■明らかにハイマースが供与・納入のときとは様子が異なっている
https://www.sankei.com/article/20230523-XHY4EDA2RBOMTDS2M56CXEFJDA/
米空軍長官、F16供与は「戦況を劇的に変えない」とクギhttps://news.yahoo.co.jp/articles/7cb2e0f6a8f99bd9c61dff6a1e11aab779463920
2023/5/23 08:45
ケンドール米空軍長官は22日、ウクライナへのF16戦闘機供与について「持っていない能力を与えるが(状況を一変させる)劇的なゲームチェンジャーにはならない」との見解を示した。ワシントンでの国防専門記者団との会合で語った。
ケンドール氏は、ロシアもウクライナも制空権を握れておらず、航空戦力は戦況に決定的な影響を及ぼしていないと指摘。空軍制服組トップのブラウン参謀総長と22日に協議したと述べた上で「われわれは、根本的な変化をもたらすとは考えていない」と説明した。
(以下略)
現実味増すウクライナへのF16供与、訓練などで課題山積アメリカ空軍の長官がこのように語り、CNNや産経が報じています・・・
5/25(木) 18:40配信
CNN.co.jp
(CNN) ウクライナが米欧に求め続けていたF16型戦闘機の引き渡しはバイデン米大統領が先に操縦訓練の支援への同意を表明するなどして現実味を増す展開となってきた。
ただ、ウクライナが仮に同機を手にしたとしても戦況を一気に有利にし得る兵器にはならないとし、弱点も抱えることになると軍事専門家らはみている。ロシア側はF16機が実戦に投入されたとしても大きな戦力にはならないと見越し、むしろその弱味につけ込む対応策を講じるとも予測している。
同機の現役パイロットはCNNの取材に応じ、同機がもたらす攻撃力への期待は過多になっている可能性に言及した。戦場で違いを生み出せる戦力になるのかの質問には「そうではない」とも言い切った。
(以下略)
■あまり乗り気ではない理由
そもそも、F-16が実際にいつ搬入されるか、もっといえば本当に搬入されるのかも確定はしていません。バイデン大統領の決定は要するに「同盟国の中で手持ちのF-16をウクライナに供与する国があれば、アメリカは妨げはしない」というものであり、アメリカが自ら供与するわけではありません。また、いまのところアメリカの同盟国で具体的に供与を表明した国はありません。その理由は結局は、F-16一式(機体と維持管理のための諸々)が非常に高価だという点にあるようです。
https://grandfleet.info/us-related/u-s-milley-says-10-f-16s-for-ukraine-will-cost-2-billion/
2023.05.26「非常に高価ではあるが何とかやり繰りしてF-16供与を実現しよう」という方向性ではなく、また、「F-16がダメなら他の戦闘機を」という方向性でも現時点ではないようです。
米国のミリー議長、ウクライナへのF-16提供コストは10機で20億ドル
ウクライナに対するF-16の提供について様々なニュースや話題が飛び交っているが、多くのメディアはF-16がもたらす効果を楽観的に報じ、軍関係者、専門家、防衛産業の関係者は効果に懐疑的な立場を崩していない。
ウクライナに対するF-16の提供について様々なニュースや話題が飛び交っているが、多くのメディアは「西側諸国の在庫にはF-16が沢山あるし、米YahooNEWSは4ヶ月でパイトットの訓練は十分だと報じている。F-16があればウクライナを勝利に導ける」と楽観的に報じているが、軍関係者、専門家、防衛産業の関係者は「なぜウクライナの空域保護に最も高価で、最も時間がかかり、最も効果が低そうな戦闘機が提供が必要なのか」と懐疑的な立場を崩していない。
米国のミリー議長は25日、ラムシュタイン会議後の記者会見で「ウクライナ空域を保護する最も安価な方法は地上配備型の防空システムだ。これこそがロシアの航空支配を阻止する最も効果的な方法だったので、我々は防空システムの供給を優先してきた。10機のF-16をウクライナに提供するには10億ドルもの費用がかかり、この10機を維持するには更に10億ドルの費用がかかる。つまり10機の戦闘機提供にかかるコストは20億ドルだ。圧倒的な航空戦力を保有するロシアに対してF-16で対抗するなら相当数の機体が必要で、これを構築するには非常に長い時間がかかる」と述べた。
ケンドール空軍長官も22日「ウクライナでは双方が効果的な地対空ミサイルを使用しているため航空戦力は決定的な役割を果たしておらず、戦闘機の使用は特に限定的で、F-16は戦場のパワーバランスを劇的に変化させるものではない」と、F-16を操縦していたブリードラブ元大将も「F-16はMiG-29より遥かに優れた戦闘機だが、ウクライナ人が欧米流の航空戦術を徹底的に身に着けなければF-16の利点を何一つ発揮できないだろう。F-16をMiG-29のように操縦するならホットロッドのMiG-29を手に入れたというだけでお終いだ」と指摘。
ミリー議長も、ケンドール空軍長官も、ブリードラブ元大将も「長期的な取り組みの一環」としてF-16を提供することに賛成で、特にブリードラブ元大将は「ウクライナ人の熱意と努力は我々の想像を上回り、常に我々は訓練にかかる時間を過大評価している」と述べ、国防総省が見積もった「18ヶ月間」より短い時間でウクライナ人は必要なスキルを身につけられると予想しているが、F-16が戦場にもたらす効果についてだけは懐疑的だ。
(中略)
あるF-16の元パイロットは「戦場には夥しい量の地対空ミサイルが存在するため1,000フィート以下の低空を飛行する必要がある。この制限は非ステルス機なら旧ソ連機でも西側機でも同じだ。つまりF-16でもウクライナ人が持っている戦闘機とやれることに違いはない」と指摘、つまり前線に対する近接航空支援ではF-16でも旧ソ連機でもやれることに大きな差はなく、巡航ミサイルを運搬するTu-95やTu-160をロシア領空で迎撃できる可能性も0だ。
ウクライナ空域に侵入してきたロシア軍機、巡航ミサイル、Shahed-136を迎撃すること位しか期待できないなら「防空システムに投資する方が効果的だ」という意味で、米統合参謀本部のバトラー大佐は「率直に言うと(政府がウクライナ支援向けに容認している資金内で)F-16を提供すれば、米国は他の物を提供できなくなるだろう」と警告しており、ミリー議長も内心は「空域保護に限られた資金と能力を投資するなら地上配備型の防空システムを優先させた方がいい」と思っているかもしれない。
因みにウクライナ国家安全保障・国防会議のメンバーは「ロシアは1,500機保有する航空戦力の内400機を戦争に投入しており、ウクライナに提供される西側製の戦闘機の数も40機ではなく200機程度まで増やしてほしい」と、最高議会の議員も「世界には4,600機ものF-16があり、私達が要求しているは1%未満の数で本当に大したことがない」と述べており、この調子でF-16提供を要求されれば欧米諸国の支援資金は一瞬で蒸発する。
(以下略)
https://grandfleet.info/us-related/biden-administration-tells-nato-member-states-to-allow-f-16-transfer-to-ukraine/
2023.05.19「対ウクライナ支援の姿勢は取り続けるが、実際の供与はあまりしたくない」という本音がよく現れているようです。
バイデン政権、NATO加盟国にF-16のウクライナ移転を許可すると伝達
(中略)
パイロットの訓練問題はひとまず置いておくとして、ウクライナが要求する「西側製戦闘機の提供」の実現を妨げている要因には「誰が機体を提供するのか」「誰が提供にかかる費用を負担するのか」という問題が確実に絡んでおり、先に結論を述べておくと米国は「ウクライナが戦争継続のため必要とする資金、装備、弾薬の大半を負担しているので戦闘機提供は欧州主導でやってくれ」と言うのが本音で、欧州は「ウクライナに引き渡す戦闘機をF-16に限定することで欧州は提供を支援する立場に収まりたい」と願っている可能性が高い。
そもそもウクライナが希望しているのは「西側製戦闘機」であって「F-16」である必要はなく、もしF-16の入手が難しいなら「ラファールやグリペンでもいい」とウクライナ空軍は述べており、米国は保有するF-16の提供に消極的なので、西側製戦闘機の提供に積極的な欧州諸国が保有する機体をウクライナに提供すれば、仮に政治的な問題で米国製戦闘機(F-16やF/A-18)の移転承認が困難なら欧州機(タイフーン、ラファール、グリペン)を提供すればいいだけだ。
要するに英国が主導する戦闘機提供の連合体が「F-16」に提供機種を限定するのは「誰が機体を提供するのかという問題の矛先を米国に向ける・巻き込む」という政治的な意図があり、最も戦闘機提供に積極的な英国は「我々にはウクライナが希望するF-16を持っていない」というロジックで機体を提供する立場にないと主張、メディアが政府の報道官に「F-16の代わりにタイフーンを提供する用意はあるのか」と質問すると「提供するつもりはない」と断言している。
(以下略)
軍事素人たる当ブログ管理者には、これらの分析がどれほど正しいのか独自に検証することは困難ですが、こういう報道がいち早く出てきた点に注目したいと思います。明らかにハイマースが供与・納入のときとは様子が異なっています。
■以前の調子を続けている人
しかしながら、以前の調子を続けている人も・・・
https://news.yahoo.co.jp/articles/31e4564a17d603193f458996312751853249f117
バイデン大統領、ウクライナへのF16供与を容認 「旧ソ連製ミグ29の何倍もの戦闘能力」辛坊治郎が解説軍事素人には具体的な誤謬の指摘はできませんが、ここ最近の報道記事の論調とは明らかに異なる「独自見解」であることは容易に分かります。
5/22(月) 19:01配信
ニッポン放送
キャスターの辛坊治郎が5月22日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。アメリカのバイデン大統領が19日、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で各国首脳に、ウクライナ軍のパイロットにアメリカ製のF16戦闘機の訓練を行うことを承認したことを巡り、「F16はロシアやウクライナが主力にしている(旧ソ連製の)ミグ29戦闘機の数倍もの戦闘能力を持つ。ロシアとの戦況に非常に大きな影響をもたらす」と解説した。
(中略)
辛坊)アメリカ製の戦闘機にはF15もあります。F15は現在、日本の主力戦闘機です。F15はエンジンを2基積んでいますが、F16はこのF15のエンジンのうち1基を使い飛行します。ですから、F15よりも小型で軽量、高性能です。
F16は最新のステルス戦闘機より1世代前ですが、ロシアやウクライナが主力にしている(旧ソ連製の)戦闘機であるミグ29の何倍もの戦闘能力を持つといわれています。このF16がウクライナに供与されると、ロシアとの戦況に非常に大きな影響をもたらします。
ハイマースのときもそうだったと記憶していますが、この手の方々は「秘密兵器による劇的な展開」に期待しすぎているように見受けられます。エンジンの性能を云々したりミグ29の何倍もの戦闘能力をもつなどと指摘したりする辛坊氏ですが、機体そのものの性能(それもカタログ上の性能)を比較することは、私が言うのもアレですが、いかにも素人という感想を禁じ得ません。戦力とは武器の性能の高さや兵士の士気の高さなどだけで規定されるものではなく、物量などを含んだトータルなものだからです。
昨年7月31日づけ「一種の英雄崇拝としてのHIMARS待望論に縋る日本世論」で、HIMARSの戦線投入を「ゲームチェンジャー」などと囃し立て「南部ヘルソン奪還へ」などと飛ばす日本世論について次のように述べました。
かつてヒトラーはV2ミサイルの投入に固執したものでした。ヒトラーは明らかに英雄崇拝思考の持ち主でしたが、奴のゲームチェンジャー・決戦兵器待望論は、単に敗色濃厚の戦況において一発逆転を期していた以上に、そもそもそういう考え方の持ち主だったとも考えられるでしょう。上述のとおり、今回のF-16問題では早々に慎重な見解が見られており、日本世論も少しは冷静さを持つようになってきたようにも見えますが、辛坊氏のように「相変わらず」の人もまだまだ居るようです。
我らが日本世論も、以前から指摘しているように、大河ドラマのような英雄豪傑物語を非常に好む傾向から言って一種の英雄崇拝があるものと考えられます。日本世論がゲームチェンジャー・決戦兵器に期待をかけ沸き立つのは、ヒトラーのV2固執と瓜二つ。ヒトラー的英雄崇拝の精神は現代日本にも脈々と受け継がれているようです。
■プロパガンダのやり過ぎは逆効果
あえてやっていると思しき人も。5月22日づけ放送「キャッチ!世界のトップニュース」の文字起こし記事です。
https://www.nhk.jp/p/catchsekai/ts/KQ2GPZPJWM/blog/bl/pK4Agvr4d1/bp/pOPy08ozxl/
ウクライナ情勢の焦点をキーウの防衛問題専門家と読み解くこのタラス・ジョウテンコ氏がどういう人物なのかが判然としませんが、「キーウにいる防衛問題専門家」という触れ込みなので、戦時下という状況を勘案するに「ウクライナ政府の公式路線に沿った情勢分析ができる人物」ということなのでしょう。おそらく国際的に権威のある専門家ではないように思われます。もしそうならば、箔をつけるために経歴紹介があるはずですから。
2023年5月22日 午後5:20 公開
ウクライナのゼレンスキー大統領が出席したG7広島サミットはきのう閉幕。ウクライナが供与を求めていたF16戦闘機について、アメリカはヨーロッパの同盟国による供与を容認する立場を明らかにしています。バイデン大統領はサミットでの会談で、同盟国などとともにウクライナのパイロットへの訓練を開始することを表明しました。
また、ウクライナ東部の激戦地バフムトをめぐりウクライナ、ロシア双方の主張が食い違っています。ロシア大統領府はプーチン大統領がバフムトを完全に掌握したことを祝福したと発表し、一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアに占領されていない」と否定しています。
広島でのゼレンスキー大統領の発言を受け、焦点となった「F16戦闘機の供与や訓練」「バフムトの状況」「反転攻勢の見通し」について、別府キャスターがウクライナの首都キーウにいる防衛問題専門家のタラス・ジョウテンコ氏にインタビューしました。
(「キャッチ!世界のトップニュース」で5月22日に放送した内容です)
@ウクライナ軍への「F16戦闘機の供与や訓練」
まず、F16戦闘機についてです。ウクライナ側がかねてから欧米に求めてきたものですが、G7サミットの間に、アメリカはNATO加盟国がウクライナに供与することを決めた場合、容認する考えを示しました。また、ウクライナ軍のパイロットに対し、「F16戦闘機を使った訓練の実施を支援する」とし、ゼレンスキー大統領は支援への感謝を表明。欧米からウクライナへの軍事支援が一段と強化されることになり、ジョウテンコ氏は、「ロシアの空からの攻撃からの防衛に非常に大きな意味を持つ」と指摘しました。
ジョウテンコ氏:F16は空における優位性だけでなく、地上の作戦においても、ミサイル防衛においても、ウクライナ軍にとってゲームチェンジャーとなるだろう。巡航ミサイル、弾道ミサイル、ロシアがスーパー兵器だと主張するミサイルなどから、これまで以上に守られることになる。
(以下略)
それにしても、ハイマース供与・納入のときとは打って変わって慎重な見方が当初から一般メディアでも報じられているところ、相変わらず、NHKは正体不明の「キーウにいる防衛問題専門家」を引っ張りだしてまで「ゲームチェンジャー」などと囃し立てているわけです。
NHKの報道論調どおりであれば、今頃ロシアのミサイルやドローンは完全に枯渇し、ロシア軍は士気の低下と弾薬の不足で攻勢どころか防衛態勢の構築さえ出来なくなっているはずです。しかし、バフムートはロシアの手に落ち、侵攻開始後で最大規模とされるドローン攻撃がキーウ市に対して行われました(「キーウへドローン攻撃 侵攻後で最大規模 ウクライナ」5/28(日) 12:45配信 時事通信)。
ロシアは崖っぷちだったのでは? 「ウクライナが優勢だとずっと言われてきたが、本当なのか?」という疑問が自然発生的に出てきてもおかしくないでしょう。このままいくとNHKは、自局に対する視聴者の信頼を失うだけではなく、いままで積み上げてきたウクライナ情勢の基本的な枠組みに対して視聴者の疑念を惹起しかねません。その結果、ウクライナの勝利に対する日本の視聴者たちの信頼を毀損しロシアの情報戦をアシストすることになるでしょう。「ウクライナが優勢だとずっと言われてきたが、いつまでもロシアは干からびない。NHKのウクライナ報道は疑わしい。そもそもウクライナが優勢で勝利は近いという認識も疑わしい」となりかねないのです。プロパガンダのやり過ぎは逆効果なのです。
■相変わらずのタラレバ論――人間を中心に主体的に考えるとは一体どういうことを指すのか
また、文字起こし記事は見つかりませんでしたが、5月20日「サタデーウォッチ9」では兵頭慎治・防衛省防衛研究所研究幹事が、F-16について「米欧諸国による武器支援レベルが一段上がった」としつつも、ウクライナはF-16戦闘機を200機ほど欲しているので、これからはアメリカが自らの手持ち機体を供与することも求められるだろうと指摘しました。
そんな大盤振る舞いしたらアメリカのウクライナ支援予算は、それだけで使い切ってしまうのでは・・・上掲「航空万能論」記事でも「この調子でF-16提供を要求されれば欧米諸国の支援資金は一瞬で蒸発する」と指摘されているとおりです。
相変わらずのタラレバ論。戦争とは政治的目標を達成するための手段の一つであり、戦争を実施するためには物質的な基礎基盤が絶対的に不可欠です。つまり、戦争を語るということは、その政治的目標が何処にあり、それを支える物質的基盤が何であるかを語るということでもあると考えます。米欧諸国がF-16を200機供与することで一体どのような政治的目標を達成し得るのか、そのための物質的基盤はあるのか。「アメリカが自らの手持ち機体を供与することも求められるだろう」ではなく、アメリカがそうする国益上の必要性と現実的な可能性を解説してこそ専門家なのではないかと考えます。
ちなみに、チュチェ思想派として私は、「人間を中心に主体的に考えるとは一体どういうことを指すのか、どうすればそのように考えることができるのか」と折に触れて考えています。現時点での見解としては、「現実世界を人間を中心に主体的に考えるとは、人間の利益上の必要性と現実的な可能性との関係性を踏まえて考えること」と個人的に理解しています。
「人間があらゆるものの主人であり、すべてを決定する」がチュチェ思想の基本原理ですが、ここからは、人間とは自己の自主的要求を追求すべくすべての活動を展開する存在であることが導出されます。他方、物質世界に生きる人間存在は客観的環境の影響を受けざるを得ないので、常に自己の要求と現実的可能性の折り合いが必要になります。なお、人間には客観世界を改造する創造的能力があるので、客観的環境の影響を一方的に規定されるものではありませんが、正しい方法に則って改造しなければ成功しないので、現実的可能性を踏まえる必要があります。現実的可能性を軽視し自主的要求にばかり偏重すると、日帝的精神論の失敗の轍を踏むことになります。リベラリズムも現実的可能性を重視しているとは言い難いので、日帝的精神論に近づきつつあると考えます。
マルクス主義は、社会変革のための現実的可能性については非常に深い理論体系を創出しましたが、社会変革に関する人間(プロレタリアート)の利益上の必要性に関する探究は必ずしも十分ではなかったように考えます。このことは、プロレタリアートのプチ・ブルジョア化が進んだ現実の推移を機敏に把握し得なかった一因であったように思われます。
兵頭氏について言えば、アメリカなどがF-16を大量に供与する国益上の必要性と現実的な可能性に踏み込むことなく「アメリカが自らの手持ち機体を供与することも求められるだろう」と話を繋げたことは、プロパガンダとして意識的に展開しているのでなければ、物事を人間中心に主体的に考えられていない証左であると私は考えます。僭越ながら申せば、要するに外しているわけです。こうした解説が公共電波に乗って放映されたことの意味合いは、プロパガンダだとしても素だとしても深刻な事態を示しているでしょう。

※以下、レズニコフ国防相の話。インタビューは6月4日に行いました。
>F16戦闘機の投入時期は秋か冬の時期になるだろうと考えています。
パイロットの訓練には時間がかかりますし、それだけでなく、パートナー国から技術者や専門家を派遣してもらうことも必要です。
非常に高度なシステムを使うときは、メンテナンスや修理が必要で、それにはさらに時間がかかるのです。残念ながら、この夏はF16戦闘機なしで反転攻勢の作戦を進めなければなりません
(引用終わり)
やたら楽観的な論者に比べれば「当面はF16は投入できない」と見ている点は冷静と言えるのではないか。
>私の考えでは、真の反転攻勢は2022年2月24日、ロシアが軍事侵攻を開始したときから始まっているのです。
(引用終わり)
「反転攻勢は始まってるのか、まだならいつ始まるのか」というNHK記者への回答ですが「ウクライナ戦争当初から反転攻勢は開始されてる」とは完全に話のすり替えですね。
あげく
>光栄なことに、われわれウクライナは今から100年前に(日露戦争で)日本の艦隊が成し遂げたのと同じことを再び実現しました。日本が100年前に対馬周辺で(ボーガス注:日本海海戦でロシア艦隊打倒を)成し遂げたのと同じように、われわれはロシアの黒海艦隊の旗艦「モスクワ」を沈没させました。これは歴史上2度目の出来事になります。
今、黒海の底に沈んでいるロシアの軍艦は、私たちが勝利すれば、有名なダイビングスポットになるでしょう。そのときには、私がダイバーとして案内するのでお越しください。
(引用終わり)
「日本へのおべっかを言えばごまかせる」とでも思ったのか反転攻勢と何一つ関係ないことを言い出します(苦笑)。
ここで「反転攻勢と関係ないことを言ってごまかすな」等とNHKは突っ込めなかったのでしょう。完全に舐められてると言っていい。
それにしても国防相も「軍事機密なのでノーコメント」と言った方がまだましではないか。
コメントありがとうございます。
レズニコフ国防相としては、反転攻勢の詳細を公言するわけにはいかないのでしょうが、この記事からは「そういうことを聞きたいんじゃないですが」という感想しかありませんね。インタビュー時点でロシア占領下にある地域をどのように取り返してゆくのかということを聞きたいわけですから。
編集の問題かもしれませんが、「私がダイバーとして案内するのでお越しください」というくだりなど、なんとなく全体的に「軽い調子」が否めません。余裕を醸し出そうとしているのかもしれません。あえて、シリアスに「それには答えられない」と言い切らないことで楽観的な印象醸成を狙っているのかもしれません。
日露戦争の話を持ち出すのは「親近感」を醸成しようとしているのでしょうが、なんとなく違和感が否めませんね。あまり日本ではこういうヨイショはしないような・・・まあ、ウクライナの人はそんなこと知らないでしょうから、これは致し方のないことですけどね。とはいえ、日本海海戦と「モスクワ」撃沈の意味合いはまったく異なるので、これを並列するのはプロパガンダが過ぎますよね。