대한 포괄적이며 심도있는 론의가 진행되였다.
会談では、新たな朝米関係樹立と朝鮮半島での恒久的で強固な平和体制構築に関する問題に対して包括的で詳細な論議が行われた。

경애하는 최고령도자동지께서는 트럼프대통령을 비롯한 미국측대표단과 이렇게 자리를 같이한것을 기쁘게 생각한다고 하시면서 적대적과거를 불문하고 대화와 협상을 통해 현실적인 방법으로 문제를 해결하려는 대통령의 의지와 열망을 높이 평가하시였다.
敬愛なる最高指導者同志は、トランプ大統領をはじめとするアメリカ側代表団とこのように席を共にしたことを喜ばしく思うと述べて、敵対的な過去を問わず、対話と交渉を通じて現実的な方法で問題を解決しようとする大統領の意志と熱望を高く評価なさった。

미합중국 트럼프대통령은 이번 수뇌회담이 조미관계개선에로 이어지리라는 확신을 표명하면서 경애하는 최고령도자동지께서 올해초부터 취하신 주동적이며 평화애호적인 조치에 의하여 불과 몇개월전까지만 하여도 군사적충돌의 위험이 극도에 달하였던 조선반도와 지역에 평화와 안정의 분위기가 도래하게 되였다고 평가하였다.
アメリカ合衆国トランプ大統領は、今回の首脳会談が朝米関係改善へと続いてられるであろうという確信を表明して、敬愛なる最高指導者同志が今年の初めから主導されてきた平和愛好的な措置によって、わずか数ヶ月前まで軍事的衝突の危険性が極度に達していた朝鮮半島と地域に平和と安定の雰囲気が到来するようになったと評価した。

경애하는 최고령도자동지께서는 두 나라사이에 존재하고있는 뿌리깊은 불신과 적대감으로부터 많은 문제가 산생되였다고 하시면서 조선반도의 평화와 안정을 이룩하고 비핵화를 실현하기 위하여서는 량국이 서로에 대한 리해심을 가지고 적대시하지 않는다는것을 약속하며 이를 담보하는 법적, 제도적조치를 취해나가야 한다고 말씀하시였다.
敬愛なる最高指導者同志は、両国の間に存在している根深い不信と敵意から多くの問題が生じたとして、朝鮮半島の平和と安定を期して非核化を実現するためには、両国がお互いを理解して敵視しないことを約束し、これを担保する法的、制度的措置を取っていくべきだとおっしゃった。

경애하는 최고령도자동지께서는 조미쌍방이 빠른 시일안에 이번 회담에서 토의된 문제들과 공동성명을 리행해나가기 위한 실천적조치들을 적극 취해나갈데 대하여 말씀하시였다.
敬愛なる最高指導者同志は、朝米双方が早期に今回の会談で討議された問題と共同声明を履行していくための実践的な措置を積極的に取っていくことについて語られた。

경애하는 최고령도자동지께서는 트럼프대통령이 제기한 미군유골발굴 및 송환문제를 즉석에서 수락하시고 이를 조속히 해결하기 위한 대책을 세울데 대하여 지시하시였다.
敬愛なる最高指導者同志は、トランプ大統領が提起したアメリカ軍の遺骨発掘と返還問題を即座に受け入れ、これを早急に解決するための対策を立てることについて指示なさった。

경애하는 최고령도자동지께서는 조선반도에서 항구적이며 공고한 평화체제를 수립하는것이 지역과 세계평화와 안전보장에 중대한 의의를 가진다고 하시면서 당면해서 상대방을 자극하고 적대시하는 군사행동들을 중지하는 용단부터 내려야 한다고 말씀하시였다.
敬愛なる最高指導者同志は、朝鮮半島で恒久的で強固な平和体制を樹立することが地域と世界の平和と安全保障に重大な意義を持つとして、当面、相手を刺激し敵視する軍事行動を中止する勇断を下すべきだとおっしゃった。

미합중국 대통령은 이에 리해를 표시하면서 조미사이에 선의의 대화가 진행되는 동안 조선측이 도발로 간주하는 미국−남조선합동군사연습을 중지하며 조선민주주의인민공화국에 대한 안전담보를 제공하고 대화와 협상을 통한 관계개선이 진척되는데 따라 대조선제재를 해제할수 있다는 의향을 표명하였다.
アメリカ合衆国大統領は、これに理解を示して、朝米間の善意の対話が行われている間、朝鮮側が挑発であると考えているアメリカ - 南朝鮮合同軍事演習を中止し、朝鮮民主主義人民共和国の安全の担保を提供し、対話と交渉を通じた関係改善の進捗にともなって対朝鮮制裁を解除できるという意向を表明した。

경애하는 최고령도자동지께서는 미국측이 조미관계개선을 위한 진정한 신뢰구축조치를 취해나간다면 우리도 그에 상응하게 계속 다음단계의 추가적인 선의의 조치들을 취해나갈수 있다는 립장을 밝히시였다.
敬愛なる最高指導者同志は、アメリカ側が朝米関係の改善のための真の信頼構築措置を取っていけば、私たちもそれに相応して次なるステップの追加的な善意の措置を取っていくことができるという立場を明らかにされた。

조미수뇌분들께서는 조선반도의 평화와 안정, 조선반도의 비핵화를 이룩해나가는 과정에서 단계별, 동시행동원칙을 준수하는것이 중요하다는데 대하여 인식을 같이하시였다.
朝米首脳は、朝鮮半島の平和と安定、朝鮮半島の非核化を達成してゆく過程で、段階別の同時行動原則を遵守することが重要であるという認識を共にした。

(以下略)
なによりも、誤った偏見と慣行がわれわれの目と耳を覆ったりした」と大胆にもおっしゃったことが国内向けに広報されたことは特筆的事象です。反米歌"죽음을 미제침략자들에게"は当面、封印の作になることでしょう・・・

とはいえ、米「韓」合同軍事演習が「無条件の中止」ではなく「朝米間の善意の対話が行われている間」という限定付きである点を共和国側は十分に理解して、それを自国民にも伝えています。依然として油断していない点は、さすが共和国です。

また、「アメリカ側が朝米関係の改善のための真の信頼構築措置」を取る限りにおいて、自分たちも追加的な措置を取ると宣言しています。ボールはアメリカ側にあるということです。確かに共和国側は核実験場やミサイル発射台の破棄を矢継ぎ早に展開していますからね。

そして、朝米首脳は、朝鮮半島の平和と安定、朝鮮半島の非核化を達成してゆく過程で、段階別の同時行動原則を遵守することが重要であるという認識を共にしたというくだり。トランプ大統領は今日になって若干の「後出しの軌道修正」(ぶれている)を試みていますが・・・

これらが今回の朝米首脳会談に関する共和国側の理解の要点でしょう。
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2018年06月12日

수령님、장군님が果たせなかった偉業を、遺訓を果たされた원수님 수령님、장군님が生涯をかけて注力されてきた偉大な遺産の賜物

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180612-00000065-reut-cn
情報BOX:米朝首脳会談、共同声明の全文
6/12(火) 17:32配信
ロイター


(中略)

トランプ大統領と金委員長は、新たな米朝関係の確立と朝鮮半島における恒久的かつ揺るぎない平和体制の構築に関する問題について、包括的かつ真摯な意見交換を徹底的に行った。トランプ大統領は北朝鮮に安全保障を約束し、金委員長は朝鮮半島の完全な非核化への揺るぎない、固い決意を再確認した。

新たな米朝関係が朝鮮半島と世界の平和と繁栄に貢献することを確信し、互いの信頼構築により朝鮮半島の非核化を促進できると認識し、トランプ大統領と金委員長は以下の通り宣言する。

1.米国と北朝鮮は、平和と繁栄を求める両国国民の願いに従って、新たな米朝関係の確立に取り組む。

2.米国と北朝鮮は、朝鮮半島の持続的で安定した平和体制の構築に共に取り組む。

3.2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む。

4.米国と北朝鮮は、戦争捕虜/行方不明兵の遺体回収に取り組む。その中には、すでに特定されている遺体の即時帰還も含まれる。


(以下略)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180612-00000068-reut-kr
「高額」で「挑発的な」米韓軍事演習を中止へ=トランプ大統領
6/12(火) 18:25配信
ロイター

[シンガポール 12日 ロイター] - トランプ米大統領は12日、北朝鮮の非核化を巡る交渉を促進するため、「非常に挑発的」で多額の費用がかかる米韓軍事演習を中止する意向を示した。


(中略)

大統領は「軍事演習は非常に高額だ。その大半(の費用)をわれわれが負担している」と指摘した上で、「交渉中という状況の下で、軍事演習を行うのは不適切だと思う」と語った
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180612-00000100-yonh-kr
朝米 完全非核化など4項目で合意=共同文書にCVID明記なし
6/12(火) 17:07配信
聯合ニュース

【シンガポール聯合ニュース】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党委員長)とトランプ米大統領は12日にシンガポールで行った朝米(米朝)首脳会談で、完全な非核化、平和体制保証、朝米関係正常化の推進、朝鮮戦争戦死者の遺骨送還の4項目に合意し、こうした内容を盛り込んだ文書に署名した。

(中略)

第3項は「2018年4月27日の(南北首脳会談の)板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向けた作業を行うことを約束する」とした。米国がこれまで要求してきた「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(CVID)という表現は明記されなかった。

(以下略)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180612-00050125-yom-int
対北制裁「当面続ける」…トランプ大統領が会見
6/12(火) 17:52配信
読売新聞


(中略)

この中でトランプ氏は、正恩氏が帰国後すぐに非核化の「プロセスに着手するだろう」と述べる一方で、「当面制裁は続ける」との方針も示した。北朝鮮の非核化に向けた動きを見極めていく姿勢を強調したものだ。

 また、北朝鮮が求める「安全保証」に関連して、「(在韓)米軍の数を減らすことは考えていない」と述べ、韓国に駐留する米軍のプレゼンスを当面は維持する考えを示した。
歴史的な朝米首脳会談の結果が速報的に飛び込んできています。

ザッと記事を読む限り、キム・ジョンウン委員長は初回会談としては十分に合格点を勝ち取ったと言えると思います(トランプ大統領の事情は知らん。どうでもいい)。共同文書へのCVIDの明記を回避して「朝鮮半島の完全な非核化」という表現を勝ち取りました。アメリカ側から安全保障の言質を取り付けました。米「韓」軍事演習中止という台詞を引き出しました。

「朝鮮半島の完全な非核化」と「北朝鮮の完全な非核化」は決定的に異なります。「北朝鮮の非核化」は、文字通り共和国が一方的に核を放棄することですが、「朝鮮半島の完全な非核化」は、南側を含めた半島全体の非核化であり、これはすなわち、アメリカによる対共和国核恫喝の終結を意味するものです。トランプ大統領はもしかすると気が付いていないかもしれません(さすがにそんなことはないか)が、共和国側はこのことを十分に承知しています。これは、共和国にとっては、どうしても欲しかったものです。

制裁が「当面続く」という点については、今回では状況の抜本的打開には至らなかったものの、初回会談でそこまで勝ち取ることが出来るとは最初から想定していなかったはず。その点、共和国側にしてみれば、今回の目標は達成できたというところでしょう。

個人的感想。共和国最高指導者同志とアメリカ大統領の握手写真、記念撮影を見てジーンと来ました。수령님、장군님が果たせなかった偉業を、遺訓を果たされた원수님・・・! もちろん、今日の원수님の遺訓を達成は、수령님、장군님が生涯をかけて注力されてきた偉大な遺産の賜物です!
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2018年06月11日

際どいなぁ・・・

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180610-00050048-yom-soci
のぞみ殺傷、容疑者の父「今は家族ではない」
6/10(日) 12:01配信
読売新聞

 神奈川県を走行中の東海道新幹線で9日夜、乗客3人がナタで切られ殺傷された事件で、殺人未遂容疑で逮捕された小島一朗容疑者(22)は日頃から親類に「俺なんて価値のない人間だ。自殺したい」と話していたという。

 親類らによると、小島容疑者は愛知県一宮市出身。中学生の時に不登校になり自立支援施設に入所し、地元の定時制高校を卒業した。埼玉県内の機械修理会社に就職したが、人付き合いがうまくいかず約1年で退職。父親とは中学時代から折り合いが悪く、愛知県岡崎市の祖母に引き取られ、昨年9月、祖母と養子縁組した。


(以下略)
コメ欄に、あの、みわよしこ氏がコメントを寄せています。
みわよしこ
フリーランスライター(科学・技術・社会保障・福祉・高等教育)

理不尽にも生命を奪われた方・負傷した方、日常を断ち切られた多数の方がいます。
このような事件は、起こらないことを心から望みます。
その上で、敢えてコメントします。

自閉症・精神科入院・社会的養護などの容疑者の経歴が、既に報道されています。その経歴の方々が社会的に不利な立場に置かれやすい事実、犯罪率が一般と異なる事実はあります。本件でも無関係ではないでしょう。しかし、経歴や属性と犯罪の間に「AだからB」という直接の因果関係はありません。


(以下略)
おっしゃっていることは、まったくの正論なんですが、際どいなぁ・・・

そういうのも、旧ブログ時代から刑事事件・刑事裁判(特に心神耗弱事案)について継続的に世論分析してきた身から申せば、「精神疾患・成育環境・社会情勢のせいにするな!」「悲惨な境遇であっても、社会的に逸脱することなくしっかりと生きている人はいる! にも関わらず犯罪に走ったのは、お前の人格が問題だからだ! 病気のせい、環境のせい、他人のせい、社会のせいにするな!」という、社会構造・客観環境原因論に対する「一種の自己責任論」が、世論のマジョリティだからです。みわ氏が言う「経歴や属性と犯罪の間に「AだからB」という直接の因果関係はありません」というのは、まさにこの手の「自己責任論者」の論拠の核心なのです。

もともとコミュニケーションというものは、「受けて次第」なものですが、この手の微妙な話題においてはとりわけ、「自分が何を伝えたいか」以上に「受け手がどう認識するか」が重要です。

みわ氏は、そこまで考慮に入れたうえでコメントしているのでしょうか? たぶんそこまでは考えていないんだろうなあ・・・付け入られて、まったく違う言説の論拠に仕立て上げられかねない危険な物言いです。
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2018年06月10日

朝米関係の行方を占うならば、朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国そのものを正面から取り扱うべき

朝米首脳会談が「やっぱり開催」になって以来、ようやく日本の言論空間でも「トランプ米大統領が会談を必要とする理由」についても目が向くようになりました。「強力な制裁に音を上げた北朝鮮が対話を求めて白旗を振ってきた」というストーリーが幅を利かせており、それゆえ、アメリカ側の事情への注目が低調だった日本の言論空間でしたが、この1週間は、これが「二か国間の交渉」であるということ、朝米双方がそれぞれ対話を必要とする事情があるということが遅れ馳せながら広がったのです。

■アメリカ側の事情への注目が広まり始めた
この急な風向きの変化は、トランプ大統領の朝令暮改的な急転回ゆえのものでしょう。会談中止を述べたかと思えば、舌の根も乾かぬうちに「やっぱり開催」と宣言したトランプ大統領の振る舞いを見れば、だれしも「あれっ、実は・・・?」と思うところでしょう。

いくつか記事を取り上げておきましょう。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180604-00010000-socra-int
【舛添要一の僭越ですが】 追い詰められているのはトランプかも
6/4(月) 11:50配信
ニュースソクラ


(中略)

 しかしながら、外交交渉という点から考察すると、独裁制に対する民主制の弱点が目立ってしまう。とくに、世界が今注目している米朝首脳会談がそうである。

(中略)

 アメリカ大統領の任期は4年であるが、任期の途中に中間選挙が行われる。様々な政策を提示したり、パフォーマンスを繰り返したりするトランプの最大の目的は、大統領選挙での再選、そのための助走として中間選挙での勝利である。

 これに対して独裁者の金正恩は、選挙などないので、好きなように戦略を構築できる。彼の最大の目的は独裁の維持であり、そのためにアメリカの、できれば全世界からの体制保証を獲得することである。そして、核兵器とミサイルが、その目的達成のための最高の道具であることを熟知している。それは、祖父の金日成、父の金正日の時代から変わらない。

 強大な軍事力を背景に経済制裁を課してくるアメリカは脅威ではあるが、このような独裁者から見ると、民主制には大きな弱点がある。2年半すれば選挙でトランプが政権の座から降りる可能性がある。そうなれば、トランプ自らが行ったように、次期大統領もトランプの政策を捨て去るかもしれない。

 金正恩は、あと2年余り我慢すれば、非核化など反古にできる可能性が開かれてくる。要は、いかに時間稼ぎをするかである。6月12日に予定されている米朝首脳会談の準備のために、板門店、シンガポール、ニューヨークで実務者協議が行われているが、非核化をめぐって合意できなければ、会談は開かれないか、延期となる。実際、非核化をめぐって両者の溝は深く、容易には話はまとまらないであろう。

 さらに、首脳会談が開かれても、その場で詳細を事務レベルに任せるという形で合意すれば、これまた金正恩にとって時間稼ぎにつながる。功を焦っているのはトランプであって、金正恩ではない。制裁も、中国などが緩和し始めており、米朝首脳会談開催のアナウンス効果はすでに出てきている。

 しかも、技術的に見て、あと2年余りで北朝鮮の核兵器やICBMを完全に破棄することができるのか、またそれをIAEAが査察することができるのか、簡単な作業ではあるまい。アメリカの要求水準が高ければ高いほど、時間稼ぎが可能となる。

 たとえば、核兵器のみならず、生物兵器、化学兵器も廃棄の対象となれば、廃棄する順番は核兵器を最後にする。さらに全ミサイルの廃棄を要求されれば、短・中距離ミサイルから先にしてICBMを最後にするといった交渉すら可能である。

 金正恩にすれば、様々な理由をつけて、段階を踏みながら非核化をし、段階毎に経済的な見返りを要求するというシナリオが最適である。そして、アメリカ大統領が交代すれば、トランプとの約束を守らないという方針転換もありうるのである。

 ところが、民主主義国アメリカでは、中間選挙や大統領選挙の日程を変更できるわけではない。時間に迫られているのはトランプのほうであり、しかも軍事的オプションは日本や韓国などの同盟国の被害を考えれば現実的ではない。

 米朝交渉で追い詰められているのはトランプなのか金正恩なのか、実は定かではないのである。

(敬称略)

舛添 要一 (国際政治学者)
最終更新:6/4(月) 11:50

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180606-00010000-wedge-n_ame
トランプが米朝首脳会談を急いだ本当の理由
6/6(水) 12:13配信
Wedge

 トランプ大統領が当初から、早期開催にいかにこだわっていたかを示すエピソードがいくつもある。

 まず最初は、金正恩朝鮮労働党委員長から出された首脳会談開催提案に対するトランプ大統領の「受諾」即断の経緯だ。


(中略)

 第2は、5月24日「会談中止」にいったん踏み切った際と、その後の政権内の混乱がある。

 複数の米有力紙報道によると、大統領が突然「中止」を表明した背景には、直前に北朝鮮側から南北閣僚級会談の中止、ペンス副大統領やボルトン大統領補佐官に対する激しい批判など首脳会談に冷水を浴びせるような一連の動きがあったことから、金委員長の方から「首脳会談中止」を言い出しかねないと判断し、その前に体面を保つために自ら先に「中止」を急遽表明、北朝鮮をけん制するねらいがあったという。

 実際、大統領が「中止」を表明した際、ポンペオ国務長官、マティス国防長官らには何の相談もなかったばかりか、最初に米朝首脳会談の橋渡しをした文在寅韓国大統領に対しても事前連絡を怠るというあわてぶりだった。

 さらにその後、双方でいったん中止になった会談を復活させるための駆け引きがあり、板門店で首脳会談への具体的な準備会議が開かれた際にも、トランプ・ホワイトハウスは、米側には詰めの話を進めるための実務経験のあるベテランがいなかったため、オバマ前政権時代に北朝鮮担当の政府特別代表を務めていたソン・キム駐フィリピン大使を急遽派遣するというドタバタぶりだった。


(中略)

 では、トランプ大統領が開催を急ぐ理由は何か。

 まず、米政府および連邦議会の「政治日程」がある。

 とくに下院における来年度予算審議は遅々として進んでいないばかりか、「農業法案」、「連邦航空局(FAA)再編法案」、「全米水害保険法案」、「個人所得税減税法案」などの個別案件、さらには大統領が特に重視するインフラ大型投資計画などの重要法案が目白押しとなっている。ところが、7月末から8月いっぱいにかけては議会は夏季休暇に入り、休暇明けの9月にはいると議員たちが再びいっせいに自分の選挙区に戻ったりするため、実質審議めぐる与野党の攻防は、6月半ばから7月下旬がヤマ場となる。

 しかも、11月中間選挙の結果いかんによっては、これらの重要案件の成立のめどがまったく立たなくなり、ひいてはトランプ氏にとって2020年再選の見通しも一層厳しくなる。つまりいったん「6月12日」を中止または延期した場合、自らのノーベル平和賞受賞も念頭に置いた首脳会談も事実上、不可能となるという、いわば“背水の陣”だった。

 第2に、大詰めを迎えつつあるロシア疑惑捜査だ。

 ロバート・モラー特別検察官による事件究明は、これまでにトランプ氏の側近だったポール・マナフォート元トランプ選対本部長、マイケル・コーエン顧問弁護士ら有力者が強制家宅捜索を受け膨大な証拠物品を押収されているほか、マイケル・フリン元大統領補佐官(国家安全保障担当)、ジョージ・パパドポロス元選対本部顧問らが偽証容疑について自ら罪を認め捜査に協力姿勢を見せるなど、真相究明の外堀はかなり埋められつつある。


(中略)

 第3は、上記2点とも微妙にからみあう11月中間選挙が控えていることだ。

 選挙の見通しについては、過去のこの欄でもすでに触れてきたとおり(「トランプ弾劾と中間選挙の密接な関係」)、435人の議員全員が改選される下院では、これまでの選挙戦を通じ、野党民主党が有利な戦いを進めてきており、結果的に同党が多数を制する公算が大きくなっている。今回3分の1の議員が改選される上院では、民主党の改選議席数が圧倒的に多いことなどから同党は苦戦を強いられており、これまで同様、共和党が多数を維持するとみられている。


(中略)

 従ってこれらの事情から、トランプ大統領としては、世界の耳目を集める歴史的な米朝首脳会談をなんとしても早期に実現させ、そこから実のある成果を導き出すことで米マスコミの関心をそらし、少しでも夏休み入り前に中間選挙に向けて共和党支持層固めを急ぐ必要に迫られていたといえる。

(中略)

斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)
最終更新:6/6(水) 12:13
朝米関係を巡ってはあまりにも関係するベクトルが多く、どれがどう作用して全体のベクトルが合成されているのか判然としない点、上掲引用記事の見解が絶対的に正しいとは断定できないものです。しかし、「アメリカ側も事情があって対話を必要としており、共和国が一方的に対話の席に押し込められたわけではない」という記事が出てくるようになってきたこと自体が重要です

■共和国が一方的に追い詰められているという構図でないと困る? 人々について
これに対して、依然として「北朝鮮は追い詰められている」系の記事も書き立てられています。この手の人々は、共和国が一方的に追い詰められているという構図でないと困るんでしょうか?
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20180604-00086019/
トランプ氏は北に譲歩したのか?
遠藤誉 | 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
6/4(月) 7:30

金正恩委員長の親書を受け取ったトランプ大統領は、北朝鮮が要求してきた段階的非核化を事実上認めた。これはアメリカの譲歩を意味するのだろうか。答えは「否」だ。むしろ北を追い詰めている。その理由を考察する。


(中略)

 それどころか、「これはトランプ流の嫌がらせでしょう。金正恩への圧迫戦術です。複数回の会談は金正恩が耐えられないし、段階的と言ったところで、その間に何も得られないのですから、金正恩はさらに追い込まれるだけだと思います」と指摘するのは、関西大学の李英和(リ・ヨンファ)教授だ。

 なぜ追い込まれるのか。理由は二つあるとのこと。

 一つ目:北朝鮮の経済の疲弊が進み、制裁解除と支援獲得が急がれるから。

 二つ目:軍部の不満。首脳会談を重ねても、もらえるのは朝鮮戦争の終戦協定に関するペーパーなどで、肝心の金銭は入って来ない。めぼしい大義と対価をなかなか得られないと、軍部が反発する。

 筆者との個人的な学術交流の中で、李教授はさまざまな鋭い見解と北朝鮮内の速報を知らせてくれる。軍のトップ層に関しては事実、核廃棄に向けた強硬派を排除して穏健派に入れ替えるという人事がここのところ行なわれており、軍部の不満を金正恩が恐れている状況が表面化しているという。

 そうだとすれば、金政権の体制を保証すると約束しているトランプ大統領としては、金体制の崩壊を招くであろうCVIDを避けて、そのために「段階的非核化」を受け入れたのではないだろうか。


(以下略)
遠藤誉氏――もともとは中国政治の専門家であるものの、最近は朝鮮半島情勢にも精力的にコメントを寄せている御方です。しかし、中国研究者にありがちな「中国の視点だけで物事を語ってしまう」典型例のような御方です。また、もともと専門ではないということもあってか、共和国側の事情に関する知識不足を、よりによってあのリ・ヨンファ(李英和)氏を相棒にすることで補強している点、わりとハチャメチャな記事を量産されている御方です。

遠藤氏ならびにリ氏は、「むしろ北を追い詰めている」と判断する根拠の一つとして「北朝鮮の経済の疲弊が進み、制裁解除と支援獲得が急がれるから」と指摘します。後見人としての存在感を日増しに大きくしている中国からの支援は? まさに遠藤氏自身が、4月12日と4月23日の2回にわたって、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」の正しさを自国民に誇示したい中国共産党政権にとって共和国の存在は重要であると指摘したはず。いったい、どうしちゃったんでしょうか?
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20180412-00083869/
北朝鮮、中朝共同戦線で戦う――「紅い団結」が必要なのは誰か?
遠藤誉 | 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
4/12(木) 7:09


(中略)

◆「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」との整合性
 昨年10月に開催された第19回党大会で「習近平思想」が党規約の冒頭に書き込まれることが決議された。具体的には「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」という名の「習近平思想」だ。この長いフレーズの最初の「習近平」と最後の「思想」が、表面的には重要だが、もっと深読みすれば、実は「社会主義思想」の部分がさらに重要だという要素が潜んでいる。

 すなわち、一党支配体制を維持させるために、「社会主義思想」の正当性を中国人民に強調して示していくという目的が秘められているのである。


(中略)

 この「紅さ」を強めるには、元共産主義国家の牙城であった旧ソ連が崩壊して新たに誕生したロシアと親密になり、北朝鮮という、未だに社会主義思想を堅持している国家を味方に付けておかなければならない。ロシアのプーチンは「紅い国家」の独裁的遺伝子をそこはかとなくまとっており、長期政権を狙っている。その意味で中国もロシアも北朝鮮も、「紅い」あるいは「紅みがかった」独裁的な長期政権の国家だ。

 「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を党規約に盛り込んだ習近平には今、この「紅い団結」が何としても必要なのである。だから、これまで中国を「1000年の宿敵」などと罵倒する無礼の極みを続けてきた「若造」(金正恩)に百歩譲歩した。


(以下略)
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20180423-00084340/
中国、北朝鮮を「中国式改革開放」へ誘導――「核凍結」の裏で
遠藤誉 | 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
4/23(月) 12:32

 北朝鮮が核凍結などを宣言したことに関し、中国は自国が説得し続けてきた対話路線と改革開放路線の結実と礼賛している。改革開放へと誘導してきた中国の歩みから、今後の中朝関係と北朝鮮のゆくえを考察する。

(中略)

◆それに対して中国は
 中国では、中国共産党の機関紙「人民日報」をはじめ中央テレビ局CCTVなど多くの党および政府のメディアが一斉に金正恩の決断を礼賛し、さまざまな特集を組んでいる。

 中国は早くから一貫して対話路線と改革開放路線を北朝鮮に要求してきただけに、ようやく中国の主張が実り始めたと、自画自賛しながら金正恩の決断を讃えている。

(中略)

◆「中国式の改革開放」に焦点
 ここで重要なのは、中国は金正恩が総会で「強力な社会主義経済を建設して、人民の生活レベルを画期的に向上させる闘いに全力を注ぐ。経済発展のために有利となる国際環境を創り出し、朝鮮半島と世界の平和のために、(北)朝鮮は周辺の国家および国際社会と積極的に緊密な連携と対話を展開していく」と言ったことに焦点を当てていることだ。

(中略)

 金正恩政権は2013年から経済建設と核戦力建設の並進路線を唱えてきたが、今や核戦力の建設は終えたと勝利宣言している。ようやく経済建設に全力を注ぐ状況になったにちがいない。今後の北朝鮮はまさに「中国式の改革開放」満開といったところだろう。

◆一党支配体制維持のために「紅い団結」を強化
 「中国式の改革開放」とは何かというと、一党支配体制を維持したままの改革開放で、これを「特色ある社会主義思想」と称する。

 習近平は昨年10月に開催された第19回党大会で、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を党規約に記入した。4月12日付のコラム<北朝鮮、中朝共同戦線で戦う――「紅い団結」が必要なのは誰か?>に書いたように、中朝両国は今後、この「紅い団結」を強化していくというのが、基本路線である。習近平にとっては、この党規約に書き込んだ「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」が如何に正しく強大であるかを中国人民に知らしめたい。

 折しも関西大学の李英和(リ・ヨンファ)教授から知らせがあった。

 4月23日の北朝鮮の労働新聞は「経済建設総力戦」の一色だったという。

 中朝双方からの情報が一致するので、北朝鮮はきっと「紅い団結」に基づいた「中国式の改革開放路線」を全開にしていくことだろう。 今般の金正恩の動きの背後には習近平がいたことが、このことからも窺い知ることが出来る。

 なお、中国政府関係者は今もなお、北朝鮮の核放棄に関して、必ずしも完全に信頼しているわけではないと、筆者に吐露した。
もし、中国共産党政権が「紅い団結」を必要としているのであれば、既に習主席は段階的非核化に賛同している点、「対米長期外交戦」になった場合の共和国に対する援助体制は整っていると見るべきでしょう。そうであるならば、「むしろ北を追い詰めている」とは言い難いのではないでしょうか。中国政治の専門家である遠藤氏とは思えない重大な見落とし・信じられない結論と言わざるを得ません。

■朝鮮半島情勢研究者にありがちな誤謬@――中国視点への中途半端な偏り
先に私は遠藤氏について「中国研究者にありがちな「中国の視点だけで物事を語ってしまう」典型例のような御方」と述べましたが、まさに上掲の2つの引用記事はそれが如実にあらわれています。このことは遠藤氏個人に限らず、朝鮮半島情勢分析で割と広くみられる現象なので、この機会に遠藤氏をサンプルとして言及しておきたいと思います。

中国共産党政権が共和国政府に対して「改革開放」を再三にわたって要求してきたことは事実です。そしてまた、中国共産党政権が「紅い団結」(あまり聞き覚えのない単語ですが・・・)を必要としているのも事実でしょう。しかし、だからといって共和国政府が「紅い団結」云々に付き合わなければならない理由など、どこにもありません。中国共産党政権が自国事情を基に「紅い団結」を必要とし、共和国政府もまた自国事情によってそれに乗っかったというのが真相であり、単に国家間の利害が一致したに過ぎないのです。

当ブログでも以前から指摘してきたように、共和国政府は以前から、慎重に市場経済との折り合いのつけ方を模索してきました。「キム・ジョンウン体制2年目」のチュチェ104(2013)年10月に発売された『週刊東洋経済』(10月12日号)の特集「金正恩の経済学」では、共和国が改革路線への舵切りを必要とする事情について、朝鮮社会科学院研究者へのインタビューという形で掲載されています。共和国政府は、自国の必要があって改革路線に踏み出したのであり、中国共産党政権の要求を呑んで改革路線に舵を切ったわけではないのです

遠藤氏の言説は、あまりにも中国中心主義的視点に偏っています。まるで中国共産党の取り組みを中心に世界が回っているとでも言いかねない認識です。

遠藤氏は「一党支配体制を維持したままの改革開放」を「中国式の改革開放」と定義します。こんな定義では、下手するとシンガポールも「中国式の改革開放」に該当しかねないところです。

コリア・レポート編集長のピョン・ジンイル(辺真一)氏は「シンガポールは北朝鮮の「モデル国」」という記事の中で「北朝鮮は先代の金正日総書記の時代からシンガポールに多大な関心を寄せていた。シンガポールが建国の父・リー・クアンユー首相当時、一党独裁体制下で目覚ましい経済成長を遂げていたからだ。」と指摘しています。キム・ジョンイル総書記の遺訓教示をキム・ジョンウン委員長が守っているとすれば、共和国政府は、「紅い団結」なるものに従って改革路線を歩んでいるのではなく、シンガポールをモデルとして独自の改革路線を歩んでいるというべきでしょう。キム・ジョンイル総書記の遺訓教示という究極的な原典ソースが厳然と残っている点において、遠藤氏の見立てよりもピョン氏の見立ての方が真実に近いのではないでしょうか

遠藤氏は、朝鮮半島情勢・共和国情勢を論じているにも関わらず、肝心の「朝鮮」そのものを分析できていないと言わざるを得ません

いや、肝心の「朝鮮」そのものを分析できていないばかりか、中国でさえ分析しきれていないのが遠藤氏の今回の言説。前述通り、中国共産党政権が「紅い団結」を必要としているのであれば、「対米長期外交戦」になった場合の共和国に対する援助体制は整っていると見るべきであり、「むしろ北を追い詰めている」とは言い難いと思われます。遠藤氏は、中国視点に中途半端に偏っていると言わざるを得ません。ここまで支離滅裂なことを平気で口走る点、遠藤氏においては、共和国が一方的に追い詰められているという構図でないと精神の安定が保てないのだろうかとさえ勘ぐってしまうものです。あまりにも中途半端です。

■朝鮮半島情勢研究者にありがちな誤謬A――原典を十分に確認しない
遠藤氏は、もともと中国政治の専門家であり朝鮮半島情勢の専門家ではないことは御本人も自覚しておられるからか、学者にしては割と柔軟に他者の意見を取り入れています。が、よりによって頼ったのがリ・ヨンファ氏。おいおい。

リ氏ソースにもとづいて遠藤氏は、軽率にも「4月23日の北朝鮮の労働新聞は「経済建設総力戦」の一色だったという。 中朝双方からの情報が一致するので、北朝鮮はきっと「紅い団結」に基づいた「中国式の改革開放路線」を全開にしていくことだろう。」と断じてしまっていますが、5月13日づけ「朝鮮労働党全員会議で提起された経済建設路線を読む」でも述べたとおり、朝鮮中央通信配信記事を読む限り、中央委員会全員会議では依然として、昔ながらの「自力更生・自給自足」という単語がキーワードとして登場している点において、とてもではないが現時点では「「中国式の改革開放路線」を全開」とは断じ得ないところです。

このことは、韓「国」紙『ハンギョレ』も、4月23日づけ記事で、まさに”겨레”(同胞)であるからこそ原典を十分に確認した上で「「金委員長が中国の改革開放を率いたトウ小平の道を歩こうとしている」という評価もあるが、まだ断定する状況ではない。金委員長は「新しい革命的路線の基本原則は自力更生」と強調することにより、少なくとも形式論理上では全面的改革開放と距離を置いた。」と論評している通りです。

おそらく、リ氏は遠藤氏に記事内容の詳細までは教えてやらなかったのでしょう。そして遠藤氏は、原典ソースに当たること能わず、思い込みで「北朝鮮はきっと「紅い団結」に基づいた「中国式の改革開放路線」を全開にしていくことだろう。」などと結論付けてしまったというのが、ことの顛末なのでしょう。原典ソースをしっかりと読み込まないと如何なるのかという失敗例を、遠藤氏の「分析」は実証しているわけです。

ちなみに、遠藤氏はリ氏について「李教授は2016年の時点で金正恩が「いずれ核を放棄し、対話路線に転換してくる」と予測しており、朝鮮半島問題に関しては群を抜いた第一級の研究者だ」などとヨイショし、その威光を借りる形で自らの記事について「その彼が5月29日付のコラム「トランプみごと!――金正恩がんじがらめ、習近平タジタジ」を「まさに、その通りだ!金正恩はやがてアメリカにシフトしていく」と評価してくれたので、この線は不変のまま続いていくものと判断している」と鼻を高くしていますが、朝鮮中央通信配信記事を毎日とは言わないまでも時折ザッと目を通しておくだけでも、この程度のことは当然に予想できることですよ。

チュチェ105(2016)年といえば「新年の辞」では「水爆実験」と並んで「内閣を中心とする経済(建設のための)作戦」=改革路線が打ち出されていましたし、第7回党大会を控えた70日戦闘における「集団主義的競争」や、党大会で提唱された「並進路線」が明々白々に示している通り、この年の共和国の最大のテーマは「経済建設」でした。2500万人あまりの人口である共和国にあって急速な経済建設を志そうとすれば、貿易は重要な手段です。「経済建設」が主要な政策課題であると当人たちが言明しているのだから、ゆくゆくは貿易のための対話路線に移るであろうというのは、朝鮮中央通信配信の記事を読むことが出来る人物であれば、誰もが到達する結論です。

■中華帝国主義の現れ?
もっとも、そもそも遠藤氏には共和国側の視点を考慮に入れるという気がないのかもしれません。前掲引用の4月12日づけ記事の以下のくだりは、そのことを強く示唆するものです。
 「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を党規約に盛り込んだ習近平には今、この「紅い団結」が何としても必要なのである。だから、これまで中国を「1000年の宿敵」などと罵倒する無礼の極みを続けてきた「若造」(金正恩)に百歩譲歩した。

◆習近平の手の上ではしゃぐ金正恩
 北朝鮮と中国の首脳が会談を行なわなくなったのは、中国が北朝鮮にとっての最大の敵国であるアメリカと新型大国関係などを築こうとしていたからだ。しかし北朝鮮も、そのアメリカと首脳会談を行なう方向に動こうとしているのだから、中国としては北朝鮮を手なずけやすくなってきた。

 「社会主義思想」の政党間の絆を堅固にさせていくことによって、習近平思想を強化し、中国共産党による一党支配体制を、より盤石にしたい。

 それが、習近平が最も高いレベルに位置付けている目標であり、戦略なのである。

 その目的を果たすために、金正恩に「中朝共同戦線」を張らせた。

 習近平にとって金正恩は、一党支配体制を維持するためのコマの一つなのだ。金正恩ははしゃいでいるが、習近平の手の上で踊っているに過ぎないのではないだろうか。
たしかに、中国共産党の視点、習近平主席の視点から見れば、こういう分析は成り立つのかもしれません。しかし、共和国側の立場に立っても同様のことが言えるでしょう。

習主席が「無礼の極みを続けてきた「若造」」というのであれば、キム・ジョンウン委員長にしてみれば、習主席をはじめとする歴代の中国主席たちは、「独立国家たる我が国に対して、何の権利があるのかは知らんが偉そうに指導してくる奴」といったところでしょうし、キム・ジョンナムやチャン・ソンテクの事実上の後見役であった点に至っては、「潜在的には政権を脅かす存在」であったわけです。共和国にとって中国共産党政権の所業は、「無礼」どころの話ではなかったにも関わらず、いまキム・ジョンウン委員長は、習主席をヨイショしまくっているわけです。

習近平にとって金正恩は、一党支配体制を維持するためのコマの一つなのだ」などと遠藤氏は書きますが、「それは、お互いさま」利用しあっているというのが実態なのです。

朝中関係は昔からドライな独立国家同士の関係です。수령님が延安派を粛清したころからそうでした。冷戦期の朝中ソの三角関係もそう。「社会主義兄弟国」の関係は、表向きとは異なり、かなりドライな関係なのです。

そもそも、「相手国は自国利益のコマである」というのが外交というもの。その原理原則に従えば、「習近平にとって金正恩は、(中国共産党の)一党支配体制を維持するためのコマの一つなのだ」が成り立つというのであれば、反対も成立するはず。「金正恩にとって習近平は、朝鮮労働党の一党支配体制を維持するためのコマの一つ」であるともいえるはず。にもかかわらず、「習近平の手の上で踊っているに過ぎない」などと、まるでキム・ジョンウン委員長が一方的に踊らされている・泳がされているかの如く描写する遠藤氏の言説は、単に「中国視点に偏向している」というレベルではなく、二国間関係・国際関係を分析するにあたっての基本的なお約束事が根本的に欠落しているのではないかと疑わざるを得ないものです。

こうした「大国中心」の分析は、日米関係の枠内における日本の政策分析や、ソ連―東欧諸国関係の枠内での東欧諸国情勢の政策分析でも往々にして見られてきたものですが、とりわけ朝中関係では酷いものです。日本や東欧諸国の政策の行方を分析するにあたっては、米国の意向やソ連の意向を踏まえるのは必須的手続きであるとはいえ、それだけで日本や東欧諸国の政策を判断する人は、まずいません。米国の意向やソ連の意向があるとはいっても、各国にも言い分と事情があるのだから、そこにスポットライトを当てるのが当然のことです。

しかし、朝中関係ではなぜか中国政府の意向を決定的要素として共和国情勢を語る極めて不可思議な方法論が幅を利かせています。チュチェ106(2017)年5月8日づけ「朝中両国が「血の同盟」だったなどというのは、いまだかつて一度もない」で取り上げた中国人学者(沈志華・華東師範大学終身教授)に至っては、現代の朝中関係を「天朝」という概念で説明しようと試みる始末。千年来の冊封体制の基本構造がいまも続いているとでも言わんばかりの分析手法。異常と言うほかありませんが、これが中国研究者の脳髄に染み込んだ中華帝国主義的な発想なのでしょう

朝鮮半島情勢において中国の影響力は大であるとはいえ、それだけで説明できるものではありません。共和国の国家指導思想であるチュチェ思想の「チュチェ」は漢字で書くと「主体」ですが、これは、まさしく「反中国・反ソビエト・自主自立」という意味での「主体」です。共和国はチュチェを確立するために努力しており、ここ最近の朝米関係・朝中関係を見るに、一定の成果を挙げています

■総括――朝米関係の行方を占うならば、朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国そのものを正面から取り扱うべき
遠藤氏の言説は、昨今の共和国情勢をめぐる日本言論界隈を如実に示すサンプルであると言えます。その特徴は次の3点に集約できるでしょう。すなわち、@「共和国が一方的に追い詰められているという構図でないと困る」と言わんばかりの無理筋を書き立ていること。A朝鮮半島情勢を分析しているにもかかわらず、朝鮮語の原典ソースを確認しようとしないこと。B肝心の「朝鮮」を中心に据えずに中国やアメリカ、ロシアの動向ばかりに注目することです。

こうした方法論がいよいよ破綻の様相を顕著に呈しているのが、ここ最近の朝米関係・朝中関係であると言えます。共和国が弱小国でありながら「チュチェ」を提唱して自力更生・自主外交に注力してきた結果、中国を上手く利用して後見人に据えることに成功し、それを背景としていよいよ朝米首脳会談が目前に迫っているのです

いまだに中国の事情だけをもって朝鮮半島情勢を語ろうとする人々の誤謬と、どうしても「北朝鮮は追い詰められている」という構図にしがみつこうとする人々の哀れさが際立つ今日この頃。これを教訓に、朝鮮半島情勢や朝米関係を語るというのであれば、朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国そのものを正面から取り扱うようお勧めします
posted by s19171107 at 21:55| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする

2018年06月03日

朝米首脳会談中止騒動で共和国が得たもの

ここ1週間にわたって展開されてきた朝米首脳会談中止騒動は、「やっぱり開催」で一旦、落ち着くようです。この1週間の展開から共和国側が得たものについて簡単に触れておきたいと思います。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180602/k10011462231000.html
トランプ大統領 米朝首脳会談6月12日シンガポールで開催へ
6月2日 3時50分米朝首脳会談

アメリカのトランプ大統領は北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長との史上初となる米朝首脳会談を当初の予定どおり、今月12日にシンガポールで開催すると発表し、非核化の実現に向けて強い意欲を示しました。


(中略)

ただ、「会談で何かに署名するようなことはないだろう」とも述べて、12日の首脳会談で合意文書の署名には至らない可能性を示唆し、首脳会談は1回にとどまらず、複数回にわたることもあり得るという考えを示しました。

また、トランプ大統領は、キム副委員長とは制裁や朝鮮戦争の終結をめぐって意見を交わしたと明らかにし、首脳会談でも戦争終結が議題になる可能性があると指摘しました。

そして、「われわれは仲よくなりつつあるので、もう最大限の圧力ということばは使いたくない。対話が破綻するまで新たな制裁はかけない。北朝鮮が非核化に応じないかぎり、制裁は解除しないが、解除できる日が来ることを楽しみにしている」と述べました。

さらにトランプ大統領は、キム委員長が権力の座にとどまったままでも北朝鮮の変革は可能だとしたうえで、「日本や韓国、中国が助けてくれるだろう。アメリカは多くのカネは使わない」と述べ、将来的には北朝鮮の発展のために、日本や韓国などが支援することになるという考えを示しました。


(以下略)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180602-00000067-mai-int
<トランプ氏>段階的非核化を容認 米朝12日に会談
6/2(土) 23:43配信
毎日新聞

 【ワシントン高本耕太】トランプ米大統領は1日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との首脳会談を当初予定通り6月12日に開催すると表明した。トランプ氏は北朝鮮の非核化について「時間をかけても構わない。速くやることも、ゆっくりやることもできる」と北朝鮮側に伝えたとも述べた。首脳会談の実現を優先するために、非核化の「即時達成」を追求してきた方針を転換したともいえる。

 トランプ氏は1日、金委員長の最側近、金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長とホワイトハウスで面会し、金委員長からの親書を受け取った。会談後、記者団に対し、北朝鮮側の「非核化の意思」を繰り返し強調しつつ、「彼らは用心深く、急いでやろうとはしていない」と、「段階的な非核化」を主張してきた北朝鮮側の立場に理解を示した。また、「1回の会談ですべてが成し遂げられるとは思わない」とも発言し、複数回の首脳会談を含む折衝の積み重ねが必要になるとも語った。


(中略)

 また、トランプ氏は「彼らは(非核化の)道筋で、他の物事を求めている」と述べ、非核化の段階ごとに見返りを得たい北朝鮮の戦略に理解を示す姿勢も見せた。「関係改善が進むなかで今後、『最大限の圧力』という言葉は使いたくない」と述べ、対北朝鮮制裁を解除する日を「楽しみにしている」とまで語った。

(中略)

 一方、トランプ氏は金英哲氏との会談で「人権問題については話し合わなかった」と述べた。首脳会談では議題に取り上げる可能性も示したが、日本政府は米朝首脳会談で、北朝鮮による日本人拉致問題を取り上げるよう米側に求めており、7日に予定される日米首脳会談で、安倍晋三首相がトランプ氏に改めて要請するとみられる。

最終更新:6/2(土) 23:52
毎日新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20180602-00000019-ann-int
“歴史的会談ありき”で譲歩か 圧力巡る発言も軟化
6/2(土) 11:46配信
テレ朝 news


(中略)

 トランプ大統領は、自らが掲げてきた最大限の圧力政策という看板を下ろすような発言をしています。

 トランプ大統領:「圧力は継続するが、『最大の圧力』という言葉を金輪際、使いたくない。米朝関係は改善し始めているからだ」

 「今後も圧力は続ける」としていますが、これまで各国に求めてきた制裁のキャッチフレーズがなくなれば、世界的な制裁の網が緩む恐れもあります。早速、専門家からは「迅速な非核化を求める会談から、金正恩委員長と仲良くなるための会談になった」と批判的な声が相次いでいます。ただ、国務省で北朝鮮担当を務めたジョセフ・ユン氏は「歩み寄りも必要だ」と話していて、トランプ大統領が譲歩をした可能性も考えられます。
(以下略)
相手がトランプ大統領であるとはいえ、キム委員長が権力の座にとどまったままでも北朝鮮の変革は可能だ」や「時間をかけても構わない」、「圧力は継続するが、『最大の圧力』という言葉を金輪際、使いたくない」という言質を取ったことは重要です。

5月17日づけ「筋を通し公開的に言質を取った共和国」で私は、米韓合同軍事演習「マックス・サンダー」を巡る北南閣僚級会談中止と朝米首脳会談「再考」の宣言を通して、共和国が重要な言質を引き出すことに成功したと述べました。自ら会談中止を示唆することによって相手方を揺さぶり、譲歩を引き出したのです。

そして今回のアメリカ側からの会談中止という揺さぶり。アメリカ側も負けじと交渉の主導権を掌握しようとしたのでしょうが、共和国は、アメリカ側から仕掛けられた揺さぶりをも斬ってかえし、国益を確保しました。結果的に見て、共和国側がどうしてもアメリカ側の口から言わせたかったセリフを言わせることに成功したのでした。まだまだ駆け引きが続くはずであり、この程度の言質で勝利を宣言する段階にはありません。しかし、重要な成果を挙げたと言うことはできるでしょう。

体制保証については共和国にとっての最重要課題です。このことについてトランプ大統領から発言を引き出せたのは特に重要な成果です。それに関連したトランプ大統領発言を日経新聞の全訳から引用しておきます。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31303490S8A600C1NNE000/?df=2
 ――金委員長の体制保証をどう実現するのか。

 「保証できるようにしっかりと確認する。戦争が終結したらそれは完全な終わりだ。二度と始まらない」

さて、共和国が、アメリカ側から仕掛けられた揺さぶりをも斬ってかえし国益を確保したことについては、産経新聞でさえも認めざるを得ないようです。悔しくて仕方ないんでしょーねーw
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180603-00000003-san-kr
米朝会談再設定 “折れた”正恩氏 主張は曲げず
6/3(日) 7:55配信
産経新聞

 【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、トランプ米大統領による米朝首脳会談の中止表明に対し、即座に側近を米国に送り込み、12日の会談開催にこぎ着けた。体制の命運がかかった会談実現のため、米国に“折れた”形だ。だが、日本人拉致問題など人権問題の議題化を拒む姿勢を維持しており、会談本番では、自らの主張を曲げない可能性が高い。


(中略)

 その結果、トランプ氏から北朝鮮の体制を「確実に保証する」との言質を取り付けた。ただ、米朝会談の成否を決める動きにもかかわらず、北朝鮮メディアは金英哲氏の米国派遣を伝えていない。中止表明に焦り、慌てて駆け付けた事実は、一種の“屈服”と映りかねないことを懸念したためとみられる。(以下略)
体制の命運がかかった会談実現のため、米国に“折れた”」が「トランプ氏から北朝鮮の体制を「確実に保証する」との言質を取り付けた」って文脈的におかしくないですか? トランプ大統領書簡を受けてキム・ジョンウン委員長が側近を急派して会談させたことは、その時点では「折れた」と言えたとしても、その結果として、重要な言質までをも取って帰ってきた(快挙!)のであれば、その会談は単に「折れた」だけのものとは言えないでしょう。

どうしても「北朝鮮が詫びを入れて会談を懇願した」という構図に近づけたくて、無理矢理な描写になっていると言わざるを得ません。産経が悔し紛れに無理筋を書き立てる点、この1週間の騒動を通じて共和国側が獲得した言質・成果は重要なものだったのでしょう。

(※6月4日に論旨を補強する方向で引用を増やし、それに伴い加筆しました)
posted by s19171107 at 13:53| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする

2018年05月31日

「飼い犬」が「ご主人様」に対して「釘をさす」「念を押す」??

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180531-00000067-san-pol
首相、対北妥協にクギ 来月の日米会談、拉致協力念押し
5/31(木) 7:55配信
産経新聞

 安倍晋三首相とトランプ米大統領が6月7日に米ワシントンのホワイトハウスで会談することが決まった。同月12日の米朝首脳会談再設定に向けた協議が進む中、日米が対北朝鮮で緊密に連携していることを打ち出す。首相は米朝会談直前にトランプ氏に在韓米軍の撤退など安易な取引に応じないようクギを刺す一方、拉致問題解決への協力を念押しする考えだ。


(中略)

 米朝首脳会談の再設定に向けた調整は予断を許さない状況にある。米国が目指す「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」をめぐる北朝鮮との隔たりが背景にあるとみられるが、成果を急ぐトランプ氏は北朝鮮の「核軍縮」でお茶を濁しかねない。

 また、トランプ氏が、北朝鮮が求める在韓米軍の撤退に安易に応じれば、東アジアの軍事バランスは大きく崩れる可能性がある。このため、首相は確実なCVID実現に強い期待感を示すとともに、「リビア方式」を進化させた「トランプ方式」を推し進めるべきだと伝える考えだという。

 拉致問題でも、トランプ氏は解決の重要性を理解していると明言しているが、不安も残る。5月28日の日米首脳による電話会談後の米政府発表に拉致問題への言及はなかった。米国内では「トランプ氏にとって拉致問題の優先順位は低い」との指摘が出ており、首相はトランプ氏に米朝首脳会談で拉致問題解決を迫るよう重ねて要請する考えだ。(田北真樹子)

最終更新:5/31(木) 11:09
日本がアメリカに対して、その行動に釘を刺せるような立場ではないし、拉致問題についても、共和国側からまったく相手にされていない外交力皆無の日本としては、アメリカには「念押し」するのではなく「頼み込む」というのが正確なところ。「飼い犬」たる日本が「ご主人様」たるアメリカ様に対して「釘をさす」だの「念を押す」だの、産経新聞田北記者は、いったい何を思いあがっているんでしょうかw

当ブログでも繰り返しているとおり、共和国の核武装化と在韓米軍の存在・北侵演習はセットの関係です。世界最強の絶対的な軍事力を誇る核保有国たるアメリカ、自国の目と鼻の先に展開している好戦的なアメリカ軍と直接対峙している共和国が、ソ連が消滅し、中国が必ずしも頼りになるわけではない状況下で再三にわたり北侵演習が展開されている現実を鑑みれば、自分自身を守ろうとするならば、核武装を選択の視野に入れるのは当然のことでしょう。

パワーバランスという観点から言えば、米「韓」は通常兵器だけでも圧倒的な軍事力をもち、その担保として強い経済力を誇っています。それに対して共和国は、通常兵器は残念ながら「骨董品レベル」であるし、経済力についても米「韓」には敵わないところです。共和国は、核武装してやっと米「韓」軍の通常兵器のラインナップに対抗できるのが現実です。そうであれば、共和国に対してCVIDを要求するのであれば、在韓米軍は撤退して韓「国」軍の自主防衛に切り替えた上で韓「国」軍も軍縮すべきでしょう。もちろん、西側にも言い分はあるでしょうから在韓米軍の撤退は難しいにしても、少なくとも在韓米軍の抜本的な縮小は避けられないことだと言えます。

産経お得意の「日本の国益」だけを一途に考えるのであれば、産経新聞田北記者のようなことを口走ってしまうかもしませんが、外交はまさに"Deal”です。自己利益の追求を原則としつつも、交渉がまとまらなければ元も子もなく、そのためには相手側にも得をさせる必要があります。「在韓米軍の撤退」は「安易な妥協」などではなく、まさに"Deal”において正面から取り扱うべき重要なテーマであると言えるでしょう。
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2018年05月30日

核開発問題と合同軍事演習問題をセットとして位置づける共和国の一貫した立場

http://www.kcna.co.jp/calendar/2018/05/05-29/2018-0529-009.html
로동신문 미국은 회담 바란다면 위협공갈 하지 말아야 한다
労働新聞 米国は会談を望むなら、威嚇し恐喝すべきではない

(中略)

29일부 《로동신문》은 개인필명의 론평에서 이러한 도발적언동들은 대화상대방에 대한 참을수 없는 우롱이라고 규탄하였다.
29日づけ『労働新聞』は、個人署名の論評において、このような挑発的言動は、対話相手に対する耐え難い愚弄だと糾弾した。

론평은 미국이 남조선에서 해마다 벌려놓는 연습들은 례외없이 공화국에 대한 선제공격과 전면전쟁도발을 가상한것으로서 조선반도의 평화와 안정을 파괴하는 근원이라고 까밝히고 다음과 같이 지적하였다.

論評は、米国が南朝鮮において毎年繰り広げている演習は、例外なく共和国に対する先制攻撃と全面戦争を想定したものとして、朝鮮半島の平和と安定を破壊する根源であると喝破し、次のように指摘した。

조미가 현안문제들을 해결하려는 의지를 안고 대화를 향해 마주 가고있는 때에 미국이 남조선과 함께 조선반도에서 긴장을 격화시키고 핵전쟁을 몰아오는 주되는 화근인 합동군사연습을 굳이 벌려야 할 필요가 있겠는가.
朝米が懸案を解決しようとする意志をもって対話に向けて向かい合っているときに、米国が南朝鮮と共に朝鮮半島において緊張を激化させて核戦争をもたらす禍根たる合同軍事演習をあえて広げなければならない必要があるだろうか。

현시기 합동군사연습문제는 미국이 평화를 바라는가 아니면 전쟁을 추구하는가를 보여주는 시금석으로 된다.
合同軍事演習問題は、米国が平和を望むのか、戦争を追求するのかを示す試金石となる。

세상사람들은 미국이 합동군사연습을 고집하는것은 조선반도정세가 완화되기를 바라지 않고 조선과 화해하는데 흥미를 가지고있지 않기때문이라고 평하고있다.
世界の人々は、米国が合同軍事演習に固執するのは、朝鮮半島情勢が緩和されることを望まない、朝鮮と和解するのに興味を持っていないためだと評している。

미국이 회담을 진심으로 바란다면 상대를 힘으로 위협공갈하는 놀음을 하지 말아야 한다.
米国が会談を心から願うのなら、相手を力で威嚇し恐喝すべきではない。

(以下略)
大方の見込みどおり、「北朝鮮核開発問題」の本質は、「現体制維持のための手段」です。朝鮮労働党体制にとっての最大の脅威は、目の前に立ちはだかるアメリカの強大な軍事力であり、その端的な象徴が「米『韓』合同軍事演習」です。

核開発と米「韓」合同軍事演習はセットの関係です。共和国が「リビア方式」に対して激しい拒絶を示しているのは、共和国側が一方的に武器を置くことを要求しているからです。アメリカが約束通りに敵対行為や利敵行為を完全に止めればいいのですが、そんな保証はどこにもありません。むしろ、まさにリビアにおいてこそであったことが証明されています。詐欺師同じ手口を持ち出しつつ「この間は騙したけど、今度は本当の儲け話だから!」といって信じる馬鹿がどこにいるというのでしょうか。

核開発と米「韓」合同軍事演習は同時に解消する必要がある――その観点において執筆されたのが今回の『労働新聞』論評であると言えます。「朝米が懸案を解決しようとする意志をもって対話に向けて向かい合っているときに、米国が南朝鮮と共に朝鮮半島において緊張を激化させて核戦争をもたらす禍根たる合同軍事演習をあえて広げなければならない必要があるだろうか」というのは実に端的な指摘であり、また、共和国政府の一貫した立場です。

先週末のトランプ大統領書簡を巡って、共和国側が驚き、慌てているという論評が日本の言論空間では幅を利かせています。ここ最近になってからは朝米双方から「延期ないしは中止」の見立てが出てきていた点、まったくを以って予想していなかったわけではない(長く「瀬戸際外交」を得意としてきた共和国が、交渉が破綻する可能性をまったく見積もっていないはずはありません)でしょうが、キム・ゲグァン朝鮮外務省第一次官の談話でも明記されていますが、共和国側は驚いていることは間違いありません。そして、なんといっても相手が「狂犬戦略の使い手」なのか「本当に狂っているのか」が測りかねるトランプ大統領だけに、慌てもしたかもしれません(分からないけど)。しかし、だからといって共和国側が譲れない原則を曲げているかと言えば、決してそんなことはありません。そのことを端的に示しているのが、今回の『労働新聞』論評であると言えます。

ところで、この要求は現時点では受け入れられていませんが、それはそれで共和国にとっては「内部引き締め」の手段になるものです。「アメリカは口では対話を求め、実際それに向けたジェスチャーをしているが、合同軍事演習を中止しない点については油断してはならない」といった具合です。合同軍事演習が本当に中止されれば万々歳、されなくても、それはそれでストーリーの仕込みがあるというわけです
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2018年05月26日

「寛大さ」と「アメリカの無茶の被害者としてのワタシ」を描き出すキム・ゲグァン談話の戦略性

相手方を罵倒することにかけては「世界二大巨頭」と言い得る共和国とアメリカですが、今回の朝米首脳会談中止を巡っては、双方とも不気味なまでに抑制的なコメントを発表しています。

トランプ米大統領の書簡キム・ゲグァン朝鮮外務省第一次官の談話は、双方とも「お前が悪いから今回の会談は中止だが、会談自体は両国の利益になるから、いつでも用意ができている」という点では一致しています。そして、いつもだったら相手方を罵倒しつくすところ、今回は敢えてそうしないことによって、「俺は寛大だから、お前から詫びを入れてくるなら会ってやってもいいぞ」としています。このことはすなわち、「会談中止」が、会談の主導権争いのカードとして切られていることを示しています。依然として、会談は開かれる方向性にあると見たうえで、その動向を見守るべき段階と言えます。

■「寛大さ」と「アメリカの無茶の被害者としてのワタシ」を描き出すキム・ゲグァン談話の戦略性
特に、「寛大さ」を強調しつつ、同時に行間に「哀しみ」を漂わせることによって、談話を戦略的なものに位置付けることに成功しているのが朝鮮外務省第一次官のキム・ゲグァン氏です。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018052500637
北朝鮮第1外務次官の談話全文

(中略)

 歴史的な朝米首脳会談について言えば、われわれはトランプ氏が歴代のどの大統領も下せなかった勇断を下し、首脳会談という重大な出来事をもたらすために努力したことを内心では高く評価してきた。

 しかし、突然、一方的に会談中止を発表したことは、われわれとしては、思いがけないことで、極めて遺憾に思わざるを得ない。

 首脳会談に対する意志が不足していたのか、あるいは、自信がなかったのか、その理由については推測するのは難しいが、われわれは歴史的な朝米首脳の対面と会談それ自体が対話を通じた問題解決の第一歩であり、地域と世界の平和と安全、両国間の関係改善に意味のある出発点になるとの期待を持ち、誠意ある努力を尽くしてきた。

 また「トランプ方式」というものが双方の懸念を解消し、われわれの要求する条件にも符合し、問題解決に実質的に作用する賢明な方策になることをひそかに期待もした。

 わが国務委員長(金正恩朝鮮労働党委員長)も、トランプ氏と会えば、良いスタートが切れると述べ、そのための準備に全力を注いできた。

 にもかかわらず、一方的に発表した会談中止は、われわれの努力と、われわれが新たに選択して進むこの道が果たして正しいのかを改めて考えさせている。

 しかし、朝鮮半島と人類の平和と安定のため、全力を尽くそうとするわれわれの目標と意志には変わりはなく、われわれは常に寛大で、開かれた心で米国側に時間と機会を与える用意がある。

 一度では満足な結果を得られないが、一つずつでも段階別に解決していくなら現在より関係が良くなるはずで、より悪くなるはずはないことぐらいは米国も深く熟考すべきだろう。


(以下略)
キム・ゲグァン氏は、単に会談が設定されたことに留まらず、非核化を巡る「トランプ方式」への「密かな期待」を告白するなど、何だかんだ言ってここまでの展開に期待を寄せていたようにコメントしています。その上で、「我々としても決して悪くない展開だったのにも関わらず、この期に及んで『リビア方式』を蒸し返したり、北侵演習を強行したアメリカ側が悪い」という構図を描きつつ、「われわれは常に寛大で、開かれた心で米国側に時間と機会を与える用意がある」として「寛大さ」を描き出しています「分からず屋のトランプ坊やを諭している」と読めさえします

また、敢えて抑制的な調子を採用し、どこか「哀しみ」さえも行間に漂わせることによって、「アメリカが無茶を言ってきて困るんですよ・・・」という「被害者としての振る舞い」を取っているとも言えます。「アメリカの無茶の被害者としてのワタシ」を描き出しているわけです。ここで仮にいつもの調子で威勢の良いことを言ってしまうと、「被害者としてのワタシ」という雰囲気が台無し。敢えて抑制的であることが大切です。ほんと、どこまで行っても抜け目がありません。

「アメリカに無茶を言われて困っている被害者」という構図は、会談中止前から既に一定の効果を生んでいます。たとえばNews Week誌は、次のように指摘しています。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/05/post-10227_2.php
金桂冠は正しい、トランプは金正恩の術中にはまった
2018年5月23日(水)17時23分


(中略)

首脳会談が中止か物別れに終われば、金正恩は、自分は誠実な呼び掛けをし、国際的な基準に沿った手法(段階的で同期的措置)を提案したのに、トランプがむちゃを要求したと主張するだろう。

(以下略)

イギリスのBBC放送も次のように解説しています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180524-44234471-bbc-int
北朝鮮、ペンス米副大統領を「愚か者」と非難
5/24(木) 17:12配信
BBC News


(中略)

そのため、北朝鮮とリビアを同じ文脈で語ることすら深刻な侮辱になり、米政府は自分たちにしかるべき敬意を示していないと、北朝鮮政府は感じているのかもしれない。

北朝鮮はまず一度、米国に警告した。それでもペンス氏は、またしても北朝鮮とリビアを比べてみせた。慎重な外交には慎重な情報発信と慎重な言葉遣いが必要だ。トランプ政権はこの点において規律を欠いていると、北朝鮮が感じているのは明らかだ。


(以下略)
どこか「哀しみ」さえも漂わせる今回の抑制的なキム・ゲグァン氏の談話は、ここ最近、共和国側が描き出すことに注力してきた「アメリカが無茶を言ってきて困る」という構図――News Week誌やBBC放送が既に採用している見方――を更に強調させるものです。

キム・ゲグァン氏の談話は、仮に6月12日会談が急展開的に復活したにもかかわらず、やっぱり不調に終わったとしても原則的に活用可能です。アメリカ側の譲歩に対して一定程度の配慮を見せる談話の論調が、「我々も可能な限り妥結に向けて努力してきたが、やはりアメリカは頑なだった」というストーリーの論拠になるわけです。

■会談の主導権争いは続く
その点、次の見立ては失当と言わざるを得ないところです。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180526-00010013-agora-int
トランプ大統領の「米朝首脳会談キャンセル書簡」を読み解く --- 渡瀬 裕哉
5/26(土) 8:12配信
アゴラ


(中略)

米国人の人質解放に伴う北朝鮮のジェスチャーによって明らかに油断していたトランプ政権でしたが、今回の書簡では「北朝鮮にしてやられた状況」を正しく認識し、逆に北朝鮮に対して主導権を取り戻す一撃を加えることになりました。

トランプ大統領が金正恩に送った書簡の中で解放された人質について触れた
“「In the meantime, I want to thank you for the release of the hostages who are now home with their families. That was a beautiful gesture and was very much appreciated.」”
こそが同書簡の肝です。

これは一見してトランプ大統領が金正恩に友好的な態度を示したように見えますが、金正恩にとっては最も政治的に致命的な打撃になりかねない一文でもあります。

この書簡が北朝鮮に送られたタイミングは核実験場の爆破と同日であり、そして金正恩は米国をその気にさせるために前述の通り米国の人質を既に解放してしまっています。現段階で自らの行い(直近の声明文等)が理由で米国から何も引き出せないで終わることになった場合、それらを主導した金正恩の北朝鮮における権威は失墜します。つまり、トランプ大統領が同書簡を送ったことで、金正恩にとって米国を嵌めるために使用した手札が今度は自分の政治的な立場を脅かすものに変質してしまったのです。

(中略)

トランプ大統領としては対北朝鮮交渉を選挙の手柄にするためには、北朝鮮に主導権がある状況ではなく、自分に主導権があるように見せる必要があるので、書簡一本で見事に立場を逆転して見せたということになります。筆者はトランプ大統領の絶妙な切り返しによる「芸術的なディール(取引)」に非常に感銘させられました。

(以下略)
譲歩という意味で共和国側が一歩先んじているにもかかわらずアメリカ側がイチャモンつけ的に応対しないという展開は、共和国にあっては、「金正恩の北朝鮮における権威は失墜」するというよりもむしろ、「我々の誠実の譲歩に対して不誠実な対応で応えるアメリカ帝国主義の無礼さ」に対する敵対意識が強まり、逆にその結束が固まると見るべきでしょう。共和国は特に「我々」意識が強い御国柄です。キム・ジョンウン委員長個人がどうこうというよりも、「我々に対する侮辱」と受け止めることでしょう。共和国は建国以来のほとんどの時期を対米対決の中で過ごし、アメリカに対する敵対思考は既に染みわたっています。人間は、内部での対立よりも外敵との闘争の方に注意をひかれるものです。「我々vsアメリカ帝国主義」という構図を補強することでしょう。

また、前述のとおり、「アメリカが無茶を言ってきて困る」という構図・ストーリーがある程度において西側の言論空間でも承認されているように、今回の一方的な会談中止を告げる書簡は、必ずしも「アメリカに主導権が戻った」とは言えないでしょう。おそらくまたNews Week誌やBBC放送のようなメディアが「トランプもトランプでどうなのよ」「一括で解決できるような問題じゃねーだろ」「単に現体制を維持したいだけの北朝鮮に対して無理難題ばかり言って、本当に交渉を妥結する気はあるの?」という世論を醸成すると予測されるからです。

日本の言論空間では共和国が「絶対的悪役」として位置付けられていますが、諸外国ではそこまでではありません。むしろ、諸外国の言論空間では「トランプ憎し」が相当のもの。トランプ大統領を悪く書くために、相対的に共和国側の主張を取り上げたり、「トランプの稚拙な外交要求に振り回される被害者としてのノース・コリア」と言った風に描き出すこともあり得るでしょう。このことは、共和国にとって有利な条件であると言えます。

渡瀬氏はトランプ大統領側が主導権を奪還したという見立てを展開しますが、「自分たちの寛大さ」と「被害者としてのワタシ」を強調するキム・ゲグァン談話が出てきた点において、私は依然として主導権争いが展開され続けることを予想します。

■交渉術の進歩と見るべき
朝米間の緊張が緩和されるのがよっぽど面白くなかったのか、ここ数か月間、すっかりゴシップ記事量産に逃げていたコ・ヨンギ氏が久々に「復帰」し、またしても面白いことを書いてくれています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kohyoungki/20180525-00085646/
会談中止で言ってることが支離滅裂…金正恩氏のメンタルは大丈夫か
高英起 | デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
5/25(金) 11:14

北朝鮮外務省の金桂官(キム・ゲグァン)第1次官は25日、トランプ米大統領が米朝首脳会談の中止を通告したことを受けて談話を発表。「意外であり非常に残念」「いつ、いかなる方式でも(米国と)対座して問題を解決していく用意がある」と表明した。

談話は「委任による発表」とされており、金正恩党委員長の意思を代弁したものと見られる。

驚かされるのは、その中身だ。

朝首脳会談が中止でショック!?
談話は、会談を控え米国が北朝鮮に対する要求水準を高めてきたことに反発しつつも、首脳会談を決断したトランプ氏を「心のうちで高く評価してきた」と持ち上げている。さらには「われわれの国務委員長も、トランプ大統領と会えば良いスタートを切ることができると述べて、そのための準備に努力の限りを尽くしてきた」などとして、精一杯のラブコールを並べているのだ。

そもそも、トランプ氏が24日に会談中止を通告した際、その理由として挙げたのは、北朝鮮側が崔善姫(チェ・ソニ)外務次官の談話として示した「怒りとあからさまな敵意」だった。

そして、崔次官はその談話の中で、「われわれは米国に対話を哀願しないし、米国がわれわれと対座しないというなら、あえて引き止めないであろう」と断言。ほかにも非常に強い言葉を並べ立てて、米国を非難している。


(中略)

これでは、言っていることがまるで支離滅裂である。いったい、この落差は何なのか。北朝鮮は従来、たとえ外国との交渉事がうまく行かなくとも、その責任を相手に転嫁して、強がりを言ってきた。そんな過去の姿勢と比べると、金次官の談話は「哀願」にほかならない。

これはもう、金正恩氏の「焦り」がモロに出たと考えるしかあるまい。


(以下略)
いったいどこが「支離滅裂」だと言うのでしょうか。チェ・ソニ外務次官は、この期に及んで「リビア方式」を持ち出す一部の米国高官を罵倒していただけです。そして、キム・ゲグァン氏が談話中で述べているように、共和国は「リビア方式とは異なるトランプ方式」には期待を寄せていました。だからこそ、会談1か月前になっても基本的な非核化プロセスさえも共有できていないという大変な作業遅延状態にもかかわらず、共和国側は会談の実現に向けて尽力してきたわけです。ここには何の矛盾もありません

また、かつて「老いぼれ」などと罵倒しつくしていたトランプ大統領についても、ここ最近では敢えて罵ることをしてきませんでした。その延長線上に位置するのが今回の談話における「トランプ大統領と会えば良いスタートを切ることができると述べて、そのための準備に努力の限りを尽くしてきた」です。この点も終始一貫しています。

コ氏は「金次官の談話は「哀願」にほかならない」と断じています。たしかに、今までの会談決裂時の定型句とは大きく異なるものですが、これは「金正恩氏の「焦り」」というより、「交渉術の進歩」と言った方が正確でしょう。前述のとおり、コ氏が「哀願」と認識するくだりは、敢えて抑制的な調子を採用することで「被害者としてのワタシ」という構図を描くための演技であり、そして、コ氏が「精一杯のラブコール」と認識する言いぐさは、「寛大さ」を演出しているわけです。「分からず屋のトランプ坊やを諭している」という構図さえも描いているわけです。

コ・ヨンギ氏の記事は以前から一応チェックしていますが、本当に行も行間も読めない人です。彼の分析はあまりにも底が浅すぎます。にもかかわらず、コ氏の記事がそれなりのヒット数を稼いでいるということは、コ氏レベルの認識に留まる人が一定数、存在していることを示しています。おそらく、今回の朝米首脳会談中止に関しても同様でしょう。その点において、コ氏の発言は専門的に考察するにあたっては正面から取り扱う価値のないものであるものの、世論分析にあたっては手っ取り早い手段です。

コ・ヨンギ氏らが思っている以上に、キム・ジョンウン委員長は計算高い戦略家なられています。まだまだ難しい交渉が展開されることでしょう。
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2018年05月25日

朝米首脳会談中止について

朝米首脳会談がアメリカ側の都合により中止になりました。首脳会談というものは、それまでの実務者級協議で詰めた内容を結論として確認し合う「儀式」的な要素が強いものなのだから、会談1か月前になっても、やれ「リビア方式の非核化で」だの「いやトランプ方式になる」だのと、初歩的なレベルでのすり合わせさえも完了していない現時点では、まさにトランプ米大統領がいうように「現時点での会談は不適切」なのかもしれません。ここ最近になってからは朝米双方から「延期ないしは中止」の見立てが出てきていたことを併せて考えると、それほど「驚くべきことはない」のかもしれません

■このタイミングで合同軍事訓練なんてやらなければ良かっただけ――「対話のための圧力」が、対話を台無しにした
アメリカ側は、共和国側について「約束違反」だの「ここ数日応答がなかった」だのと言い立てています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180525-00050079-yom-int
「約束違反」会談中止の要因、北は1週間無反応
5/25(金) 11:57配信
読売新聞

 【ワシントン=大木聖馬、黒見周平】トランプ米大統領は24日朝(日本時間同日夜)、ペンス副大統領やポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)らと協議し、米朝首脳会談中止を決断した。

 ホワイトハウス高官が24日、記者団への説明で明らかにした。

 同高官は、中止を決めた要因として、北朝鮮の「一連の約束違反」を指摘。〈1〉いったん容認した米韓合同軍事訓練に反対した〈2〉南北閣僚級会談を一方的に中止した〈3〉米朝間の事前協議に応じなかった〈4〉核実験場の廃棄で約束した外部専門家の受け入れを認めなかった――などの点を挙げた。

 米側はこの1週間、北朝鮮に何度も連絡を試みたが、北朝鮮は反応しなかったという。
読売記事で挙げられている「4論拠」のうち、「いったん容認した米韓合同軍事訓練に反対した」ことと「南北閣僚級会談を一方的に中止した」は同一理由であり、これは和平局面にあっても北侵演習を展開した米「韓」側に非があるというべきでしょう。外交交渉の背後には軍事力の担保があるといっても、朝米間の圧倒的な軍事力の差は、何も今ここで誇示しなくても明々白々のことです。このタイミングでの北侵演習は「牽制」のつもりだったのかもしれませんが、軽率に過ぎました。とりわけ中国が共和国の後見人としての存在感を強めつつある中での北侵演習は、牽制球ではなく朝中の結束を固める方向に作用したようです。「対話のための圧力」が対話を台無しにしたわけです。

「米朝間の事前協議に応じなかった」ということについては、この期に及んで「リビア方式」を口走る高官が重要な役回りで参加する会談には、「体制維持」が至上命題である共和国側としては参加する意味がありません。詐欺師が同じ手口を持ち出しつつ「この間は騙したけど、今度は本当の儲け話だから!」といって信じる馬鹿がどこにいるというのでしょうか。

「核実験場の廃棄で約束した外部専門家の受け入れを認めなかった」についても、そもそも「核実験場の廃棄」という決断自体が和平志向を明確に示すものです。もともと、米「韓」両国の北侵への抑止力として共和国は核開発をしてきたわけです。元来、「米韓合同軍事訓練」と「北朝鮮核開発問題」はセットの関係です。にもかかわらず、共和国は北侵演習が続く中で核抑止力向上の手段を自ら廃棄したのです。構図としては共和国側が相当譲歩しているわけです。外部専門家を云々言うのであれば、このタイミングで合同軍事訓練なんてやらなければ良かったのです

キム・ゲグァン朝鮮外務省第一次官が言うように会談の中止は非常に遺憾なことです。キム・ゲグァン氏が「歴史的な朝米首脳の対面と会談それ自体が対話を通じた問題解決の第一歩」が述べているとおり、交渉というものは一回や二回程度で妥結するものではありませんが、「とりあえず顔をつないでおく」ことが重要だからです。しかし他方で、絶対に譲ることのできない「体制維持」に照らせば、繰り返しになりますが、まだまだ基本的な非核化プロセスでさえ両国間で共有できておらず、それどころか「リビア方式」を持ち出したり、敢えて合同軍事訓練を直前に強行してくるような不誠実なアメリカ側の一連の言行を鑑みれば、現状では共和国側の立場で一貫している私でさえも「現時点での会談は不適切」と考えます

共和国側の「約束違反」や「ここ数日応答がなかった」ことの原因は、アメリカ側にあるわけです。

■軍事局面になるか、なったとしてどういう結末に至るか
アメリカは朝米会談を一方的に破棄しましたが、まだまだ軍事行動に出るつもりはなさそうです。すくなくとも「斬首作戦」を決行できる段階にはなさそうです。

可能性は低いものの、「限定的な軍事攻撃」はあり得るかも知れません。防空施設や軍事施設に対するピンポイント爆撃はあり得る話です。そしてそれはおそらく、デモンストレーション的な要素の強いものとなることでしょう。しかし、最近のシリアに対する散発的な軍事行動の例を見るに、仮にアメリカが多少の軍事攻撃を共和国側に加えたとしても、「体制維持」という共和国にとっての至上命題への大勢には影響はないと思われます。毒ガスを撒いたという廉で巡航ミサイルを撃ち込まれ空爆を受けたシリアのアサド政権ですが、政権は尚も健在で、それどころか首都;ダマスカスを完全に奪還して勢いを増しています。

ロシアがシリアの後見人になっているように、いま再び中国は共和国にとっての後見人になっています。「限定的な軍事攻撃」以上のことは現時点では敢行しづらいはず。そして、その程度であれば既に共和国も織り込み済みかもしれません。

■一連の対話局面では誰がどんな利益を得たのか
一連の対話局面では誰がどんな利益を得たと言えるでしょうか。

共和国は、もっとも得をしたと言い得ます。共和国は急転直下的な北南和解と朝米和解の局面を演出することによって中国との関係性を再構築する機会を得ました。いままで冷たかった中国が共和国援助に乗り出しています。第1次朝中首脳会談以降、共和国では「急にガソリンの市場価格が下がり始めた」との情報さえ入ってきています。ロシアからの供給かもしれないし、大口の瀬取りが成功したのかもしれませんが、まあ普通に考えれば朝中関係の改善と見るべきでしょう。

米中が足並みを合わせるのは、ここ数年継続的に見られてきた展開でした。朝中関係はここ数年、最悪レベルに冷え込んでいました。それがここ数か月の展開で一気に回復したのです。中国を味方に引き戻したことは、共和国にとって大きな成果です。

共和国は、米「韓」関係にも楔を打ち込むことに成功し、また、新たな「ストーリー」さえも構築できました。以下の記事は興味深い分析を提供しています。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/05/post-10227_2.php
金桂冠は正しい、トランプは金正恩の術中にはまった
2018年5月23日(水)17時23分


(中略)

そもそも金がなぜ米朝首脳会談を呼び掛けたのかについては、専門家の意見は分かれる。しかし金王朝は昔から、自らの存続を脅かす近隣諸国を互いに争わせることを最大の戦略にしてきた。特にアメリカと東アジアの同盟国の関係を弱めること、すなわち米韓、そしてチャンスがあれば日米に溝をつくることを目指してきた。

トランプは金正恩が絶対に受け入れない要求をすることで、この術中にはまった。首脳会談が中止か物別れに終われば、金正恩は、自分は誠実な呼び掛けをし、国際的な基準に沿った手法(段階的で同期的措置)を提案したのに、トランプがむちゃを要求したと主張するだろう。そして韓国とは別途、平和を探ろうとするだろう。それは韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領にとって、むげに断りにくい提案になるかもしれない。


(中略)

今回の騒動で、米朝関係の主導権を握るのは金正恩であることが、これまでになくはっきりした。それは金桂冠の談話にも一貫して読み取れるメッセージだ。北朝鮮は核保有国であり、いかに壮大なざれ言を並べてもそれを変えることは誰にもできないのだ、と。
朝米首脳会談に黄色信号が灯り始めた頃から韓「国」の「政府」は、朝米の仲介役を申し出ていました。日本が「国際社会の結束」などと称してアメポチの誓いを立てたのとは対照的です。依然として韓「国」の「政府」はアメリカ側であるとはいえ、一定の「距離」を取っています。米「韓」関係には間違いなく楔が打ち込まれています。アメリカと東アジアの同盟国の関係を弱めること、すなわち米韓、そしてチャンスがあれば日米に溝をつくることを目指してきた」という目標は果たされています

また、「首脳会談が中止か物別れに終われば、金正恩は、自分は誠実な呼び掛けをし、国際的な基準に沿った手法(段階的で同期的措置)を提案したのに、トランプがむちゃを要求したと主張するだろう」という指摘は、共和国側が自己を正当化し得る新たな「ストーリー」を確保したことを指摘しています。

アメリカについて言えば、「少なくとも損はしていない」と言えます。そもそも極東の小国との関係が改善したところで得られる利益はさほど大きくなく、アメリカ・ファーストの観点に鑑みれば、現状が維持されたところで、それほどの損失にもなりません。アメリカにとって共和国は「生かさず殺さず」くらいが一番よいというのが正直なところでしょう。

その点、以下の記事はなかなか面白いところを突いていると思われます。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180525-00010002-newsweek-int&p=2
米朝会談キャンセルで、得をしたのは中国を味方に付けた北朝鮮
5/25(金) 16:47配信
ニューズウィーク日本版


(中略)

ただ現在の状況が2017年と違うのは、米朝首脳会談にからんで、北朝鮮が中国との関係を改善できたという事実だ。金正恩にしてみれば、それだけで十分にこの米朝会談「騒動」を巻き起こした甲斐があったのかもしれない。そう考えると、今回のすべての騒動は、トランプの失態だったという見方もできるかもしれない。

またこんなシナリオも考えられる。今後の行方を曖昧なままにしてダラダラと時が過ぎる、というものだ。トランプは「この重要な会談について気が変わったら、遠慮なく電話または手紙をくれればいい」と、書簡に記しているが、今後会談が行われるのかどうか、両国関係はどうなるのか、はっきりしない状況が続き、外交的な交渉は停滞し、時間だけが過ぎていく可能性が高い。

筆者はこのシナリオが最もあり得ると考えている。実はそれこそが、多くの利害関係者にとって最も落ち着ける状況なのかもしれない。心の準備ができていないまま米朝会談の騒動に巻き込まれ、置き去りにされていた日本政府も、内心ホッとしているはずだ。


(以下略)
一番困惑しているのは、韓「国」でしょう。そして、そもそも蚊帳の外だった日本は良くも悪くも影響なしといったところでしょう。

■対話局面に戻るか、その条件はどこにあるか
ポンペオ米国務長官が興味深い発言をしています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180525-00000003-reut-kr
北朝鮮、首脳会談巡る問い合わせにここ数日応答せず=米国務長官
5/25(金) 0:48配信
ロイター

[ワシントン 24日 ロイター] - ポンペオ米国務長官は24日、米朝首脳会談の準備に関する米国側からの問い合わせに対し、北朝鮮がここ数日は応答していなかったことを明らかにした。


(中略)

また、北朝鮮のこのところの言動について遺憾を表明。ただ米朝首脳会談の中止は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が「弱いリーダー」であることを示唆するものではないとの認識を示した。
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が「弱いリーダー」であることを示唆するものではない」というのは、会談をご破算にしつつも、キム国務委員長に一定の配慮を示しているとさえ読めるものであり、将来的な会談の芽を明示的に残しているとも言えます

トランプ大統領自身の書簡も、トランプ氏らしからぬ内容であり話題になっています。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180525-00000013-sasahi-int&p=1
米朝首脳会談中止 トランプ節を封印し、金正恩へ投げた“癖玉”とは?〈AERA〉
5/25(金) 11:01配信
AERA dot.


(中略)

 6月12日にシンガポールで開催予定だった米朝首脳会談の中止が明らかになったのは、ワシントンのある米国東部時間で5月24日午前9時46分(日本時間同午後10時46分)。ホワイトハウスが全文公開した、トランプ大統領から金委員長に宛てた1枚の書簡だった。

「最近のあなたの声明で示された激しい怒りやむき出しの敵意」を理由に、首脳会談の開催は「現時点で適切ではない」と断じる内容。首脳会談に向けてここ数日繰り広げられていた、双方の姿勢を批判し合う米朝間の言葉の応酬を受けたものだ。

 ただ、相手の感情を逆なでするようないつものトランプ節は封印され、極めて丁寧な言葉遣いで、慎重に言葉を選んだ跡がうかがえる。米CNNのキャスターが「嫌なことを言われたからという子供のけんかのようなことを理由にしているのに、書簡では全くトランプ大統領らしくない言葉遣いになっている。隠されたメッセージがあるのではないか」といぶかったほどだ。

 書簡でトランプ大統領は、北朝鮮が拘束していた米国人3人を金委員長が5月9日に解放したことにわざわざ触れ、「素晴らしい意思表示でとても感謝している」とも書いた。書簡の締めくくりはこうだ。

「この最も重要な首脳会談に向けて、もし、あなたが考え方を改めるなら、遠慮なく電話や手紙をください。世界、とりわけ北朝鮮は、恒久平和や偉大な繁栄、裕福さを得る素晴らしい機会を失った。失われた機会は歴史上、非常に悲しい時である」

 5月8日にイランとの核合意を一方的に離脱した際の国民向け演説で、イランを徹底的にののしったトランプ大統領とは別人のようだった。

(以下略)
ここ最近の情勢を振り返った時、朝中両国の急接近と、それと軌を一にするキム・ジョンウン委員長の強硬化についてアメリカ側は「習近平の入れ知恵」などと無遠慮などと言い立ててきましたが、@このことと、A今回の会談中止、そしてB「米朝首脳会談の中止は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が「弱いリーダー」であることを示唆するものではないとの認識」の3つを連続的文脈に位置付けて考察すれば、今回のアメリカ側による一方的な会談中止は、共和国がどうこうというよりも、その背後に控える中国の影を意識したものとも言い得るでしょう。つい1か月ほど前まで朝米会談に前向きで、「前のめり」とさえ言い得るくらいだったトランプ政権の急転回が、朝中両国の急接近と時期的に連動しているのです。このことはすなわち、今回のご破算は、「朝米関係の問題」というよりも「朝中チームとアメリカとの関係の問題」に話が発展している証左かもしれません

「対話のための圧力」が思いのほか朝中間の結束を強化する結果となり、思い描いていたゴールに至れないと判断したアメリカ側は、急に「習近平の入れ知恵」などと恨み言を言い始め、「一連の約束違反」を理由にとりあえず6月12日の会談については中止したが、朝中関係が悪化し、自国にとって有利な展開になった場合に備えてキム国務委員長に一定の配慮をしておいたのかも知れないというわけです。

事実としてアメリカ側は、60年以上も戦争状態にある国同士が画期的な会談を行おうとしているときに「この1週間、北朝鮮に何度も連絡を試みたが、北朝鮮は反応しなかった」といった程度のことで会談自体をご破算にしてしまったわけです。さすがに、このことを単に「トランプは本当に堪え性がない奴だ」として片づけるわけには行かず、国際関係と関連付けて考察すべきでしょう。

その意味で今後、朝米間が再び対話局面に戻るか否かは、朝米関係を見るだけでは判断できないと言えます
。朝米関係、米中関係、朝中関係を総合的に判断する必要があるでしょう。おそらく再び米中が接近するとすれば、共和国は北南関係や朝露関係に活路を見出すことでしょうから、予測は困難です。

さすがに米中露が朝鮮半島情勢で足並みを一致させる確率は低いと考えられます。今後も共和国は、各国の国際関係の間隙を縫う形で、したたかに生き延びることと思われます

その点、日本言論界隈の認識レベルの低さは目を覆うばかりです。
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20180525-00000016-nnn-int
米朝会談“中止”…最強カードを切ったワケ
5/25(金) 6:21配信
日テレNEWS24

アメリカのトランプ大統領は北朝鮮の金正恩委員長に書簡を送り、来月12日に予定されていた米朝首脳会談を中止すると伝えたと発表した。首脳会談が中止に至った背景に何があるのだろうか。ホワイトハウスから井上幸昌記者が伝える。

トランプ大統領は「中止」という最強のカードを切って、金委員長に安易な妥協はしないぞ、と最後通告を突きつけたと言える。


(中略)

今後、トランプ政権は、北朝鮮への最大限の圧力を続けるにとどまらず、追加の制裁、さらには武力行使もちらつかせながら、北朝鮮に「降伏」を迫るとみている。

両国とも首脳会談を行いたい意思は変わっていないとみられるが、北朝鮮が対決姿勢を強めた場合は情勢が一気に緊迫する恐れもある。
ここ3週間あまりで急に強硬姿勢を示すようになった共和国の「転向劇」の背景に存在する朝中関係の劇的改善や前掲のポンペオ米国務長官発言を踏まえれば、金委員長に安易な妥協はしないぞ、と最後通告を突きつけた」とは言い難いし、まして北朝鮮に「降伏」を迫」れる立場にアメリカは位置していないと言わざるを得ません。

「日米間の制裁に北朝鮮が屈した」というストーリーに立脚する日本言論界隈では、こういう結論に至ってしまうのかもしれませんが、事実に反することです。

■結局のところ
結局のところ、「『対話のための圧力』が対話を台無しにした」のが一次的な意味での今回の朝米首脳会談の中止の真相です。

しかしその背後には、会談1か月前になっても初歩的なレベルでのすり合わせさえも完了しないくらいに両国の主張は平行線を辿っていたという事実があり、さらにその深層には、一連の対話局面で再構築された国家間の利害関係――とりわけ朝中関係の再構築――が横たわっているわけです。

そして少なくとも現時点では、関係各国にとって最も利益になる展開は、「このままダラダラと時が過ぎる」ことであるわけです。

ふたたび情勢が朝米会談に傾くとすれば、それは朝中関係の動向がカギを握っていると言えるでしょう。

仮にアメリカが軍事オプションを選択するとしても、それは「限定的な軍事攻撃」以上のものにはなり得ないが、シリアの例を見れば、その程度であれば体制維持の大勢には影響しないと考えられるところです。

■とまあ、ここまで書いてきて
とまあ、ここまで書いてきて、まだ速報レベルですが、トランプ大統領が「6月12日の開催も、まだあり得る」などと口走り始めました。どっちだよ。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018052501389
6月12日会談「あり得る」=北朝鮮と再調整模索−米大統領

 【ワシントン時事】トランプ米大統領は25日、中止を24日に通告した米朝首脳会談に関し、当初予定されていた6月12日の開催も「まだあり得る」と述べ、北朝鮮側と接触を続けていることを明らかにした。ホワイトハウスで記者団に語った。大統領は「彼らは(会談を)とても望んでいるし、われわれも行いたい」とも表明。米政府は、会談の再調整を模索しているもようだ。

 トランプ氏はこれに先立ちツイッターで、北朝鮮側が出した対話継続を求める談話について、「温かく、建設的な談話を受け取るのは非常に良いニュースだ」と評価した。ただ、今後の対応については「時がたてば分かる!」とするにとどめた。

 北朝鮮の金桂冠第1外務次官は25日、米側からの会談中止の通告を受け、「われわれはいつでも、どんな方式であれ、向かい合って問題を解決していく用意がある」と語り、首脳会談は「切実に必要だ」と訴えていた。

 これに対し、トランプ氏はツイートの中で「どこに向かうかすぐに分かるだろう。長く続く繁栄と平和に向かうことを希望する」と応じた。

 トランプ氏は24日、首脳会談中止を発表した際、記者団に「予定されていた会談を実施することや後日開催することも可能だ」と述べ、会談の再設定に含みを持たせていた。
トランプ大統領は揺さぶっているつもりなのかもしれませんが、前掲のキム・ゲグァン朝鮮外務省第一次官の「遺憾談話」、そして前掲News Week誌の「首脳会談が中止か物別れに終われば、金正恩は、自分は誠実な呼び掛けをし、国際的な基準に沿った手法(段階的で同期的措置)を提案したのに、トランプがむちゃを要求したと主張するだろう」分析を踏まえれば、トランプ大統領が「北朝鮮側が出した対話継続を求める談話を評価した」というよりも、衝動的に交渉テーブルの椅子を蹴ってみたことを後悔しているという方が正確かもしれません

仮に6月12日に首脳会談が開かれたとしても、「顔合わせ・顔つなげ」くらいにしかならないでしょうが、依然として情勢を見守る段階であると言うほかありません。
posted by s19171107 at 23:58| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする

2018年05月20日

ここまで話を膨らませられるのは、ある意味すごい

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180520-00007455-bunshun-soci
東京駅の自販機ストライキは、なぜ「共感」を得たのか
5/20(日) 7:00配信

 去る5月3日、JR東京駅で自動販売機の補充業務を担当しているサントリーグループの自動販売機オペレーション大手・ジャパンビバレッジ東京の従業員がストライキを実施した。

(中略)
 ストライキに先行して行われた順法闘争、ストライキの背景、当日の簡単な報告については、すでに以前の記事で紹介しているが、結論から言えば、非常に大きな「共感」が寄せられている。ストライキと言えば、利用者から「迷惑」だと感じられることがほとんど。なぜ今回のストライキはこれほどの反響を得たのだろうか。

 ストライキに対する、東京駅の利用者、インターネット、組合員、そして会社の反応をそれぞれ紹介しながら、ストライキへの支持が広がった背景を考えてみたい。

(中略)
 なかには、あらかじめストライキの情報を聞きつけていたらしく、一眼レフのカメラを構えて自販機を撮影する男性や、台車に括り付けられたユニオンの注意書きを撮影して、「応援します!」「飲み物はNewDaysで準備済み」とツイートする人もいた。

ジャパンビバレッジ側は「スト破り」要員を招集
 ジャパンビバレッジ側は当日、普段の倍以上の人数になるように、人員を各営業所から「スト破り」要員として招集していたため、長時間「売切」が放置されていたわけではない。とはいえ、利用者の多い箇所では、昼過ぎには再び「売切」ランプが続々と点りはじめ、しばらくしてから補充が追いつくという、ストライキの影響とスト破りの「いたちごっこ」が続いている状態だった。

 さらに、インターネット上の反響は大きかった。冒頭に紹介した記事もYahoo! Japanのトップページに上がり、「ジャパンビバレッジ東京」はヤフーリアルタイム検索で話題のキーワードのランキング2位にまで上り詰めた。

 ツイッター上では、年齢層や政治的な立場を超えてストライキへの共感・応援の声が見られた。安倍政権反対派も支持派も両方が応援していたし、特に注目したいのが、政治的な発言をほとんどしていない若者も好意的に言及し、ほぼ全てが支持していたことだ。日本でストライキがこれほど大衆的な支援を得られたことは、戦後の歴史を見ても画期的と言えるのではないだろうか。

(中略)
労働組合に期待するしかない時代に
 最後に、なぜ今回のストライキがこれほどまでに支持されたのかを考察してみたい。「東京駅」というインパクト、「自販機」の身近さなど、特徴的なポイントが揃っていることもある。しかし、それだけではない。私はここで、終身雇用や年功賃金を前提とした戦後日本社会の変容を指摘したい。

 従来の日本社会では、企業に正社員として就職し、我慢して働きさえすれば、いずれ昇進や昇給が待ち受けていると考えられてきた。教育、住居、年金の問題も、年齢とともに上がる年功賃金が保障してくれていた。こうした特定の企業の正社員を、労働組合が守っていたのである。

 しかし、いまやこのような労務管理から外れた労働者が、一つの新しい階層を形成し始めている。正社員・非正規社員を問わず、昇進・昇格もほとんどなく、年功賃金も保障されない働き方だ。長時間労働を我慢しても報われることはない。転職しても、この働き方から抜け出すことはできない。

 ジャパンビバレッジでも、年齢に応じて上がる年齢給があるが、それも35歳で打ち止めだ。それ以上になると、ごく一部の労働者以外は昇給・昇格することはない。

 そうした中で働く若者たちにとって、もはや特定の会社に期待するのではなく、どこの会社で働いていようとも、労働組合で闘うことによって、法律を守らせ、賃金を上げ、残業時間を短くして、普通に生きられることを求める労働者の姿が、共感を得る理由だったのではないだろうか。

(以下略)
■非常に大きな危機感を持たざるを得ない総括
5月3日の東京駅自販機補充ストについて、労組運動家の今野晴貴氏が論じています。当該事案については、当ブログでも4月25日づけ「消費者直撃の労働運動が正当化される例外的ケースについて」と5月4日づけ「歴史的経緯と経済理論的効果を踏まえた労働市場活用型の労働運動戦術」で、基本的には好意的(共感をもっている)立場を表明したものの、幾つかの「視点の欠落」を指摘しました。

すなわち、ほぼ同時期に敢行された岡山県の両備グループの「集改札スト」と比べるとき、消費者直撃の方法論である点においてスマートさに欠けているのです。一企業の労使はお客様(消費者)との関係においては「呉越同舟」の関係にあるという事実を直視し、「誰を敵に回してはならないか」ということを十分に承知した上で戦術を練るのであれば、「利用者には影響を及ぼさない一方で経営側には打撃となり、その要求を迫る」というプランを取るべきなのです。また、消費者直撃の方法論を取ったにも関わらず、そのことに対する言及がほとんど見られない点において、今野氏の意識が労使対決にしか向かっていない、視野が限定されていることが推察されます。5月4日づけ記事の末尾で私は、「「視野の限定」は、現代消費社会において労働運動を展開してゆく上で泣き所になりかねないリスクであると言えます」と危惧しました。

この危惧は、
今回の「結論から言えば、非常に大きな「共感」が寄せられている」という本文中のくだりで、ますます増幅されたというのが率直な感想です。

インターネット・SNS上の反応を論拠として挙げている今野氏ですが、これらの媒体で東京駅のストに言及していた人たちは、現場にいなかった人たち、当事者ではなかった人たちがほとんどであると見てよいと思われます。つまり、東京駅の自販機が品切れ状態になっていたとしても、とくに自分自身の不利益にはならない人たちの「高みの見物」であるわけです。

消費者直撃型のストライキの危険性は、まさに消費者の不利益になる事態を労組側が生み出すことに対する反発です。今回のストに対して、東京駅以外の場所から「共感」のツイートを寄せていた人たちも、いざ自分自身がストライキの影響を直撃するような状況におかれたとき、同様に「共感」しつづけるでしょうか? 国労が精力的に順法闘争を展開していた時代――労働運動に対する社会的理解も大きく、革新政党が元気だった1960〜70年代――でさえも、消費者(国鉄線乗客)たちは最終的には怒りを爆発させました。その時代よりも階級的連帯が弱まっている、平たく言えば「自分勝手な奴らが増えている」時代においては、消費者たちの「閾値」も相応に低くなっていると推察できます

東京駅の自販機を巡るストが自分自身の不利益にはならない人たちの「高みの見物」を取り上げて「非常に大きな「共感」が寄せられている」などとする今野氏の総括に私は、非常に大きな危機感をもつものです

■実は自販機の存在自体が乗客にとって死活的に重要ではなかった?
では、当日のストライキ決行時間帯に東京駅で飲み物を求めていた人たち、現場にいた当事者たちはどういう反応を見せたのでしょうか? 記事中に奇しくも答えが記されています。すなわち、自販機で飲み物を購入できなかった消費者たちは「飲み物はNewDaysで準備」したのでした。それどころか、「ジャパンビバレッジ側は当日、普段の倍以上の人数になるように、人員を各営業所から「スト破り」要員として招集していたため、長時間「売切」が放置されていたわけではな」かったとのこと。要するに、現場にいた当事者たちもジャパンビバレッジ側のスト破り行為と、NewDaysの「スト破りへのアシスト」によって、特に不利益を被らかなったのです。

いざストを打ってみた、消費者が困り果てて「我々の迷惑にもなるから、早く会社側は労働者たちに譲歩してやれよ!」という声が上がってくるかと思いきや、そもそも自分たちの仕事は「あれば便利、なくても如何にかなる」くらいでしかなかった・・・これでは「呉越もろとも沈没」の展開です。ストの成果を誇っている場合ではありません

このことについて、私も、下記の通りヤフコメ(インターネット・SNS)の反応を論拠としたいと思います。
SNSという共感を簡単に分かりやすく表すことができる手段が出てきたからっていうのがあるんだろうけど。
自販機が売り切れでも別に困らないから、っていうのが大きいんでは?
そういう意味では、従業員が酷使されて補充し続けるのはそこまで必要ではないってことだよね。
消費者に影響がないからストライキしても共感されやすい。
東京駅なら飲み物は他の売店 コンビニ 等で買えますしね。
ストライキに共感したというより、自販機なくても、どうにかなるわ。って人も多かったのでは?
これが東京駅発の鉄道がストライキなら大変な事になってたと思いますよ。それがどんな理由であれ共感する人はいないと思いますし、結局は自分に影響があるかないかでしょ

■キャンペーン性だけが高いスト
今回のストは、「キャンペーンとしては耳目を集めたものの、罷業行為そのものによって何か成果を得たわけではなかった」と総括せざるを得ないものです。今野氏は「日本でストライキがこれほど大衆的な支援を得られたことは、戦後の歴史を見ても画期的と言えるのではないだろうか」などと成果を高らかに宣言していますが、これほどキャンペーン性だけが高いストは前代未聞であるという点でこそ「画期的」だと言わざるを得ません。

もちろん、以前から述べているとおり、現代消費社会は「評判経済」である点において、キャンペーン性の高い労組運動は現代的な運動モデルである言ってよいと私は考えています。ワタミやすき家が代表例であるように、労組運動そのものが何かを変えるのではなく、それがキャンペーンとなって人々の耳目を集めた結果、自社の評判を重視する企業側が重い腰をあげるという展開です。引用はしませんでしたが、本件を巡ってはジャパンビバレッジ側には「取引先からのプレッシャー」が掛けられている模様です。これだけチャネルが多様化した時代において、労働者が結束して商品供給を遅滞させることは現実的には困難になりつつある昨今では、キャンペーン性の高い労組運動を展開し、企業の社会的評判を傷つけるという方法論が浮上します。これなら、組合の組織率が低くても宣伝が上手ければ運動の効果が出るかもしれません。

■また筆が滑った?
労働組合に期待するしかない時代に」の項にいたると、もはやどういう根拠があってそういう結論が出てきたのか分からないアジテーションが始まります。

終身雇用や年功賃金を前提とした戦後日本社会の変容」の結果、「いまやこのような労務管理から外れた労働者が、一つの新しい階層を形成し始めて」いるので、「労働組合に期待するしかない時代」が到来したとした上で、「もはや特定の会社に期待するのではなく、どこの会社で働いていようとも、労働組合で闘うことによって、法律を守らせ、賃金を上げ、残業時間を短くして、普通に生きられることを求める労働者の姿が、共感を得る理由だったのではないだろうか」と述べる今野氏。ここまで話を膨らませられるのは、ある意味すごい。

何やら「時代の変化」を描いているつもりになっているようですが、日本の労働者階級の多数派は今も昔も、労組が存在しない中小企業の労働者。多数派たる無労組の中小労働者にとっては「時代」は変わっていません。労組が存在する企業のことしか頭にないのでしょうか? 労組が存在する大企業でさえも、労組の組織率は長期低落傾向の末に依然として低空飛行状態。また、今回の一件についても、結局のところジャパンビバレッジ側の火消し的なスト破りで「大ごと」にはならなかった点において、あまり大きな運動には育っていないことが推察されます。

いったいどういう理由があって「労働組合に期待するしかない時代に」なったと言うのでしょうか?

今野氏の記事を私は以前から継続的に読み込んでいますが、10人前後のミニ労組を歴史的画期と位置付けたりする癖が彼にはあります。本件についても、慎重に記事を読み込むと、ストに参加した労働者の人数が上手くボカされています(人数が多ければよくて、少ないとダメというわけではないものの・・・)。今回も興奮のあまり、筆が滑っているんでしょうかね・・・?
posted by s19171107 at 09:26| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする

2018年05月17日

筋を通し公開的に言質を取った共和国

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180516-00000005-jij-kr
北朝鮮、南北閣僚級会談を中止=「米朝」へ揺さぶり―合同訓練に反発、急きょ通告
5/16(水) 4:50配信
時事通信

 【ソウル時事】北朝鮮国営の朝鮮中央通信は16日、米韓空軍が開始した航空戦闘訓練「マックス・サンダー」を「軍事的挑発」だと強く非難、16日に予定していた韓国との閣僚級会談を中止せざるを得なくなったと伝えた。

 また米国に対して「朝米首脳対面(会談)の運命について熟考しなければならない」と警告。金桂冠第1外務次官も談話を発表し、米が一方的な核放棄だけを強要しようとするなら、「朝米首脳会談に応じるかどうか再考せざるを得ない」と表明し、6月12日の米朝首脳会談の取りやめを示唆し、揺さぶりを掛けた。


(以下略)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180516-00000052-jij-kr
米朝首脳会談「再考」も=核放棄だけ強要に警告―北朝鮮高官
5/16(水) 12:05配信
時事通信

 【ソウル時事】16日の朝鮮中央通信によると、北朝鮮の金桂冠第1外務次官は談話を発表し、「トランプ米政権が一方的な核放棄だけを強要しようとするなら、われわれはそのような対話にもはや興味を持たないだろう」と警告、「朝米首脳会談に応じるかどうか再考せざるを得ない」と表明した。
 
 一方で金氏は、「朝米関係改善のため誠意をもって朝米首脳会談に臨む場合、相応な対応を受けることになる」とも語った。6月12日に開催される米朝首脳会談を前に、トランプ政権から譲歩を引き出すための交渉戦術の一環とみられる。

 北朝鮮で長年対米外交を統括している金氏は、「われわれは、朝鮮半島の非核化の用意を表明し、そのためには米国の敵視政策と核脅威による恐喝を終わらせることが先決条件になると数度にわたって明言した」と強調。しかし、「米国はわが国の寛容な措置を弱気の表れと誤解し、彼らの制裁と圧迫攻勢の結果だと主張している」と批判した。

 ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)らが核放棄を先行させる「リビア方式」や「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」の実現を主張していることについて、金氏は「対話を通じて問題を解決するのでなく、大国に国を委ねて崩壊したリビアやイラクの運命をわが国に強要しようとしている」と反発した。

 また、「米国はわれわれが核を放棄すれば、経済的補償や恩恵を与えると騒いでいるが、われわれは米国に期待して経済建設を進めたことは一度としてなく、今後もそのような取引を決してしないだろう」と語った。
共和国にとっては体制維持が至上命題である以上は、いったん「丸腰」になることを要求する「リビア方式」は受け入れることはできないものです。また、先の朝鮮労働党中央委員会全員会議でも改めて提唱されたとおり、自力更生・自給自足を掲げている共和国においては、「米国に期待して経済建設を進めたことは一度としてな」いわけです(関連して、最近、朝鮮中央通信をチェックしていると、反帝国主義・非同盟主義の意義が再度強調されつつある点も情勢を示していると言えるでしょう)。

その点において、キム・ゲグァン同志の談話は、共和国が以前から述べていることを繰り返しているものであると位置づけることが出来、そしてこのことはすなわち、朝米首脳会談を巡っては依然として調整中であることを示していると言えるでしょう。

関係諸国の反応をザッと見ておきましょう。まず、アメリカ。興味深い反応を示しています。一部論者が主張するような「軍事行動を正当化するためのアリバイ作り」などではなく、対話を求めていると見て取れます。そしてその結果、重要な言質を取ることに成功しています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180517-00000001-cnippou-kr
ホワイトハウス「非核化、リビア式ではなくトランプ式でいく」
5/17(木) 6:51配信
中央日報日本語版

非核化の道に順調に入るかのようだった北朝鮮が16日、米国にリビア式の一方的核廃棄の強要は受け入れられないと反発し、韓国には韓米合同軍事演習を問題にした。ホワイトハウスはこれについて「リビア式モデルは使っていない」というメッセージを北朝鮮に出した。


(中略)

これに対してサラ・ハッカビー・サンダース報道官は16日(現地時間)、「リビアモデルは我々が採用中のモデルではない」としながら「(私たちが進めているのは)トランプモデルだ」と述べた。ボルトン補佐官が既に言及した非核化方式を異なるものになる可能性があることを示唆した発言だとみられる。ボルトン補佐官はこれに先立ち、FOX(フォックス)ニュースに出演して「米朝首脳会談の成功は依然として希望的」としながら「大変な交渉になるだろうと考えて準備してきた」と述べた。また「もし会談が開催されないなら、我々は最大の圧迫戦略を継続していく」と付け加えた。青瓦台(チョンワデ、大統領府)は17日午前7時、国家安全保障会議(NSC)常任委会議を開く。
まず、「リビア方式」について「リビアモデルは我々が採用中のモデルではない」という発言を引き出しました。また、「もし会談が開催されないなら、我々は最大の圧迫戦略を継続していく」というくだりは、見方を変えれば、「6月の会談がまとまらなくても、ただちに軍事行動には移らない」と言い得ることが出来ます。日本の言論空間では、もう1年以上も「斬首作戦決行前夜」の騒ぎですが、まだそういった状況ではないと言えるでしょう。公開の場で言質を取った形です。

韓「国」も、たまには「役に立つ」動きを見せました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180517-00000053-reut-kr
韓国、米朝首脳会談巡り「仲介役」果たす用意=当局者
5/17(木) 13:29配信
ロイター

[ソウル 17日 ロイター] - 韓国大統領府の当局者は17日、6月に予定される米朝首脳会談を前に両国の間で「ある種の立場の相違」が生じているようだとし、韓国として仲介役を果たす考えであることを明らかにした。

(以下略)

さらに、下記のような記事が出てくる点、今回の談話は外交的に成功の部類に入るのかもしれません
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180517-36933838-bloom_st-bus_all
ボルトン氏が米朝首脳会談開催を危うくする恐れ−発言に北朝鮮反発
5/17(木) 15:02配信
Bloomberg

北朝鮮の非核化では「リビア方式」を採用すべきだとするボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)の発言が北朝鮮の反発を招き、それも一因となって同国は来月の米朝首脳会談を中止する可能性を示唆した。

非核化を段階的ではなく一気に進める方式を受け入れたリビアのカダフィ大佐の独裁政権はその後崩壊し、大佐は米国が支援する反カダフィ勢力によって殺害された。

北朝鮮はこうした歴史を熟知しており、金桂冠第1外務次官は16日、北朝鮮はボルトン氏に「嫌悪」を感じているとし、「世界は北朝鮮が、悲惨な運命をたどったリビアでもイラクでもないことを十分過ぎるほど分かっている」と述べた。国営朝鮮中央通信(KCNA)が同次官の談話を伝えた。

ホワイトハウスは16日、ボルトン氏の発言とは距離を置いたものの、専門家は米朝首脳会談が数週間後に迫る中で、ボルトン氏がなぜこのような無神経な比較をしたのか疑問を抱いている。

核廃絶に取り組むプラウシェアーズ財団のジョー・シリンシオーネ代表はボルトン氏のコメントについて、「これは全く的外れだ。対北朝鮮外交は非常に順調だが、ボルトン氏が歯車を狂わせた」と指摘した。


(以下略)

史上初の朝米首脳会談予定日まであと1か月弱。まだまだ、朝米両国の根本的国益に照らしながら、事前の「取引」の行方を慎重に見守るべき段階です。
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2018年05月13日

朝鮮労働党全員会議で提起された経済建設路線を読む

さる4月20日に開催された朝鮮労働党中央委員会第7期第3回全員会議については、目前に迫った朝米首脳会談との関係からか日本国内では「核実験場廃棄宣言」にばかり注目が集まりましたが、やはり最大の注目点は《사회주의경제건설에 총력을 집중하여 우리 혁명의 전진을 더욱 가속화하자!》(社会主義経済建設に総力を集中して、我が革命の前進を加速しよう!)にあると言うべきでしょう。

もちろんこの決定は、昨年11月末の核武力完成宣言以来の必然的展開です。国防力強化と経済建設を同時進行させるという党の並進路線のうち、前者の目標が達成されたのであれば、後者に集中するというのは論理的に当然のことです(この一連の動きの中で「何故」という問いを立てるとすれば、「何故、昨年11月末のタイミングで核武力完成宣言をしたのか」だけでしょう)。社会主義企業責任管理制や集団主義的競争の定式化、あくまでも国内生産力の増強といった形で社会主義経済の再建を模索されてきたキム・ジョンウン委員長ですが、《사회주의경제건설에 총력을 집중하여 우리 혁명의 전진을 더욱 가속화하자!》というスローガンの下、さらにそのスピードを加速なさることを期待いたします。

そこで今回は、朝鮮中央通信の記事をもとにキム・ジョンウン委員長が構想なさる経済建設の現時点での基本方針について読み込もうと思います。

まずは、朝鮮労働党中央委員会第7期第3次全員会議開催を報じる4月21日づけ朝鮮中央通信配信について。日本語訳は当方によります。
http://www.kcna.co.jp/calendar/2018/04/04-21/2018-0421-001.html
조선로동당 중앙위 제7기 제3차전원회의-김정은위원장 지도
朝鮮労働党中央委員会第7期第3次全員会議――キムジョンウン委員長が指導

(평양 4월 21일발 조선중앙통신)조선로동당 중앙위원회 제7기 제3차전원회의가 주체107(2018)년 4월 20일 혁명의 수도 평양에서 진행되였다.
(ピョンヤン 4月21日発 朝鮮中央通信)朝鮮労働党第7期第3次全員会議がチュチェ107(2018)年4月20日に革命の首都ピョンヤンで開かれた。

(中略)

조선로동당 위원장동지께서는 《사회주의경제건설에 총력을 집중하여 우리 혁명의 전진을 더욱 가속화하자!》라는 전투적구호를 높이 들고 혁명적인 총공세, 경제건설대진군을 힘차게 벌려나가야 한다고 말씀하시였다.
朝鮮労働党委員長同志は、「社会主義経済建設に総力を集中して、我が革命の前進を加速しよう!」という戦闘的スローガンを高く掲げ、革命的な総攻勢、経済建設大進軍を力強く展開していかなければならないとおっしゃった。

새로운 전략적로선을 실현하기 위한 투쟁의 당면목표는 국가경제발전 5개년전략수행기간에 모든 공장, 기업소들에서 생산정상화의 동음이 세차게 울리게 하고 전야마다 풍요한 가을을 마련하여 온 나라에 인민들의 웃음소리가 높이 울려퍼지게 하는것이라고 밝히시였다.
新しい戦略的路線を実現するための闘争の当面の目標は、国家経済発展5カ年戦略の実行期間に、すべての工場、企業所で生産正常化の機械音が激しく響くようにして、田野に豊かな秋を調え、全国に人民の笑い声が高らかに響くようにすることだと明らかにされた。

전망적으로는 인민경제의 주체화, 현대화, 정보화, 과학화를 높은 수준에서 실현하며 전체 인민들에게 남부럽지 않은 유족하고 문명한 생활을 마련해주는것이라고 하시였다.
展望としては、人民経済の主体化、現代化、情報化、科学化を高いレベルで実現し、全人民に何不自由なく満ち足りた文明的な生活を調えることであるとおっしゃった。

조선로동당 위원장동지께서는 당과 국가의 전반사업에서 경제사업을 우선시하고 경제발전에 나라의 인적, 물적, 기술적잠재력을 총동원할데 대한 문제를 비롯하여 새로운 전략적로선을 철저히 관철하기 위한 과업과 방도를 밝혀주시였다.
朝鮮労働党委員長同志は、党と国家の全般事業で経済事業を優先し、経済発展に国の人的、物的、技術的潜在力を総動員するという問題をはじめ、新しい戦略的路線を徹底して貫徹するための課題と方途を明らかにしてくださった。

자력갱생정신과 과학기술은 강력한 사회주의경제건설의 힘있는 추동력이라고 하시면서 모든 부문, 모든 단위에서 자력갱생, 자급자족의 구호를 높이 들고 과학기술에 철저히 의거하여 자강력을 끊임없이 증대시키며 생산적앙양과 비약을 일으켜나가야 한다고 말씀하시였다.
自力更生の精神と科学技術は、強力な社会主義経済建設の力ある推進力であるとして、すべての部門、すべての単位で、自力更生・自給自足のスローガンを高く掲げ、科学技術に徹底的に依拠して自彊力を絶えず増大させ、生産的高揚と飛躍を起こして行かなければならないとおっしゃった。

조선로동당 위원장동지께서는 경제건설에 총력을 집중할데 대한 새로운 전략적로선을 철저히 관철하자면 당조직들의 역할을 결정적으로 높여야 한다고 지적하시였다.
朝鮮労働党委員長同志は、経済建設に総力を集中することについて、新たな戦略的路線を徹底的に貫徹するためには、党組織の役割を決定的に高めなければならないと指摘された。

당조직들에서 모든 일군들과 당원들과 근로자들에게 당의 새로운 전략적로선의 진수와 정당성을 깊이 인식시키고 그 관철에로 힘있게 불러일으키기 위한 조직정치사업을 진공적으로 벌려 경제사업에서 실질적인 성과들이 이룩되도록 하여야 한다고 말씀하시였다.
党組織のすべての活動家と党員、勤労者に党の新たな戦略的路線の神髄と正当性を深く認識させ、その貫徹へと力強く呼び起こすための組織政治事業を積極的に広げ、経済事業で実質的な成果が達成されるようにしなければならないとおっしゃった。

조선로동당 위원장동지께서는 내각을 비롯한 경제지도기관들에서 경제사업의 주인으로서의 위치를 바로 차지하고 급속한 경제발전을 이룩하기 위한 작전과 지휘를 치밀하게 짜고들며 모든 부문, 모든 단위들에서 당의 경제정책을 관철하기 위한 내각의 통일적인 지휘에 무조건 복종하여야 한다고 말씀하시였다.
朝鮮労働党委員長同志は、内閣をはじめとする経済指導機関において、経済事業を主人としての位置に正しく占めさせ、急速な経済発展を達成するための作戦と指揮を緻密に組みつつ、すべての部門、すべての単位が党の経済政策を貫徹するための内閣の統一的な指揮に無条件服従しなければならないとおっしゃった。

조선로동당 위원장동지께서는 우리 당의 병진로선이 위대한 승리로 결속된것처럼 경제건설에 총력을 집중할데 대한 새로운 전략적로선도 반드시 승리할것이라고 하시면서 모두다 우리 혁명의 승리적전진을 다그치기 위하여 용기백배하여 힘차게 싸워나가자고 호소하시였다.
朝鮮労働党委員長同志は、我が党の並進路線が偉大な勝利のうちに終わったように、経済建設に総力を集中することについて、新しい戦略的路線も必ず勝利するだろうとして、我が革命の勝利的前進を早めるために皆で力強く戦って行こうと訴えられた。

(以下略)

続いて、4月30日挙行の連席会議に関する報道。こちらの日本語訳も当方によるものです。
http://www.dprktoday.com/index.php?type=8&no=32456
조선로동당 중앙위원회 제7기 제3차전원회의에서 제시된 새로운 전략적로선을 철저히 관철하기 위한 당, 국가, 경제, 무력기관 일군련석회의 진행
朝鮮労働党第7期第3次全員会議で提示された新しい戦略的路線を徹底的に貫徹させるための党、国家、経済、武力機関活動家連席会議が開かれる

경애하는 최고령도자 김정은동지께서 당중앙위원회 제7기 제3차전원회의에서 제시하신 당의 새로운 전략적로선을 철저히 관철하기 위한 당, 국가, 경제, 무력기관 일군련석회의가 4월 30일 평양에서 진행되였다.
敬愛なる最高領導者キムジョンウン同志が党中央委員会第7期第3次全員会議において提示なさった党の新しい戦略的路線を徹底的に貫徹するための党、国家、経済、武力機関活動家連席会議が4月30日にピョンヤンで開かれた。

(中略)

박봉주동지는 인민경제 선행부문, 기초공업부문을 정상궤도우에 올려세우기 위한 사업에 선차적인 힘을 넣어 국가경제발전 5개년전략수행의 세번째 해인 올해의 전투목표를 무조건 수행하는것과 함께 전망적으로는 인민경제의 주체화, 현대화, 정보화, 과학화를 높은 수준에서 실현하기 위한 부문별, 중요단위별과업들에 대하여 언급하였다.
パク・ボンジュ同志は、人民経済の先行部門、基礎工業部門を正常な軌道に引き上げるための事業に優先的に力を入れ、国家経済発展5カ年戦略遂行の3年目である今年の戦闘目標を無条件実行するとともに、将来の展望としては人民経済の主体化、現代化、情報化、科学化を高いレベルで実現するための部門別、重要単位別の課題について言及した。

모든 부문, 모든 단위에서 자력갱생, 자급자족의 구호높이 경제의 자립성과 주체성을 강화하고 과학기술과 경제의 일체화를 실현하며 나라의 경제구조를 완비하고 주체사상을 구현한 우리 식 경제관리방법을 전면적으로 확립할데 대하여 그는 말하였다.
すべての部門、すべての単位で自力更生・自給自足のスローガンを高く掲げ、経済の自立性と主体性を強化し、科学技術と経済の一体化を実現し、国の経済構造を完備してチュチェ思想を具現した朝鮮式の経済管理方法を全面的に確立することについて彼は述べた。

박봉주동지는 경제지도기관 일군들이 우리 혁명의 전진속도를 더욱 가속화하기 위한 오늘의 보람찬 투쟁에서 맡겨진 영예로운 사명과 임무를 다해나갈데 대하여 강조하였다.
パク・ボンジュ同志は、経済指導機関の活動家が我が革命の前進速度をさらに加速するため、今日の誇らしい闘争で任された栄誉ある使命と任務を果たしていくことについて強調した。

첫째 안건에 대한 보고가 끝난 다음 내각부총리들인 김덕훈동지, 임철웅동지, 고인호동지, 리주오동지, 동정호동지, 로두철동지가 담당부문의 사업에서 이룩된 성과와 나타난 결함들을 분석총화하고 사회주의경제건설에 총력을 집중하기 위한 방도들을 제기하는 토론들을 하였다.
第一議案の報告が終わった後、内閣副総理であるキム・ドクフン同志、イム・チョルウン同志、コ・インホ同志、リ・ジュオ同志、トン・ジョンホ同志、ロ・ドゥチョル同志が担当部門の事業で成し遂げられた成果と顕れた欠陥を分析総括し、社会主義経済建設に総力を集中するための戦略を提起する議論をした。

토론자들은 경제지도일군들이 자기 단위의 사업을 전적으로 책임지는 립장에서 혁신적인 안목을 가지고 경제작전과 지휘를 완강하게 전개해나갈 때 당의 구상과 의도를 관철할수 있다는 교훈을 찾게 되였다고 말하였다.
討論者たちは、経済指導活動家が自分の単位の事業に全面的に責任を負う立場で革新的な見識を持って経済作戦と指揮を強力に展開していったとき、党の構想と意図を貫徹することができるという教訓を見いだせたと語った。

내각이 경제사령부로서의 책임과 역할을 다하며 국가경제발전 5개년전략을 집행하기 위한 년차별계획을 현실성있게 세우고 과학기술에 의거하여 자강력을 끊임없이 증대시켜 생산적앙양과 비약을 일으켜나갈데 대하여 그들은 언급하였다.
内閣が経済司令部としての責任と役割を果たし、国家経済発展5カ年戦略を執行するための年次別計画を現実的に立て、科学技術に基づいて自彊力を絶えず増大させて生産的高揚と飛躍を起こしていくことについて、彼らは言及した。

토론자들은 《사회주의경제건설에 총력을 집중하여 우리 혁명의 전진을 더욱 가속화하자!》라는 전투적구호를 높이 들고 당중앙위원회 제7기 제3차전원회의에서 제시된 새로운 경제전략목표들을 반드시 점령할 결의를 피력하였다.
討論者たちは、「社会主義経済建設に総力を集中して、我が革命の前進を加速しよう!」という戦闘的スローガンを高く掲げ、党中央委員会第7期第3回全員会議で提示された新たな経済戦略目標を必ず達成する決意を表明した。
両記事を総和すると、「経済建設総力集中」路線の要点は、(1)短期的には、国家経済発展5カ年戦略の実行期間中にすべての工場と企業所で生産を正常化すること、(2)長期的には、人民経済の主体化、現代化、情報化、科学化を高いレベルで実現することであると言えます。そのためのプランとして、(A)党と国家の全般事業で経済事業を優先し、経済発展に国の人的、物的、技術的潜在力を総動員すること、(B)経済建設に関して内閣が統一的な指揮をとり(かつては党や軍の横槍的介入が甚だしかった)、それを党組織を通じて徹底的に実施することが掲げられています。

この戦略の思想的バックボーンとして「自力更生の精神」と「科学技術」が据えられている点もチェックしておく必要があるでしょう。具体的には、「自力更生の精神と科学技術は、強力な社会主義経済建設の力ある推進力であるとして、すべての部門、すべての単位で、自力更生・自給自足のスローガンを高く掲げ、科学技術に徹底的に依拠して自彊力を絶えず増大させ、生産的高揚と飛躍を起こして行かなければならない」というくだりと、「すべての部門、すべての単位で自力更生・自給自足のスローガンを高く掲げ、経済の自立性と主体性を強化し、科学技術と経済の一体化を実現し、国の経済構造を完備してチュチェ思想を具現した朝鮮式の経済管理方法を全面的に確立する」というくだりです。振り返ってみれば、キム・ジョンウン委員長が3月に訪中した際、中国の科学技術関連施設を視察なさったことは、この新戦略の伏線だったと言うべきでしょう。

自力更生・自給自足がスローガンに盛り込まれ、あくまでも「チュチェ思想を具現した朝鮮式の経済管理方法」を模索している点に留意すべきです。韓「国」のハンギョレ紙は、23日づけ記事で、「「金委員長が中国の改革開放を率いたトウ小平の道を歩こうとしている」という評価もあるが、まだ断定する状況ではない。金委員長は「新しい革命的路線の基本原則は自力更生」と強調することにより、少なくとも形式論理上では全面的改革開放と距離を置いた。」と論評していますが、現時点では正しい認識であると言えるでしょう。「キム・ジョンウンが北朝鮮のケ小平になる」という言説は、現時点では単なる希望的観測に過ぎないわけです。原典的ソースをしっかり読み込むべきです。

このことは決して経済改革の停滞を意味するものではないと思われます。1月5日づけ「今年も「社会主義企業責任管理制」の旗の下に前進する社会主義朝鮮」やチュチェ105(2016)年1月8日づけ「「新年辞」と「水爆実験」と「経済作戦」――朝鮮民主主義人民共和国の内的論理から」(該当部分を下記に再掲)を筆頭に何度も繰り返していることですが、「目新しさ」や「余計な誇張」がなく、そして何よりも「逆行するプラン」ではないということは、従前の路線をこれからも変わることなく粛々と継続する方針であることを示していると言えるからです。
社会主義国は一般的に「急進的な設計主義的方法論による制度建設」の路線を歩むものですが、共和国は、意外なことに、「実験的・試行錯誤的方法論による制度進化」がよく見られるのです。国家の根幹を成すチュチェ思想も形成史を振り返ればそうでした。

そうした歴史的経験則を踏まえて、こんにちを見返すと、経済管理制度変更の「実験」はどこで行われているでしょうか? 「社会主義企業責任管理制」が困難のなかでも撤回されることはなく、徐々にではありますが進化している事実――日本ではほとんど注目されていませんが――は、注目すべき要素です。
ケ小平路線を踏襲するような形態を取るかは現時点では不明であるものの、《사회주의경제건설에 총력을 집중하여 우리 혁명의 전진을 더욱 가속화하자!》は依然として従前の改革路線の延長線上に位置していると言える点において、社会主義企業責任管理制や集団主義的競争の定式化、国内生産力の増強といった形で推進されてきた一連の経済再建の方向性は今後も変わりないと言えるでしょう。
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2018年05月04日

歴史的経緯と経済理論的効果を踏まえた労働市場活用型の労働運動戦術

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180503-00007295-bunshun-soci
>> 本日、JR東京駅の自販機補充スタッフがついにストライキ決行
5/3(木) 13:00配信
文春オンライン

 本日5月3日、JR東京駅で自動販売機の補充業務を担当しているサントリーグループの自動販売機オペレーション大手・ジャパンビバレッジ東京の従業員が、午前9時すぎをもって同社にストライキを通告し、業務を停止した。ストライキは一日中続くものとみられる。

(中略)
 労働組合のストライキの「天敵」といえば、人員を新しく職場に投入されてしまう「スト破り」である。今回のジャパンビバレッジのように、ほかからスト中の事業所に労働者を異動させたり、新しく労働者を採用したりすることで、ストの効力は大きく削がれてしまう。

 このような事態に歯止めをかけるため、職業安定法では、ストライキが発生している際に、「スト破り」を利さないようにハローワークの求人を止めることができると定めているのである。

(中略)
 ハローワークによるストライキの保護という仕組みは、一見すると奇妙に思えるかもしれない。しかし、「求人」に歯止めをかけることは、実は労働組合にとって本質的な活動なのである。

労働市場を規制するのが労働組合の役割
 そもそも、労働組合の歴史は、労働市場をいかにコントロールするかという歴史にほかならない。

(中略)
 このシステムは単なる福利厚生ではなく、まさに労働市場に働きかけるための制度であった。地域に労働者の数が過剰になってしまうと、労働者同士の競争が激化し、労働条件が下がってしまう。そこで、労働者を他の地域に分散させることにより人数をコントロールし、労働条件を改善させるための手段だったのである。

 さらに、労働組合の条件を雇用主が飲まないと、職人を積極的に遍歴に出すことで、労働者の供給じたいを止めていた。これはストライキそのものである。

採用に歯止めがかかると、業務が立ち行かなくなる
 このように、職場を横断して労働市場をコントロールし、労働条件の改善を雇用主に迫ることが、労働組合の本質的な役割である。日本の労働組合は企業別がほとんどであるため、企業の外部である労働市場に目を向けた行動はほとんど行われてこなかった。

 しかし、ブラック企業では、この労働市場戦略がより効果をもたらす。ブラック企業においては、長時間労働やパワハラで労働者を使いつぶすまで働かせて利益を上げ、彼らが辞めると、代わりの労働者を大量に採用するというサイクルが常態化している。ということは、採用に歯止めをかけられてしまうと、たちどころに業務が立ち行かなくなってしまうことになる。このため、ブラック企業と闘うためには、労働組合を通じたハローワークによる採用規制が、極めて大きな効果を持つのである。

(以下略) <<
■歴史的経緯と経済理論的効果を踏まえた労働市場活用型の労働運動戦術を論じる今野氏
当ブログでは、以前からストライキ等による要求活動よりも、労働市場を活用する一種の兵糧攻めの方が、待遇改善のインセンティブが大きいはずだと述べてきました。単発のストライキ等による要求活動の効果は結局のところ、「お代官様・地主様・資本家様への陳情」の域に留まるものであり、この程度では企業・資本家に対して行動を改めるインセンティブにはならないのです。それに対して労働市場を活用する一種の「兵糧攻め」は、世界的大企業であり、対労働者は勿論、一般消費者をも軽視している「超殿様商売企業」であるマクドナルドでさえ、その行動を改めざるを得ない強力な方法論なのです。

このことは、チュチェ103(2014)年8月3日づけ「ユニオンが転職支援する大きな意味――「鉄の団結」は必要ない」やチュチェ104(2015)年10月15日づけ「周囲の助けを借りつつ「嫌だから辞める」「無理だから辞める」べき」等で展開してきた前提・基本的認識に基づき、チュチェ105(2016)年6月19日づけ「マクドナルドの「殿様商売」「ブラック労務」に改善を強いたのは労働組合ではなく市場メカニズムのチカラ」(←奇しくも今野晴貴氏の言説を批判した記事です)や1月30日づけ「大東建託労組員の夢物語的願望に付き合う日本共産党の著しい後退」で述べてきたところです。

今回の今野氏の記事は、「「求人」に歯止めをかけることは、実は労働組合にとって本質的な活動」や「職場を横断して労働市場をコントロールし、労働条件の改善を雇用主に迫ることが、労働組合の本質的な役割」「採用に歯止めをかけられてしまうと、たちどころに業務が立ち行かなくなってしまうことになる。このため、ブラック企業と闘うためには、労働組合を通じたハローワークによる採用規制が、極めて大きな効果を持つのである」といった表現を使って、歴史的経緯と経済理論的効果を踏まえつつ労働市場活用型の労働運動戦術を論じています。特に「採用に歯止めをかけられてしまうと」のくだりは、上掲1月30日づけ大東建託労組員の〜記事を筆頭に、まさに私が以前から論じてきた主張と内容的に重なるものです。当ブログで以前より繰り返し述べてきた労働市場における市場メカニズムの作用を積極的に活用する形での労働自主化の方法論と今野氏の主張が明示的に交差する日が思ったよりも早く来ました。

今野氏を筆頭とする日本の労働界人士の言説は、どうにも「お代官様・地主様・資本家様への陳情」か「マルクス主義的階級闘争物語」の域を脱しないシロモノが目立っている嫌いがありましたが、今回の今野氏の言説は、労働運動において労働市場を活用せんとする点において歴史的にも経済理論的にも正しい労働運動の在り方に立ち返るものです。その基本的認識に対して、私は賛意を示すものであります

■市場活用の視点を徹底できておらず、まだまだ視野が労働運動・労働市場に限られている今野氏
しかしながら、あちこちで依然として不足が目立っていると言わざるを得ないこともまた事実です。

労働市場活用型の労働運動戦術と言う点で加えて申し述べれば、まさに本件;ジャパンビバレッジ案件の関して取り上げた4月25日づけ「消費者直撃の労働運動が正当化される例外的ケースについて」において私は、労働争議における労働者側の戦術は原則として、「利用客を敵に回さない一方で、企業当局側には打撃を与える」という方法論であるべきだとしました。一企業の労使はお客様(消費者)との関係においては「呉越同舟」の関係にあるという事実を直視し、「誰を敵に回してはならないか」ということを十分に承知した上で戦術を練らなければならないわけです。

今野氏の言説は依然として、消費者直撃の方法論を取っているにも関わらず、そのことについて言及していない点において、労使対決にしか意識が向かっていないことが推察されますまさに消費者不在の労働運動であり、このご時世では推奨しかねる方法論であると言わざるを得ません。労働運動において労働市場を活用せんとする点においては市場活用の視点を持っていますが、市場活用の視点を徹底できていないわけです。経済システム全体を俯瞰すべきであるところ、まだまだ視野が労働運動・労働市場に限られているわけです。

■手段が目的と化している今野氏
また、当該記事の直接的論題ではないので、ここで申し述べるのは些か不適切かもしれませんが、「新規採用・補充採用への歯止め」という意味においては労働市場を活用せんとしている今野氏ではあるものの、「現時点で既にブラック企業の被害を受けている労働者が、当該企業と『取引停止』する」という意味での労働市場の活用は見えてきません。チュチェ105(2016)年12月16日づけ「自主的かつスマートなブラック企業訴訟の実績――辞めた上で法的責任を問う方法論」でも述べましたが、心身の無理をせず「辞める」というのは、取り急ぎ安全地帯に脱出するという意味で最善的です。周囲の助けを借りつつ逃げた方がよいケースも存在します。その点において私は、労働組合・ユニオンの「脱出支援としての転職支援」の重要性を繰り返し主張しているところです。

今野氏にとっての到達すべき目標は「ブラック企業に要求を呑ませる」であり、その手段として「労働市場の活用」が掲げられているようです。これに対して私が掲げている到達点は「生身の労働者の自主化」であり、「新規採用・補充採用への歯止め」は勿論のこと「ブラック企業に要求を呑ませる」ということはあくまで手段の一つでしかありません。生身の労働者の自主化が達成されるのであれば、採用への歯止めという一種の「兵糧攻め」であろうと、ブラック企業への要求実現運動であろうとも、戦術自体は何でも構わないわけです。つまり、私の目から見れば、今野氏の言説は依然として「手段が目的と化している」わけです

■市場メカニズムを活用すると言いながら中途半端な今野氏
そもそも労働市場活用論は、「ブラックだから応募しない・させない」という形態を取ると同時に、「嫌だから辞める」という形態をも必然的に取ることになります。上掲のマクドナルド案件や、あるいはすき家・和民の例からも明白である通り、ブラック企業が行動を改める契機は「嫌だから辞める」と「ブラックだから応募しない・させない」のダブルパンチでした。

その点において私は、労働市場における市場メカニズムの作用を積極的に活用することを「嫌だから辞める・ブラックだから応募しない路線」と表現してきたところです。今野氏の言説からは、「嫌だから辞める」が見えて来ず、「嫌だから要求して改善させる」のみです。要するに、市場メカニズムを活用すると言いながら中途半端なのです。

また、ストライキは「要求が実現されるまで働かない」というものですが、本当に要求が実現するまで罷業し続けることは、労働者が生産手段を私有しておらず、また貯蓄が限定的であるのが一般的である以上は現実として困難です。仮に企業側が折れて労働者側の要求を呑んだとしても、このことは、実は企業と労働者との間で「利益分配共同体」が結成される点において、両者の結束が固まってしまうという効果があります。

チュチェ104(2015)年10月8日づけ「「日本の労働組合活動の復権は始まっている」のか?――労組活動は労働者階級の立場を逆に弱め得る」でも述べたように、本来、労働者が企業側に対して自主的な立場を獲得するためには、企業側への依存度を下げなければならないものです。おんぶに抱っこ状態では、要求を貫徹しづらいのです。

なぜ電力会社が一般電力消費者に対して殿様商売ができる(できていた)のかといえば、他に売り手がいないからです。なぜ、自動車メーカーが下請け工場の部品をふざけた値段にまで値切ることができるのかといえば、他に買い手がいないからです。なぜブラック企業が労働者を奴隷的に使役できるのかと言えば、当該労働者には他に働き口がないからです。他に売り手/買い手相手が居ないとき、買い手/売り手は、売り手/買い手に対して依存的立場・弱い立場に置かれます。独占市場の基本原理です。

生身の人間としての労働者が企業側に対して真に交渉力を持つためには、「辞めるよ?」という脅しが必要です。「辞めるよ?」と言えない立場で、団体交渉等によって企業側から「譲歩」を勝ち取りその利権を自らの生活に組み込むことは、特定の勤め先に対する依存度を上げることに繋がります。労働者階級が自主的であるためには、労働需要者としての企業を競争的な立場にしなければならないのに、「辞めるよ?」と言えない立場で団体交渉等に臨むというのは、労働者自らが企業の「労働需要独占者」としての地位をさらに強化させていると言っても過言ではありません

また、労働者が「できればその企業で勤め続けたい」という願いを前提として団体交渉に臨んでいる限り、最終的な効果の点においては、依然として労働者側は企業側の掌の上に居続けます。企業は需要独占者の立場に居続けます。

労働者が真の意味で自主的になるためには、労働者一人ひとりの「嫌だから辞める」を前提にし、企業側に足許を見られないために特定の勤め先に対する依存度を下げ、企業の労働需要独占者としての立場を切り崩すことを基本に据える必要があります。

市場メカニズムを活用すると言いながら結局は「要求」がメインである点は依然としている今野氏の言説です。

■まとめ
上に述べたように、私としては今野氏の今回の言説は、その基本的認識においては同意見です。日本労働界において影響力をもつ今野氏が労働運動において労働市場を活用せんとする姿勢を鮮明に示したことは私はたいへん良かったと思います。しかし、「視野の限定」と「手段が目的と化している」「中途半端」という点において懸念を申し述べざるを得ないところです。とりわけ、「視野の限定」は、現代消費社会において労働運動を展開してゆく上で泣き所になりかねないリスクであると言えます
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2018年04月25日

消費者直撃の労働運動が正当化される例外的ケースについて

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180425-00010002-ksbv-l33
>> 両備2労組 ストライキ予定から一転「無料で運行」岡山市の新規バス路線参入で
4/25(水) 11:52配信

 岡山市の新規バス路線運行をめぐり、競合する両備グループの2つの労働組合が26日と27日にバスなどのストライキを予告していた問題です。労働組合は、運行するが改札はしない「集改札スト」に変更し、バスや路面電車を無料で走らせると発表しました。

(両備バス労働組合/高木秀治 執行委員長)
「全日、集改札スト、無改札で運行させていただきます」


(中略)

 両備バス労働組合は、「新規参入によって労働者の生活を維持できなくなる」として、23日、西大寺線で1時間のストを行いました。

 さらに、26日と27日にもストが予定されていましたが、「会社側にダメージを与えた上で、利用者に不安を与えたことをお詫びしたい」として、バスは走らせるものの料金の徴収を放棄する「集改札スト」を実施すると発表しました。
 西大寺線で26日は1時間、27日は終日行なわれる予定です。

(両備バス労働組合/高木秀治 執行委員長)
(Q.27日運行開始する「めぐりん」新路線を意識したものではない?)
「めぐりんを意識するのは事業者側ですよね。私たち組合は意識も何もないです」


(以下略) <<
■利用者には影響を及ぼさない一方で経営側には打撃となる両備グループ2労組の集改札スト
昨年12月26日づけ「商行為の一環としてのストライキ――自由経済を維持・拡大するためにこそストライキは展開すべきだが、その労働者の利益にとっての弊害についても認識すべき」や2月21日づけ「国労・動労の方法を克服した東労組のスト戦略」でも述べましたが、労働争議における労働者側の戦術は、「利用客を敵に回さない一方で、企業当局側には打撃を与える」という方法論であるべきです。一企業の労使はお客様(消費者)との関係においては「呉越同舟」の関係にあるという事実を直視し、「誰を敵に回してはならないか」ということを十分に承知した上で戦術を練らなければならないわけです。

その点、今回の両備グループの2労組が採用した「運休スト撤回・集改札ストへの変更」は、「利用者には影響を及ぼさない一方で経営側には打撃となり、その要求を迫る」という点において、賛同し得る方法だったと思います。

消費者にしてみれば「どうしてお宅らの内輪の問題に私たちが付き合わされなければらないの?」と納得しかねるような展開、利用者・消費者が置き去りにされがちだった労働争議からの進歩です。「労使の対立」ばかりに気を取られ「生産者と消費者の関係」を見落としがちだった労組運動に、より大きなスケールを意識した視点が導入されつつある吉兆です。国労の轍を踏まないためにも、こうした形での労働運動が更に展開されることを願っています。

■労使が手分けして抗議活動を展開する一環に位置付けられる今回の集改札スト
なお、岡山市における問題のバス路線への新規参入認可については、企業側も決して望ましいことだとは思っていないところです。企業側としては、今回のストライキは市への交渉材料として活用し得るものです。ある意味において、企業側と労働者側が「同じ方向」を向いており、対立構図にあるわけではないのが本件。今回のストライキは、新規参入認可を巡って「労使が手分けして対抗している」とも捉え得るものです。「こういうストライキの使い方もあるんだなー」と思ったところでした。

■両備グループの件とは真逆の消費者直撃の労働運動
これに対して、ほぼ同時期的に以下の記事が配信されました。おなじみの今野晴貴氏です・
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180423-00007141-bunshun-soci&p=1
>> 労働組合が東京駅の自動販売機を空にした日
4/23(月) 17:00配信
文春オンライン

 先週4月18日、JR東京駅構内の自動販売機で売り切れが続出しているという情報がインターネットを駆け巡った。きっかけは労働組合・ブラック企業ユニオンによる次のツイートだ。


(中略)

普段の東京駅ではほとんど見かけない光景
 実際、ホームによってもばらつきがあるが、駅構内の設置場所によってはかなり売り切れが目立っていたようで、ひどい機械では1台あたり7つも「売切」の赤いランプが点灯していた。これは普段の東京駅ではほとんど見かけることのない光景だ。

 今回の事態が起きたのは、JR東京駅構内の自動販売機の補充を担当する、サントリー食品インターナショナルグループの自動販売機大手「ジャパンビバレッジ東京」に勤務する社員10数名が労働組合に加盟し、「順法闘争」を行ったためだった。法律に従い休憩を1時間分取得し、残業を全く行わずに仕事を切り上げるという戦術である。

 もちろん、本数を少なめに入れるとか、仕事をサボタージュしているわけではない。単に法律や社内規則にのっとって自動販売機を回っただけで、補充の追いつかない機械が続出してしまったというわけである。普段から休憩すら取れず、いかに過密な業務を強いられていたかがわかるというものだろう。


ごまかされた残業代未払い
 なぜ、このような事態が起きたのだろうか。今回、ジャパンビバレッジ東京に対して順法闘争に踏み切ったのは、 ブラック企業ユニオン という労働組合だ。現在、ジャパンビバレッジの現役社員14名が組合に加入して団体交渉をしているという。

 同社の問題は複数あるが、その一つが残業代の未払いだ。同社では、昨年12月まで、自動販売機の飲料を運搬・補充する外回りの業務に対して、残業代を支払っていなかった。ひどい場合は、1日4時間以上ただ働きをさせられている労働者もいた。

 この違法な「定額働かせ放題」を是正するため、ブラック企業ユニオンの組合員が労働基準監督署に申告を行った。昨年12月に労働基準監督署が同社に対して、労働基準法違反の是正勧告を出している。

 ところが同社は、あろうことか「労基署とは見解が異なる」「残業代未払いはない」として、現役社員に対して、少額の金銭を支払うことで事態の収拾を図ろうとした。具体的には、社員一人ひとりを急に呼び出して面談を行い、根拠の不明瞭な金額を提示して、その場で強引に同意書を書かせるという手法である。ここで会社側は社員に、「これは残業代ではない。社長のご厚意だ」とまで説明していたという。


(中略)

 今回の順法闘争を受けて、ブラック企業ユニオンでは5月6日にイベントを開催する。順法闘争の経緯や、組合員の労働実態などを、組合員自身の発言や映像を通じて報告し、ブラック企業との闘いかたを多くの人に知ってもらうための企画だ。筆者もゲストとして発言する。自分も労働組合でブラック企業と闘ってみたいという人は、ぜひ参加してみてほしい。

今野 晴貴


最終更新:4/23(月) 17:00
<<
両備グループの件とは真逆の消費者直撃の労働運動。それでいながら「今回の順法闘争を受けて、ブラック企業ユニオンでは5月6日にイベントを開催する。(中略)自分も労働組合でブラック企業と闘ってみたいという人は、ぜひ参加してみてほしい。」というイベント告知につなげる今野氏。「順法闘争」という不吉な単語を連発する始末。わざとやっているのかな? 「自分も労働組合でブラック企業と闘ってみたいという人」というくだりからは、消費者直撃の方法論を取っているにも関わらず、そのことについて言及していない点において、労使対決にしか今野氏の意識が向かっていないことが推察されます。まさに消費者不在の労働運動、このご時世では推奨しかねる方法論であると言わざるを得ません。

■「消費者を直撃するべき事案」もあり得る――消費者が労働者を搾取するケース
しかしながら、今野氏の言説とは無関係に本件を考察すれば、むしろ「消費者を直撃するべき事案」なのかもしれません。というのも、自販機ユーザーにとっての利便性は、自販機屋の労働者たちの負担の上に成り立っていると言い得るからです。

マルクスの『資本論』をしっかりと読み込んでいれば分かることですが、表面的な点において「労働者を搾取する資本家」も、「お客様」たる消費者と対峙する資本主義的市場経済のシステムにおいては、そのシステムの被造物に過ぎません(競争の強制法則)。つまり、マルクス経済学的に見れば、「労働者を搾取する資本家」の搾取=労働者vs資本家の対立構造には、消費者vs資本家・企業家の関係があるというわけなのです。

近代経済学的な立場に立ったとしても、この事実は揺るぎのないことでしょう。近代経済学的な立場においては、労働者が搾取される舞台たる労働市場は、対消費者の財市場の付属物、調達のための要素市場です。労働市場は財市場に従属し、それに影響を受けるものであるというのが近代経済学的な立場であるわけです。

親方日の丸のくせに欲張った国労の「順法闘争」とは異なり、今回の「順法闘争」は、人たるに値する生活を営むための必要を充たす最低限度たる労働基準法に定められた法定基準に沿ったものに過ぎません。最低限度に過ぎない基準に沿るや否や、東京駅の自販機が軒並み品切れ状態になるということは、一般消費者たちが当然の如く受け止めている「自販機は24時間常に欲しい商品がラインナップされている」という事実が、関連業界の労働者たちの無賃労働に支えられていたことを示すものであり、すなわち、企業側だけではなく一般消費者たちも関連業界の労働者たちを搾取しているということになるわけです。

もちろん、上掲記事を読む限りにおいて今野氏がそのようなロジックで今回の「順法闘争」を位置づけているとは到底、読めないものです。おそらく今野氏は、消費者不在の労働運動の立場に立っていると思われます。

■「消費者直撃」が容認される境界線はどこか
労働者の待遇改善要求運動において消費者直撃の方法論が正当化されるか否かは、結局のところ、消費者の支払い額が労働者の待遇にとって十分な額であるかということにかかっています

消費者は十分な額を支払っているのに、労働者の手取りが「操業停止点」を割り込んでいるのであれば、それは企業内部での分配問題です。内輪の問題であり、消費者がそれに付き合わされるのは、いい迷惑です。他方、そもそも消費者が不適切に安い対価しか支払っていないのであれば、企業だって慈善目的で事業をしているわけではないのだから、どうしても労働者の待遇は劣悪になってしまうことでしょう。こうした場合に企業側を責め立てても、彼らだって困ってしまうことでしょう。

本件;ジャパンビバレッジ東京のケースについていえば、企業と消費者がそれぞれ別個に同社労働者たちに負担を強いていたものと推察されます。その点において、消費者直撃の「順法闘争」を採用したことは、今野氏のロジックとはまったく別解的に「全面的には否定評価できない」と私は考えています。

■一企業の努力の限界について(補足)
なお、財市場においては、消費者は往々にして労働者です。経済はシステム的な循環の視点でとらえなければなりません。手取りが少ないから支払額も少なくなり、それゆえに更に手取りが少なくなり・・・という負のスパイラルを意識すべきです。このスパイラルを解決し得るのは、万能ではないものの経済政策です。決して、一企業の努力でどうにかなるものではありません。
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2018年04月21日

「やりたいことはやりきった」というストーリーの延長上に位置付けられる共和国の核実験場廃棄宣言

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180421-00000031-mai-kr
>> <北朝鮮>核実験場を廃棄へ 「非核化」は言及せず
4/21(土) 11:05配信
毎日新聞

 【ソウル渋江千春】北朝鮮は20日、朝鮮労働党の中央委員会総会を開き、21日から核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を中止し、北部の核実験場を廃棄することを決定した。朝鮮中央通信が21日伝えた。総会で金正恩(キム・ジョンウン)党委員長は「我々にはいかなる核実験、中・長距離ミサイル、ICBM発射も必要なくなった。北部核実験場も使命を終えた」と述べた。しかし既存の核兵器の放棄には踏み込んでおらず、「完全な非核化」を目指す米国との交渉は難航も予想される。


(中略)

 北朝鮮の表明に対し、トランプ米大統領は20日、ツイッターで、核実験停止や核実験場閉鎖について「非常に良いニュースで大きな進展だ」とツイート。金委員長との直接会談を「楽しみにしている」と述べた。

 韓国大統領府は「北朝鮮の決定は全世界が願っている朝鮮半島の非核化に向けた意味ある進展だ」と評価したうえで「南北首脳会談と米朝首脳会談の成功に向けた非常に肯定的な環境作りにも寄与する」と歓迎するコメントを出した。

 中央委総会では、金正恩体制が2013年から国家方針に掲げてきた核開発と経済建設を同時に進める「並進路線」について「国家核武力の建設が完璧に達成され、貫徹された」と宣言し、経済建設に総力を集中する新たな戦略路線を表明した。並進路線については、金委員長が昨年10月の中央委総会で「揺るぎなく推進する」「国家核武力建設の歴史的大業を完遂させる」と強調していた。

 ◇北朝鮮発表の要旨

 朝鮮労働党中央委員会総会で採択された決定書の要旨は次の通り。

・党の並進路線を貫徹するための闘争の過程で、臨界前核実験と地下核実験、核兵器の小型化、軽量化、超大型核兵器と運搬手段開発に向けた事業を進め、核の兵器化を実現したことを厳粛に宣言する

・21日から核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を中止する。核実験中止の透明性を保証するため、核実験場を廃棄する

・核実験中止は世界的な核軍縮のための重要な過程であり、わが共和国は核実験の全面中止のための国際的な志向と努力に合流する

・わが国に対する核の威嚇や核の挑発がない限り、核兵器を絶対に使用せず、いかなる場合にも核兵器と核技術を移転しない

・社会主義経済建設のための有利な国際的環境を整え、朝鮮半島と世界の平和と安定を守るために周辺諸国と国際社会との緊密な連携と対話を積極的にする


最終更新:4/21(土) 11:49
<<
以前にも述べたことですが、昨年11月のミサイル実験の成功を受けて共和国が「核武力完成」を宣言したように、共和国側は既に「やりたいことはやりきった」というストーリーを持っており、その流れの上に次なる「対話」を位置づけています

今回の全員会議決定においては、「核の兵器化を実現したことを厳粛に宣言する」とした上で「21日から核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を中止する。核実験中止の透明性を保証するため、核実験場を廃棄する」とし、「実験中止は世界的な核軍縮のための重要な過程であり、わが共和国は核実験の全面中止のための国際的な志向と努力に合流する」とまで言っておきつつも、抜け目なく「わが国に対する核の威嚇や核の挑発がない限り、核兵器を絶対に使用しない」と述べています。共和国政府が以前から掲げてきた立場とまったく変化のないものです。今回の全員会議決定は、共和国政府が以前から述べてきたことと寸分も違わない、ストーリー的継続性の高い決定と言い得るものです。まったくブレていないわけです

このことについて、アメリカのトランプ大統領が「非常に良いニュースで大きな進展だ」とツイートしたことを筆頭に、アメリカとその子分たちは、歓迎の意を表しています。このことに限って言えば、現状は「共和国側のペース」と言ってよいでしょう

さて、日本の「外交通」を自称(僭称)する連中は、公式発表の行間を読むことを怠り、公式発表を斜に構えてイチャモン的に勘ぐりしたり、あるいは、真偽不明の「内部情報」に飛びついて「情勢のリアリステックな解析」をしていると自画自賛します。共和国情勢に関しても、こうした傾向は強くみられるところです。

「情勢のリアリステックな解析」を云々するのであれば、それこそ公式発表同士を突き合わせて、その行間を読むべきです。以前から述べていることですが、西側諸国のように行き当たりばったりで形振り構わない振る舞いに終始している権力者のケースと異なり、共和国は「必然性」を重視する科学的社会主義の看板と「正統性」を重視する儒教文化圏の看板を具有しています。その点において、共和国のような社会主義国を分析するにあたっては、公式発表を鵜呑みにすることはできないものの、公式発表同士を突き合わせることによって、かなりの情報を取得することが出来るものです。いわゆる「クレムリノロジー」が現代において最も有効に活用できるのが共和国情勢です。

ここ最近、非核化を巡って議論が展開されるであろう朝米首脳会談について、日本の言論空間に巣食って公式発表を斜に構えてイチャモン的に勘ぐりしたり、真偽不明の「内部情報」に飛びついて「情勢のリアリステックな解析」をしているなどと自画自賛する手合いは、盛んに「核開発に邁進してきたキムジョンウンには、急な非核化を正当化することはできない」「無理に転向にすれば国内に面目が立たないはず」などと書き立ててきたところです。そしてまた、「ボルトンを登用したトランプ親方は、キムジョンウンの命乞いなど相手になさらないはず」とタカをくくってきました。しかし、実態はどうでしょうか。共和国側は、従前からの主張を繰り返しただけなのに、西側諸国から「非常に良いニュースで大きな進展だ」だの「全世界が願っている朝鮮半島の非核化に向けた意味ある進展だ」などと高評価を受けています。ボルトンだって、タカ派とは言っても、日本の言論空間に巣食っている手合いほど向こう見ずではない人物です。徹底的な自国主義的合理主義者だからこそ、建前主義的な「リベラル」の腰抜けっぷりに対してタカ派的にみえているだけです。

共和国側が以前から緻密な計算の上に用意周到にこしらえてきた公式発表上のストーリーに注目していれば、今回の全員会議決定が今までの共和国側の主張の必然的延長線上に位置するものであることは、誰の目にも明らかな当然の展開であると言うほかありません。

今回の全員会議決定は、共和国のしたたかで用意周到な外交センスが光ったケースであり、かつ、公式発表を斜に構えてイチャモン的に勘ぐりしたり、あるいは、真偽不明の「内部情報」に飛びついたりしてきた「リアリスト」を自称(僭称)してきた手合いの醜態がまた一つ、国際関係論の歴史に刻まれたケースだったわけです。
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2018年04月15日

チュチェ思想の実践的生命力、実践的正当性と「のびしろ」

今日は태양절,위대한 수령 김일성동지の生誕記念日であります。

■首領様が創始されたチュチェ思想の実践的生命力――マルクス主義との違い
キムイルソン同志の革命偉業は、まずは祖国の解放であり社会主義の建設を挙げられるところですが、それらの偉業の根底に横たわるチュチェ思想は、これらの実績の根本として極めて重要なものです。チュチェ思想を指針としたからこそ祖国解放を成し遂げることができ、そしてまた祖国に社会主義を建設でき、そして1980年代末の急激な世界的な情勢の変動の中でも体制を維持できたわけです。

チュチェ思想を掲げる共和国がマルクス・レーニン主義を掲げてきた国々が軒並み崩壊する中で生き延びた理由は、共和国は、あくまでも社会主義革命の客観的条件の解明と未来社会の大ざっぱな方向性の暗示に留まるマルクスの著作を社会主義建設が現実的方法論としてそのまま利用しようとした、ある種の「時代錯誤」的なマルクス・レーニン主義党の国々とは一線を画したところにあります。

マルクスは『資本論』において、機械制大工業(生産様式)の進展は協業を必然化させ、それまで職人肌的だった労働者たちに「協力し合う」ことを求めるようになり、その結果として、未来社会としての社会主義・共産主義社会を人格的に準備すると説きます。「存在が意識を規定する」という教義に従えば、こういう結論に至らざるを得ないとはいえ、こんな見通しはあまりにも楽観的すぎ、我々の日常生活から考えても非現実的です。これが本当なら、ブラック企業の労働者なんて今頃、階級闘争の先陣を切っているはずですが、彼・彼女らが考えていることといえば、「いかにして自分の負担を他人に押し付けて、今日こそ帰宅する」の一点です(目撃談)。無理ないことですが。

チュチェ思想の教育カリキュラムには、マルクス主義とチュチェ思想との差異を説く一章が必ず用意されていますが、チュチェ思想においては、生産様式の変化が人々の人格を自動的に変革していくというマルクスの楽観的見通しを否定的に評価し、社会主義建設においては、社会主義・共産主義的教育の意識的実施が死活的に重要だとしています。そしてまた、共和国が社会主義・共産主義的教育を意識的に実施してきたからこそ、ソ連・東欧諸国よりも厳しい環境下にあっても社会主義の旗を掲げ続けることができたとしています。

「存在が意識を規定する」という教義から導き出されがちな楽観的な経済還元論的な生産力主義を、実践的経験をもとに否定するチュチェ思想の立場は、いったんは失敗と言う結果に終わった社会主義・共産主義運動を再生する上で一つの重要な論点を提起するものです

■進化しつづけるチュチェ思想が提起するマルクス主義哲学への疑問点――「対立物の闘争と統一の法則」を批判的に考えるチュチェ思想の実践的正当性
チュチェ思想は今も尚、自然と社会、そして人間自身の変化の中で進化し続けている思想です。

マルクス・レーニン主義は、その哲学的原則において、「対立物の闘争と統一の法則」「否定の否定の法則」「量質転換の法則」を弁証法の三大原則とし、その中でも特に「対立物の闘争と統一の法則」を最重要と見なします。特に暴力革命論は、こうした哲学的前提に立つものと言えます。

このことについてチュチェ思想は、大胆にも懐疑的意見を提出します

チュチェ思想国際研究所の尾上健一事務局長は、チュチェ95(2006)年6月24日の講演で、「これまでの社会主義理論」を総括するなかで次のように述べています。
>>  これまでの社会運動は対立物の闘争と統一の法則や矛盾論にもとづいていたため、対立や矛盾をさがしだすことが重要視されてきました。
 新しい社会を担う人間を育てることに力を入れるよりも、敵を見つけていつも誰かを敵にしてたたかうことに関心がむけられたのです。
 労働者が政権を取った新しい社会になってからも、労働者同士で対立する事態が生じました。なかまを信じられずたがいに協力しない社会が人間の理想社会といえるのでしょうか。
 日本ではいまでも社会運動をする人々の一部には、たたかう主体よりも対象を先にみる傾向があります。

(中略)
支配層がつぎつぎにうちだす反動的な政策に反対だけしていて新しいものを創造しなければ、新しい社会をきずくことはむずかしいでしょう。
 支配層にたいしてだけではなく、なかまや大衆に対しても闘争対象とみる傾向があります。
 対立物の闘争と統一の法則は、自然にたいしては部分的に適用されても、人間と社会に適用することはできません。
 資本主義社会こえてもっとよい社会をつくろうとするときに、対立物の闘争と統一の法則を適用することはむしろ弊害になります。

(中略)
 人々が団結して生きる姿は理想社会の原型であり、団結をきずくこと自体を運動の目標とすることが大切です。
(中略)
 マルクス・レーニン主義の唯物論と弁証法はまちがいではありませんが、新しい人間の育成や新しい社会の建設にそのまま適用することについては疑問視されます。 <<
(尾上健一『自主・平和の思想』白峰社、2015年、p9−10)
日本共産党の独善的体質や、極左集団の内ゲバ的な暴力的体質を振り返るに、マルクス・レーニン主義的思考回路の問題点の指摘する尾上先生のチュチェ思想を下敷きとする言説には、たいへんな説得力があるというべきでしょう。

当ブログでは以前より、現代日本の労働問題を「自主権の問題」と位置付けたうえで、その最終的解決を「労働者自主管理」に求めているところですが、その立場に立つ人間として私は、「マルクス・レーニン主義の唯物論と弁証法はまちがいではありませんが、新しい人間の育成や新しい社会の建設にそのまま適用することについては疑問視されます」という尾上先生のチュチェ思想的見解を支持するものです。伝統的なマルクス・レーニン主義の主張や、その教義を墨守せんとする政党・党派を支持しないものです。

■チュチェ思想とキリスト教の類似点――チュチェ思想の「のびしろ」
尾上先生が上述の言説を主張する下敷きにチュチェ思想が存在していることからも明白であるとおり、チュチェ思想は、マルクス・レーニン主義的な「対立物の闘争と統一の法則」に対して留保的な立場をとっています。このことの根底には私は、チュチェ思想の創始者であるキムイルソン同志の人格形成に、キリスト教的発想が寄与していることがあると考えています。

チュチェ思想や朝鮮労働党体制を、儒教の要素から分析する言説はかなり広範に流布しています。その最高峰的位置には、鐸木昌之氏の『北朝鮮首領制の形成と変容――金日成、金正日から金正恩へ』(明石書店、2014年)が存在します。かなり説得力のある分析であるとはいえ、あくまでも朝鮮労働党体制と伝統的思考回路としての儒教倫理の連関を論じるにとどまるものです。かつてピョンヤンが「東洋のエルサレム」とまで呼ばれた歴史的経緯と、キムイルソン同志がキリスト教的家系に生まれ、幼少期には母に連られて教会に通い詰め、教理問答で優秀な成績をおさめていた事実は、鐸木氏の分析にはほとんど取り込まれていません

その点、チュチェ思想の立場を一貫させている鎌倉孝夫先生とキリスト教徒である佐藤優氏の共著である『はじめてのマルクス』では、チュチェ思想、もっといえばキムイルソン同志の幼少期にキリスト教的要素があることを指摘しています。キリスト教とチュチェ思想の連関は、重要なテーマです。

キリスト教は、世界最大の宗教であることから社会の実践的規範の根底をなすものです。チュチェ思想にキリスト教思想と通底する部分があることは、チュチェ思想の「のびしろ」の大きさを示すものであると言えます。人類の歴史を切り開いてきた新思想は、多数派が承認する既存の思想と共通(連続)しつつも既存思想の枠内では突破し得ない部分についてのソリューションを提示する点において歴史に名をのこしてきたからです。既存の思想体系とあまりにもかけ離れた独創的な思想体系は、そもそも人々に理解されないものです(このことは、「大衆の意識の立ち遅れ」といってしまえば、それまでですが、社会的な実践と変革を第一に考えるのであれば、大衆を馬鹿にしてエリート主義的自己満足に浸っている場合ではないでしょう)。

もちろん、「チュチェ思想が首領独裁の道具に成り下がっている元凶」と目されている「革命的首領論」の問題を筆頭に、チュチェ思想を流布・実践するにあたって解決すべき問題は幾つか存在していることは私も認めざるを得ないところです。しかし、日本共産党的独善体質や極左集団の内ゲバ的暴力体質を乗り越える立場をチュチェ思想は既に確立しています。このことは、20世紀末にいったん挫折した社会主義・共産主義運動の再生にあたっては、チュチェ思想をメインとして取り掛かることが正当であると言えると考えています。

社会主義・共産主義運動再生の正路としてのチュチェ思想を創始なさったキムイルソン同志の生誕を祝賀いたします。
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2018年04月02日

完全に「去勢」させられた日本「保守」の醜い姿

【4月5日 最終段落を追加】
共和国情勢が急激に遷移しています。北南会談に続く朝中首脳会談。日本の「取り残され」感は日に日に増大しているところです。焦りの現れなのか、もともと馬鹿なのかは知りません(興味もありません)が、面白言説が多数飛び出しているところです。たとえば、以下。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180329-00000068-san-kr
>> 習近平氏訪朝へ 「千年の宿敵」に屈服した正恩氏
3/29(木) 7:55配信
産経新聞

 中国中央テレビと朝鮮中央通信が28日に報じた習近平との会談のやり取りからは、金正恩が訪中に踏み切った微妙な心境が浮かぶ。


(中略)

 ◆真剣にメモ取る姿も

 その言葉とは裏腹に中国のテレビは、習と握手する際のぎこちない笑顔を映し出した。習が発言する間、金が真剣にメモを取る姿もクローズアップした。北朝鮮メディアが、訪朝した韓国特使団が金の言葉を必死にメモする様子を強調して報じたのとは対照的に屈辱的場面ともいえた。

 「中国は千年の宿敵だ」。米政府系メディアによると、昨年12月、北朝鮮国内の講習会で幹部がこう中国への警戒を訴えた。中朝関係者によると、中国と密な関係にあった叔父の張成沢(チャン・ソンテク)を処刑したのも、異母兄の金正男(キム・ジョンナム)を暗殺したとされるのも親中派への見せしめの側面があったという。こうした“脱中国”路線から急旋回したことになる。


(中略)

 金の動静報道は6日以降、途絶えた。「核は宝剣だ」と強調する労働新聞の記事も7日を最後に途切れる。8日には、金の非核化意思の表明と会談要請に対し、米大統領のトランプが5月までの会談を承諾。一連の動きは軌を一にしていることが分かる。

 南北対話とは異なり、習との会談は、予想外に早いトランプとの会談に備え、急遽(きゅうきょ)、準備した可能性がある。北朝鮮メディアは、金が非核化意思を示したことに一切、触れていない。国民生活を犠牲に推し進めてきた核開発の看板を引き下ろす国内向けの論拠が整っていないことを物語る。


(中略)

生き残りを懸け、中国を最大の擁護者とするため、「宿敵」に膝を屈して取り入った覚悟がにじむ。=敬称略(ソウル 桜井紀雄) <<
■完全に「去勢」さられた日本「保守」の醜い姿を象徴する産経記事
産経新聞が拠って立つユートピア追求的な観念論が、これでもかと言うくらいに迫ってくる一品です。いやはや、甚だしい平和ボケっぷり。「民族の自主」という観念をマヒさせられ、完全に「去勢」さられた日本「保守」の醜い姿を象徴するものです。

習が発言する間、金が真剣にメモを取る姿もクローズアップした」ことを「北朝鮮メディアが、訪朝した韓国特使団が金の言葉を必死にメモする様子を強調して報じたのとは対照的に屈辱的場面ともいえた」と書き立てる産経。そんなこと計算ずくでメモを取っているに決まっているじゃないですか。

「ここはとにかく中国をヨイショするのが得策だ」――キムジョンウン同志がそう判断なさったことは極めて自然なことです。このことが「屈辱」かと言えば、「自分たち以外のすべての存在は、自分の目的を達成させるための手段にすぎず、工夫に工夫を重ねて自分たちの目的達成のために周囲環境を利用すべし」というチュチェ思想の根本的要求に照らせば、「朝鮮式社会主義体制を守り抜く」という大目標を達成させるためであれば、あくまでもそのための「道具」に過ぎない習近平をヨイショすることくらいキムジョンウン同志にとっては朝飯前のことでしょう。

アメリカの挑発にまんまと乗っかり「自存自衛」などと口走りながら後先考えずにパールハーバー攻撃を仕掛け、案の定、国土を焼け野原にさせられた日帝の、国際関係論的には完全なる失敗例について「あれは闘わなければならなかったのだ・・・」などと陶酔気味で語る産経・正論路線(正気とは思えませんね)と好対照です。

「民族の自主」という至高の目標を達成するためであれば手段を選ばない。そもそも自分たち以外はすべて「手段・道具」に過ぎず、そんな連中が何を思おうと知ったこっちゃない・・・チュチェを突き詰めれば、「道具」ごときが何をどう思おうと、どうでもいいことです。具体的な言動・行動のレベルではなく、自分たちの目標達成に貪欲であることこそが「筋を通すこと」と見なすチュチェ思想の立場に立てば、身のこなしの急激な変化は「変節」には当たらないことです。

具体的な言動・行動のレベルに拘ることは、チュチェ思想的には枝葉末節に過ぎません。産経・正論路線は、まさにチュチェ思想的には枝葉末節のレベルです。こんな枝葉末節のレベルのことに拘っていられるということは、すなわち、産経・正論路線の甚だしい平和ボケっぷりを示すものであり、「民族の自主」という概念をマヒさせられ、完全に「去勢」させられた日本「保守」の醜い姿を象徴するものです。

■都合の良い時だけ「国内向け説明」を真に受ける産経記事――「虚偽宣伝で国民を騙す独裁政権」ではなかったの?
中国は千年の宿敵だ」などという「米政府系メディア」の報道をここで持ち出してくるのも噴飯ものです。このことは、かの高英起「同志」が詳細に書き立てているところです。どうやら、おなじみの「北朝鮮国内情報筋」なる真偽(存否)不明の情報です。

仮にその「北朝鮮国内情報筋」が実在し、その証言が事実だったとしましょう。しかし、「中国は千年の宿敵だ」なる言説が党中央の真意であるという保証は、どこにもありません

このことは、まさしくこれらの手合いの基本的認識・立場であるはずです。いつから共和国は、国民に対して党中央の真意を伝える国になったのですか。高英起「同志」たちによれば、共和国政府は「独裁」政権を維持するために国民に対して日常的に虚偽の情報を流布させてきたといいます。「『労働新聞』に書かれていることのうち真実と言い得るのは日付だけ」と言わんばかりの論陣を張ってきたものです。どうして、「中国は千年の宿敵だ」などという言説だけがファクト扱いされるのでしょうか?

■そもそも「核武装は必要悪」というのが国内向け宣伝
北朝鮮メディアは、金が非核化意思を示したことに一切、触れていない。国民生活を犠牲に推し進めてきた核開発の看板を引き下ろす国内向けの論拠が整っていないことを物語る」とも書き立てています。チュチェ106(2017)年10月8日づけ「共和国の自衛論理が報じられるようになった」でも触れましたが、共和国は以前から核廃絶は人類の念願であると言明してきました。しかし、アメリカと直接的に対峙せざるを得ない状況下では自衛目的の抑止力は不可欠であるために、已む無く核爆弾やICBMといった核武力の整備に邁進してきたというストーリーを持っています。いわゆる「並進路線」は、その認識の上に据えられているものです。

その点を踏まえれば、「北朝鮮メディアは、金が非核化意思を示したことに一切、触れていない」というのは結局、国内向けの論拠」の有無の問題ではなく、アメリカの真意を解析中である証拠とみるべきです。

「核武装は必要悪」というのが、共和国の国内向け宣伝です。中国は千年の宿敵だ」などという国内向け宣伝は真に受ける一方で、「核廃絶は人類の念願」はスルーする・・・都合の良い事実に飛びつく、典型的な観念論者の姿にほかなりません。

だいたい、共和国のしたたかな外交の背景に「北朝鮮には配慮すべき『世論』が存在しないこと」があるのは、国際関係論の初歩的認識であるはず。いわゆる「独裁国家」であるからこそ、「筋」を通せるのだといわれているところです。あれだけ共和国への誹謗中傷を展開してきた産経が、急に「国内向けの論拠」がどうのこうのとは、いったいどうしちゃったんでしょう? そういうことを「踏みつぶす」のが「北朝鮮のキム王朝」だと書き立ててきたのが産経だったはずです。

支離滅裂と言うほかありません。

■チュチェ思想の立場に立つ人間が屈服するとき
生き残りを懸け、中国を最大の擁護者とするため、「宿敵」に膝を屈して取り入った覚悟がにじむ」という結び。目標達成を第一に掲げるチュチェ思想の立場に立つ人間が屈服するときは、唯一、目標を達成できなかったときだけです。一見して「中国に膝を屈した」ように見えても、その中国を「道具」として使い倒した結果、目標を達成したのであれば、それは勝利です。

産経・正論路線のこのトンデモ言説は、以前にも指摘した「ゲリラが建国した国の文化とインパール作戦を生んだ文化的土壌の国との決定的差異」を底流としつつも、何を最優先にすべきかという点において日帝レベル以下に落ち込んでいる現代日本「保守」の甚だしい平和ボケっぷりを示すものです。本質的な意味での「民族の自主」という概念をマヒさせられ、混乱の挙句に取るに足らないことを重要視するレベルにまで幼稚化させられた姿、完全に「去勢」させられた日本「保守」の醜い姿を象徴するものです。
posted by s19171107 at 22:56| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする

2018年03月19日

ソ連が恋しくない者には心がない。ソ連に戻りたい者には脳がない。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180319-00000090-asahi-int
>> 「ソ連時代がよかった…」プーチン氏再選、冷めた空気も
3/19(月) 20:56配信
朝日新聞デジタル

 ロシアのプーチン大統領が18日の大統領選で再選を果たした。だが、ライバル不在の選挙に、国民の中には冷めた空気も漂う。経済格差や生活への不満は支持者の中にも根強く、政権の課題は山積している。


(中略)

 プーチン氏支持者からも不満の声を聞いた。会計士の女性は(61)は「ソ連時代が一番よかった。両親のように、年金生活者でも外国旅行ができる社会にしてほしい」と注文する。

最終更新:3/19(月) 21:05
<<
「ソ連が恋しくない者には心がない。ソ連に戻りたい者には脳がない。」――今回の選挙で完勝を果たしたプーチン氏が2000年に述べたとされる言葉です。

ロシアの一般庶民が置かれている厳しい現状を見れば、「ソ連時代が一番よかった」などと思わず口走ってしまうのも理解できないことはありませんが、まさにプーチン氏が言うように「ソ連に戻りたい者には脳がない」といったところでしょう。

両親のように、年金生活者でも外国旅行ができる社会」――たしかにソ連時代は、一般庶民であっても年1回以下の頻度での海外旅行は可能だったと聞きます。共産圏諸国への監視付き団体旅行に限られていたようですが。

「共産圏限定の監視付き団体旅行でもいい! 不自由でもできないよりはマシ!」という声もあるのかも知れませんが、そういう不自由を嫌がった人々がソビエト政権を引っ繰り返して「民主化」を果たしたのが歴史だったはず。人間は、ある程度の範囲で物質的に満たされてくると、次は精神的な自由を求めるものです。もし仮にここでプーチン氏が大転向を果たして、社会政策的な意味でソ連復活を実行したとしても、数十年後にまたも「民主化」が志向されるのは目に見えていることです。

そもそも、「ソ連時代が一番よかった」などと本気で思っている人は、全ロシア国民のうちどの程度いるのか。会計士の女性(61)がそう思っているのは事実でしょうが、それはメディアが取り上げるべき「代表値」なのでしょうか?

いろいろ疑問に思わざるを得ない記事です。
ラベル:メディア
posted by s19171107 at 23:36| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする

2018年03月13日

競争の切磋琢磨としての側面を正しく評価した日本共産党のオリンピック報道

ピョンチャンオリンピックが閉幕してから2週間以上たちました(たってしまいました)。スポーツというものは、単に肉体を鍛えるだけではなく、思想的な効用もあるものです。いわゆる「スポーツマンシップ」は、単なる競技場内での約束事ではなく、広く社会的にも実践されるべきものだと私は考えています(ちなみに私は、「スポーツマンシップ」は好きですが、いわゆる「スポ根」は大嫌いです)。

その角度からピョンチャンオリンピックや、それに関連する報道を振り返ったとき、私は日本共産党機関紙『しんぶん赤旗 日曜版』の報道に注目します。私は左翼ではあるものの日本共産党をまったく支持しない立場ですが、今回に限っては『しんぶん赤旗 日曜版』の論調に全面的に賛同するとともに、ちょっと日本共産党を見直しました

『しんぶん赤旗 日曜版』編集部は、ピョンチャンオリンピックで展開されたアスリートたちの競い合いながらお互いを高め合っている姿から、競争の切磋琢磨という側面を正しく評価しています。

2月25日づけ『しんぶん赤旗 日曜版』は、「競い合える友がいてこそ」という見出しと「高みを極める選手の競い合いが「雪と氷の祭典」平昌五輪を熱くしています。競技のレベルを飛躍させて高め合う競技者たちの共演と、欧米の列強にくさびを打ち込むアジアの躍動を紹介します。」というリード文に続き、日本の小平奈緒選手と韓国のイサンファ選手の一幕について次のように書いています。
>>  過去も高め合ってきた日韓の両エースは優勝候補として大会にのぞみ、小平選手は空気抵抗が高く、記録の出にくい低地リンクで世界初の36秒台をマーク。(中略)
 李選手は小平選手が転倒事故を続けて不振に陥った5年前、誰よりもなぐさめ、励ましました。
 (中略)
 レース後に2人で交わした言葉は、心からの思いでした。「今もあなたを尊敬している」と小平選手。李選手は「あなたを誇りに思う」と伝えました。
<<
それに続く次段落では、フィギュアスケートの羽生結弦選手について、
>> 4回転ジャンプの質と量が飛躍的に増大したこの4年の競技力向上について、「僕が引き上げたとは思っていない」と断言。「(競い合う仲間がいて)時代に恵まれた」とのべ、(中略)新たなジャンプの挑戦を競いながら、競技の魅力を高めた仲間たちへの感謝の念が込められていました。 <<
とも書いています。

また、3月4日づけ『しんぶん赤旗 日曜版』では、「発揮したカーリング精神 対戦相手も"仲間" そこが魅力」という見出しの記事において、次のように書いています。
>> カーリングの素晴らしさとは何か――スキップの藤沢五月選手(26)は2年前、日曜版のインタビューに「相手チームは敵ではなく仲間。それがカーリング精神であり、大きな魅力」と答えています。
 どの大会でも試合相手に「ナイスショット」と声をかけ合うのが"カーリング流"です。
 (中略)
 敬意をもって、認め合い、切磋琢磨する――選手たちの真摯でさわやかな関係が、競技の発展を支えています。 <<
運動会での「お手々つないで・・・」は、さすがに最近は廃れる方向性にありますが、依然として日本では「競争」を否定的に見るむきが根強くあります。たしかに順位至上主義に陥ったり、ルール違反を犯したり他人を蹴落としたりしてまでのし上がるといった競争の「マイナスの側面」には厳重に注意し、アノミー的状況にならないようにしなければならないところですが、競争には切磋琢磨という「プラスの側面」が間違いなく存在しています。「お手々つないで・・・」は、切磋琢磨までをも殺してしまうものです。

歴史的・世界的に見て、リベラル勢力や左翼勢力は、長く「競争」を位置づけるのに苦心してきました。チュチェ105(2016)年6月6日づけ「朝鮮労働党第7回党大会は経済改革・競争改革を漸進的に継続すると暗に宣言した画期的大会」やチュチェ106(2017)年12月24日づけ「フランシスコ法王の懸念に答える「集団主義・社会主義的競争」という新しい競争の在り方」でも触れたとおり、近年になって、ようやく朝鮮労働党が第7回党大会を目前に控えた70日戦闘において「社会主義的競争」を定式化しましたが、逆に言えばこれくらいしかイデオロギー的に特筆できる「競争の定式化」に乏しいのが、リベラル・左翼界隈でした(全世界のすべてのケースを見てきたわけではないし、あくまで社会主義的立場をとる人物・集団についての話であり、中国共産党のような転落者は除外しています)。

そんなご時世に出てきた『しんぶん赤旗 日曜版』のオリンピック報道。特に3月4日づけ記事の「敬意をもって、認め合い、切磋琢磨する――選手たちの真摯でさわやかな関係が、競技の発展を支えています」というくだりには、よい意味で衝撃をうけました。スポーツの世界で発揮されるような意味での競争、そしてその結果としての切磋琢磨的な意味での成長――こうした「競争のプラス面」を、日本左翼業界の老舗たる日本共産党の中央機関紙が正面から肯定的に評価したことは、私は大変よかったと思います(我が懐かしの党員諸君、今もあの頃から変わっていないのであれば、党中央の見解を学習せよ!)。また、朝鮮労働党が掲げている「社会主義的競争」とも一脈通じる発想である点、「反日共・チュチェ思想派」として日本共産党を少し見直しました

ところで、ここからは日本共産党からは離れますが、競争を経済政策として考えるとき、競争の最大の効用である「切磋琢磨」を生かし得る制度設計こそが求められるものであると言えるでしょう。その点、カーリング精神やスポーツマンシップから学べることは多いと考えられます。正々堂々とした競争でお互いを高め合い、その結果としてマクロ経済全体をも発展させる――三方よし的な発想です。

「社会主義的競争」を掲げて社会主義の枠内での切磋琢磨を展望する朝鮮労働党ですが、党委員長であるキムジョンウン同志は、スイス留学時代にバスケットボールに打ち込んでいらっしゃったと聞きます。このころのスポーツ経験が切磋琢磨の効用を感覚として学び取る契機となり、それが今日の「社会主義的競争」に至ったかどうかは分かりません。しかし、可能性としてはあり得ると思います。スポーツマンシップを単なる競技場内での約束事にとどめるのは勿体ないことです。
posted by s19171107 at 00:45| Comment(0) | 時事 | 更新情報をチェックする